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武器が異世界人を育成することになりました  作者: いそべもち
第1章 伝説の武器との邂逅
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「おい、そこの兄ちゃん土産に1つどうだい?」

 

 露店から割腹の良い男が、レオに声をかけながら品物を差し出す。

 

「これは何ですか?」

 

 麻紐で作られた簡素なネックレスの先にある、手のひらサイズの丸くて白い陶器のような飾りを見つめるレオ。

 

「見たことないか? 貝と海の砂を混ぜて作ったアクセサリーなんだよ。特殊な薬剤を入れると粘土みたいに扱えるんだ。これを使った加工品がたくさんこの町では売ってるんだぜ」

「じゃあ途中で見たお皿とかも」

「そうだ、他にも色々あるからな。見て回ると楽しいぜ。うちはアクセサリーとか手に入りやすい価格で売ってるんだ」

「そうなんですね。これはなんですか?」

 

 簡素な木製の長テーブルに並んだ宝石の一つを手に取ると、さっき見せられたネックレスと同じ形状だったが、中央に蒼い石がはめ込まれている。

 お、これは珍しいな。

 

「珍しいんですか?」

「どうした?」

「あ、ごめんなさい! これ珍しいものですか?」

 

 俺の声に声出して答えたせいで、一瞬レオは変な目で見られてしまう。こればっかりは慣れるのと、声に出してしまうほどの内容を俺が言わないようにしないとな。

 

「魔石が入っててな、少し高くなるがお守り代わりに買う奴もいるぜ」

「魔石?」

「お、魔石知らないのか? 珍しいな、どこ出身だ?」

「じ、実は辺鄙な村から出てきたばかりなんです。知り合いを頼って来たので、まだ知らないことが多くて。本の知識ばっかりなんです」

 

 俺が作った設定を、たどたどしくもレオは無事説明できた。あとはこれ以上突っ込まれないといいけど。

 

「そうだなぁ、あまり素直に田舎モンって言わない方がいいぜ? 人の往来が激しいからな、いい獲物にされるかもしれねぇ。買い物とかする前に、町とか旅の説明してくれる場所があるからそこ行っといたほうがいい」

 

 わざわざ男はアドバイスしてくれた。一応力を使ってみたけど、嘘は全くついてない。世話好きなだけだ。

 

「丁寧にありがとうございます……ええと」

「ああ、俺はクキだ。この町のまとめ役だ」

「まとめ……?」

 

 困ったようにローブに隠れた俺を見るな、レオ。

 たんなる露店の親父じゃなくて、まとめ役ってことは……。

 

「兄ちゃんの住んでた場所的に言うと、村長みたいなもんだな」

「えええええええええええ!?」

 

 レオの大声に、クキと名乗った男は一瞬呆気に取られてから豪快に笑った。

 

「おどおど歩いてるから気になったんだけどよ、大きな声出せるじゃねえか。その勢いが大事だぞ?」

「それだけびっくりしたんです、だって偉い人ですよね!?」

「一応な。ただ俺はあくまでまとめ役で、命令してるわけじゃねえ。住んでる奴らの意見を吸い上げてまとめる、町の人に選ばれただけだ」

「民主主義ってやつですね」

 

(なんだ、民主主義って)

(そこに住んでる人たちの中で選ばれる、民を主体とした政治じゃないかと。外国だと王族が代々国のトップに立つとかありますけど)

(大体この世界はそんなもんだな。民が自治してるって言うのも珍しいな)

 

 どこの国も王族とか特別な力を持つ一族が受け継いだりする。統治に必要な力なので仕方ない。

 

「ミンシュシュギってなんだ?」

「民が選んだ指導者です」

「ほう、面白い表現だな。兄ちゃんは色々知ってそうだな」

「そんなそんなそんな、僕が知ってることなんて書物だけなんで……」

「本はあったのか、すごい村だな」


(レオ、本は結構高級なんだ。次からそうだな、村長とかたまたま来た冒険者から話を聞いたってことにしとけ)

(はいっ)

 

 知識が詰め込まれた本は実はまだそこまで簡単に見られるものじゃない。16年経って少し変わったかと思ったけど、クキの言葉でまだ本の普及率は高くないことがわかった。

 

 こうなると、レオの世界はどんな感じなのか聞く必要性が出てきそうだ。俺とレオの世界の違いを知って、この世界で不信感を人に与える回数を減らすために。

 

 

 

 

 

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