第一話:綺麗な彼女と星
「綺麗な空」
そのダイヤモンドのような美貌を輝かせる彼女の一言。その彼女の一言に違いはない。
でも訂正するとしたら「夜空」だ。
なんせここは電気の少ない田舎で、そのおかげで星がよく見える。
老若男女問わず間違いなく見惚れてしまうだろう。
そして、その言葉に思いつく限りの返事をしようとすれば、間違いなくその言葉は
「君の方が綺麗だよ」
となるだろう。
その言葉にはもちろんそのままの意味も含まれる。が、もう一つの意味は彼女がヤンデレだからだ。
褒めないと殺されてしまう。
そんな狂気的な彼女だけど、褒めた時に見せる彼女のデレ顔は世界で一番可愛いと僕は思う。
そしてその可愛いデレ顔で少し頰を赤らめて言う彼女の「ありがとう」をもらった僕は今世界で一番の幸せ者だ。
もちろんこの恋が一生続いて欲しいと思う。ヤンデレは怖いけど。
しかしこの恋が成熟することは難しいだろう。
その要因。それは
〜寿命〜
だ。
それもただ死という概念の死ではない。
世界の寿命だ。
この世界は6000年から始まり、365日すぎるたび1年減っていく。
その年数が0になった時、この世界は終わる。
この世界の住民は720億人いる。
普通の世界では、5900年になった時点できっと数十%残っているかいないかぐらいだろう。この世界ではそんなこと関係ない。寿命を選択するのだ。
この世界では一番美しい状態になった時、その状態で一生を過ごすことになる。
そして、12年に一度、神とやらの存在に12年が必要か問われる。
未知の死の世界に迷い込みたいやつはそのまま死ぬ。
未知の死が怖いやつはこの世界に残る。
そんな世界が始まって今はもう5000年経っている
5000年たったいま、今いる住民たちも5000年程生きていることになる。
そう。この「世界の寿命」はあとたった1000年ほどなのだ。
今はこの現代科学の力でこの世界の決められた寿命が永久に続くための研究がされている。
その研究所で彼女と僕は出会った。
彼女に僕は一目惚れだった。
美しい瞳に初めて喋った時の抱きしめたくなるような可愛らしさ、一見パーフェクトっぽいがよく見てると少しおっちょこちょいって感じのところが、今まで見てきた人たちの中でダントツに愛おしいと思ったのだ。
なぜ今までの5000年もの間会えなかったのだろうか。
俺は人生最大のチャンスで不幸な瞬間に立ち会った。
この5000年を取り戻すためにも、絶対に世界の寿命を永遠にすると心に決めた。