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武器が異世界人を育成することになりました  作者: いそべもち
第1章 伝説の武器との邂逅
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「で、俺の記憶はあちこち抜け落ちてる。レオと旅をしているうちに思い出せればいいさ」

「剣さんの力で記憶は」

「できなかったな」


 実はこっそりできるかやってみたけど、記憶は全く取り戻せなかった。万能な伝説の剣でも使えない能力があるらしい、多分。

 なんか俺といい、伝説の剣といい、自分自身の力の全容を把握しきれてない気がする。

 

「それなら僕が命じればどうなりますか?」

「どうだろうなぁ、できるかもしれないけど、今はいい。俺の記憶よりも先に、レオが独り立ちするほうを優先する。それは最優先事項じゃないぞ?」

「でも」

「だから、でもじゃない。そんなの安定すればいつだって試せる。まず俺が伝えないといけないのはこの世界のことだ」

 

 全く、俺にこだわらなくていいんだぞ。優しい奴なんだ、ただなぁこの世界ではその感情が致命傷になる。

 ようやく涙が止まったレオは、袖で乱暴に濡れた頬を拭う。

 

「他人よりも自分のことですね」

「そうだ……本音を言うとな」

 

 真面目に俺はレオに告げる。

 

「最初に言ったけど、本当はゆっくり考える時間を与えたいとは思う。ただレオが安心して過ごせる場所と1人である程度こなせるまでは立ち止まらないようにしたい」

「わかってます、わかってるんですけど……」

 

 俯くレオに、俺はなるべく優しい声をかけた。

 

「今夜はゆっくり寝ろ。明日は町を歩くからな。歩きながら最低限のことを教える。横になって子守唄代わりに、明日の注意事項だけ話しておくからな」

「はい。あ」

 

 立ち上がろうとして、レオは俺を掴んでにこっと笑った。泣いたり笑ったり忙しいな。俺がそうさせたんだけどさ。

 

「剣さんの名前決めました!」

「お」

 

 散々悩んで、寝て食べて少しはすっきりしたのかもな。完全じゃないにしても、元気が少しでもあるのは悪くない。

 

「アンジュさんですっ」

「アンジュってなんだ」

 

 響きは悪くないけど由来とかあるのか?

 

「アンジュという名前は僕のお見舞いに来てくれたおじさんです。血の繋がりとかじゃなくて、別の病室に入院していた患者さんの家族で、僕が退屈してるのに気づいてくれて、お話して仲良くなったんです。外国の人なんですけどね」

 

 アンジュという名前の男を興奮しながら説明をするレオ。その男大好きなんだな。

 

「色んな話を僕に聞かせてくれて、お父さんがいたらこんな感じなのかなって思ってて。……剣さんからも同じ感じがしたから、その」

「レオの知るアンジュじゃないけど、俺の本当の名前がわかるまでそれでいい。改めてよろしくな、レオ」

「はいっ、アンジュさん!」

 

 こうして俺は、人として生きた名前を思い出すまで「アンジュ」と名乗ることになった。

 

 

 

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