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ダイカッパーは流れない  作者: 須方三城
第三部 リバーハイド・フルブレイカーズ
50/65

47,ヒートファイト・ヴァーンハード《後編》


 ザ・キルブリンガーズ七殺衆セブンスキル【焼殺】百永坂もえさか苑丞えんじょう


 VS


 天狗山特殊部隊【TOLLノーズ】所属・畔杉くろすぎ冠黒武カンクロウ


『おおおおおおおッ!! 燃えまくりだぞォォォーーーッ!!』


 百永坂苑丞が起動した殺尽機ジ・キルヤケコゲロウが技でもなんでもなく、ただの力みだけでとんでもない熱波を放つ中。


 続いて、冠黒武が機装纏鎧きそうてんがいを披露する番だ。


「百永坂苑丞!! 俺っちはお前を侮らないッ!! 【初撃で決める】……それくらいの【短期決戦の全力姿勢】の心意気で、ぶっ潰させてもらう!!」

『やれるものならァァァーーーッ!!』

「いくぜいッ!! うぉぉおおおおおっしゃいッ!!」


 冠黒武は振り上げた黒鋼の錫杖をクルクルと回しながら、百永坂苑丞に対抗する様に咆哮を上げるッ!!


機装纏鎧きそうてんがいッ!! そしてェ!!」


 冠黒武が振りかざした右手、その手首にしっかりと嵌められたその腕輪は、天狗族の秘密兵器【禍弄魔カルマ】。

 それを機装纏鎧と【共鳴】させる事で、ワンランク上の機装纏鎧を起動するモノ。


 つまり、冠黒武の続くセリフは禍弄魔カルマを共鳴させる号令……「禍弄魔カルマ……共鳴!!」ッ!!


禍弄魔カルマ……【調和制伏ちょうぶく】ッ!!」


 違ったッ!!


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


 機装纏鎧の起動キーである黒鋼の錫杖と、禍弄魔カルマのクリアブラックな腕輪が、揃って赤黒い光を放ち始めたッ!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォーーーッ!!!!」


 冠黒武は雄々しい咆哮を上げながら、赤黒い光を帯びて天高くへと真っ直ぐに登っていくッ!!

 赤黒い光を纏った冠黒武が一際大きな入道雲に突っ込んだ瞬間、赤黒い輝きが弾け、猛烈な勢いで拡散!!


『ぬッ!? な、なんとォ!?』


 その赤黒い侵食は、一瞬にして広場直上……ヤケコゲロウの影響下にあった朱色の空を蹂躙ッ!!

 天が、赤黒い禍々しき光に食い尽くされていくッ!!


 秒にも足りぬ間に、広場は赤黒い光の帳に包み込まれたッ……!!

 広場全体に、赤黒い闇が差す……


 禍々しい光に包まれた世界……まるでこの世の終わりだ……!


『みさらせ……こいつが、完成された【禍弄魔カルマ】、その力を帯びた【天を喰らう漆黒の飛翔者】ァ……』


 静かに、天から舞い降りてきた黒い巨体。


 全高およそ四〇メートル前後。

 漆黒の極厚装甲で全身を覆った、有翼人型……即ち、天狗型の機体。

 機体全体に、まるで乾いた血液の様な色合いの赤黒いファイアパターンのタトゥーが浮かんでいる。


 左右三つずつ(つまり合計六つ)のアイカメラが紅い輝きを放つ。一目で獲物を麻痺させてしまいそうな鋭い眼光×6。

 人間で言えば口にあたる部位にはくちばしを思わせる突起があり、頭頂部には鶏冠とさかの意匠を感じる装飾。

 背の翼は……一体何枚あるのだろうか。その【無数】の黒翼は、もはや数える事を一瞥で断念してしまう枚数だ。

 もう翼と言うか黒くてフサフサした触手と言われた方がしっくりくる。


『こいつが俺っちの愛機【漆飛羅天喰ウルトラテング】の新たな姿にして、極致形態……漆飛羅天喰ウルトラテング禍弄魔カルマ調和制伏ちょうぶくッ!!』


 調和制伏ちょうぶく……調和制伏ちょうわせいふくとはッ!!


 本来は【己の内なる輝きの力を高め、外から来る悪や敵を良い方向へと導き、聖なる領域へ至る障害を排除する事】ッ!!

 別の言い方をすれば【阿毘遮迦アビチャールカ】ッ!!


 即ち、己を磨き世界を良くしていく行為の事であるッ!!


 ――だが、天狗族が言う【禍弄魔カルマ調和制伏ちょうぶく】は、この調和制伏の概念を少し乱暴に歪めて解釈している。


 簡単に言うと【完全なる禍弄魔カルマによって機装纏鎧の力を高め、外敵を全て捩じ伏せ、己の目的の障害になるモノを全て排除する事】ッ!!


 それが機装纏鎧きそうてんがい禍弄魔カルマ調和制伏ちょうぶく!!


 ウルトラテング・禍弄魔カルマ調和制伏ちょうぶく(長いので以後【ウルトラテングKC】とする)は、まさしくそのための機体ッ!!


『いぃぃっくぅぜぇぇぇぇいッ!!』


 冠黒武の意気に応える様に、ウルトラテングKCの背から生えた無数の翼が黒羽を散らして展開される。

 無数の黒翼が一斉に広がっていく様は、ただでさえ機装纏鎧の中でも巨大な部類に入るウルトラテングKCの見た目体積が倍近く膨らむ様に見えた。


 冠黒武が今、黒翼を展開させて起動したのは、初期ウルトラテング時代から変わらない妖術武装【天刈乱熱風扇テンガロンホット】。

 ウルトラテングの翼に仕込まれているこの武装の機能はただ一つ、【取り込んだ空気をメチャクソ熱してから放出する】。


 この武装だけでは暖房器具以上の性能は無い一品だが……

 ウルトラテングの【特性】と合わせる事で、立派な兵器へと変わる。


 そのウルトラテングの特性とは【風の操作】。

 つまり、【天刈乱熱風扇テンガロンホット】で温めた熱風を、意のままに操れる!!

 ウルトラテングの進化系であるウルトラテングKCもこの特性を持っている。

 しかも、それだけではない!!


 ウルトラテング自体が強化された事に合わせて、【天刈乱熱風扇テンガロンホット】の出力もアホみたいに上昇しているのだ!!

 もはや、今の【天刈乱熱風扇テンガロンホット】が生み出す熱風は、熱風と言うよりも【透明な焔】と言う方がしっくり納得ッ!!


 その透明な焔がウルトラテングKCの支配下に置かれた時、透明な焔はウルトラテング色……即ち漆黒に染まる。


 漆黒の極焔の完成であるッ!!


 漆黒の極焔を操る漆黒の機体……何と言う中二感だろう!!

 ずばりかっちょいい!!


『お、おぉおお!! す、すごい……あの機体の放つ輝きがッ、あの機体が放つ熱い黒焔がッ!! 完全にこの場を熱く支配しているゥゥ!! 熱い……熱い機体だァーーーッ!!』

『クカカカカッ!! 良いねぇ、百永坂苑丞ッ!! このウルトラテングの姿を見ても武者震いしやがるかッ!! ますます気に入ったぜい!!』


 生み出した黒焔を機体中に纏わせながら、冠黒武は愉快愉快と高笑いッ!!


『ああ!! その黒い焔を……俺の炎で熱く焼き尽くしてみせるさッ!!』

『カッ、さっきのお前のセリフを返してやる!! やれるもんならァ!!』

『もォォォちろんさッ!!』


 興奮を顕にする様に、紅いプラズマ体の飾り髪を更に躍動させながら、百永坂苑丞はヤケコゲロウに背のラケット型武装を抜かせる。


『灯れ熱き炎のガットォォッ!! ファイアァァ・ネェッツッ!!』


 ヤケコゲロウがラケットを構えた瞬間。

 ただの空間だったラケットの面部分に、紅く滾る豪炎が格子状に走るッ!!

 まさしく炎のガットだッ!!


『まずはッ!! 圧倒的先取点……【サービスエース】をもらうッ!! 奪われた空の色……つまり【試合の流れ】と【場の支配権】をこの【一球一打】で取り戻すゥゥゥ!!』


 ヤケコゲロウがサービスの構えに入ると、その後頭部で燃え滾っていたプラズマ体の飾り髪に変化がッ。

 なんと、その長いにも程があった飾り髪がぐるんぐるんと丸まり、ヤケコゲロウの体積をも上回る巨大な炎球へと姿を変えたのであるッ!!


『短期決戦のつもりで来ると言ったな、冠黒武!! 俺も最初から決めにいくつもりでやァァッてやるぞ!! さぁ、試合開始と共に、勝利の女神を口説く愛のシャウトを熱く激しく捧げあげよォォうッッッ!!』


 炎球となったプラズマ体は、ブツンッとヤケコゲロウの後頭部から離脱し、サーブトスされたテニスボールの様に天高くへと跳ね上がった。


『燃える闘魂一球入魂ッ!!』


 炎球が落下してくるのを待つのも煩わしかったのだろう。

 百永坂苑丞はヤケコゲロウを激しく跳び上がらせ、ガットが燃えるラケットを振りかぶった。


『豪炎の爆熱を借りて、今、必殺のォォォ……フレイムヘルブレイズヒートバァァァニングサンアタック・ホットファイアァァァーーーッ!!』


 炎球を目掛け、唐竹割りの様な軌道と勢いでラケットが振り下ろされる。


 壮大なジャンプサーブ。

 放たれたのは、もはや小型の太陽なのではないかと疑ってしまう様な極熱の炎球。

 向かう先は真っ直ぐ、ウルトラテングKCッ!!


『さぁ、冠黒武ッ!! 俺の燃える熱をッ……レシーブしてみせろォォオオ!!』

『――悪いが、そいつは無理な相談だぜい』

『何……!?』


 熱戦に早速水を差し込む様な、冠黒武の意外な言葉。


『百永坂苑丞。俺っちはそのサーブを受け止める事はできないし、お前は俺っちを焼き尽くす事なんてできないぜい』

『ッ……!? おかしな表現を……【受け止めない】ではなく、【受け止める事はできない】だとォォ!?』


 その表現の違和感の理由は、すぐに判明した。


 百永坂苑丞の必殺サーブ、フレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイア。


 冠黒武はそのフレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイアを……避けなかった。


 ウルトラテングKCは、その場に滞空したまま、一ミリたりとも動かなかったのである。

 当然、フレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイアはウルトラテングKCに直撃……するはずだった。


『ッーー!?』


 飛行機能の無いヤケコゲロウが自由落下の浮遊感に包まれる中、百永坂苑丞は、信じ難い光景を目の当たりにした。


 フレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイアが、すり抜けた。


 正確には【ウルトラテングKCの漆黒の巨体がまるで突風に煽られた黒煙の様に霧散し、フレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイアが何に衝突する事もなく、ただ真っ直ぐに走り抜けていった】。


『なッ……、ば、馬鹿な……!? なんだ、今のはァァ……!?』


 遥か彼方。海に着弾したらしいフレイムヘルブレイズヒートバーニングサンアタック・ホットファイアが巨大な水柱と蒸気を巻き上げるのを背景に、霧散したウルトラテングKCの機体が再構築されていく。

 まるで、散った黒焔が寄せ集まる様な再構築光景である。


『ッ、ま、まさか……!!』

『察したか? 勘も良いんだな、百永坂苑丞ッ!!』

『冠黒武……その機体まさか……黒い焔を操る【だけじゃあない】……黒い焔、【そのものになれる】のか!?』

『正解だぜい!!』


 ウルトラテングの特性は、風を操る事。

 そこに完成された禍弄魔カルマをプラスしたウルトラテングKCが、その次元で停滞しているはずがない。


 ウルトラテングKCは、風を操る。

 そして、【支配下に置いた風(即ち黒い焔)】と、【同化】するッ!!


『俺っち自身が黒焔になる……それがウルトラテングKC……極みに至ったウルトラテングの追加特性だァァァーーー!!』


 黒焔――と言っても、まぁ実質は風なのだが、とりあえずつまり、ウルトラテングKCは今、機体が気体になっているのである(ダジャレではない)。


 気体は圧力を受ければ流動・霧散する。

 固体と違って、圧迫・破壊はされない。


 つまり、今、ウルトラテングKCは……あらゆる攻撃に対して、無敵。

 あらゆる衝撃が機体に襲いかかった瞬間、機体を霧散させて自動回避できるのであるッ!!


禍弄魔カルマが完成しているおかげで副作用は解消。お腹的な意味でのタイムリミットは無い……が、強力な特性故に結局はとんでもなくクソ燃費(KNP)なんで長期戦は無理っつぅ欠点があるが……こいつにゃあ、短期決戦に足る【火力】があるぜい!!』


 ぶあッ、とウルトラテングKCの機体が崩れ、一陣の黒い疾風と化す。

 黒い疾風が向かった先は、未だ自由落下の身であるヤケコゲロウ。


『【凪を燃やし尽くす奔風ガスティ・ザ・ヴェイリヒート】ッ!!』


 言うなれば、それはただの【体当たり】。

 ただし、ウルトラテングKCは物理反動(ダメージ)一切無効。

 対して、ヤケコゲロウは極熱の黒焔で全身を撫ぜられる様なモノ。


『ぐ、ぐあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!??!? あ、あぁ熱いぃぃぃいいいいいいいい!!!?!?』

『クカカカ!! 俺っち自身が必殺技だ!! 悪いな百永坂苑丞ッ!! この熱戦は! 俺っちが圧勝させてもらうッ!!』

『お、おぐぅうう……!! じ、自分自身が熱い焔になるなんて……!! う、羨ましい熱さだッ……ぐあ、あああ……』


 装甲を焼かれる鈍痛に喘ぎながら、ヤケコゲロウが力無く落下していく。


 ヤケコゲロウの攻撃は一切ウルトラテングKCに通じず、逆は有効。

 もはや勝負は決した。



 ――傍から見れば、そう思えるだろう。



 だがッ、百永坂苑丞(・・・・・)はそうは思わなかったッ!!


 プロテニスプレーヤー・百永坂苑丞は、常に【挑戦者】だッ!!

 彼はプロになってから、一度も【王者】になれた事がないのであるッ!!


 彼はプロテニスプレーヤーになってから、格上の【王者】たちに挑んでは、散々に打ちのめされてきたッ!!

 ストレート負けした事もある、客席最上段まで吹っ飛ばされた事もある、五感を奪われて倒れ伏した事もあるッ!!


 テニスとは、とても残酷なスポーツだ!!

 ただすらに弱肉強食ッ!!

 公式戦は試合の方式上、一発二発のラッキーパンチではひっくり返らないッ!!

 奇跡的奇跡が偶然に積み重なってダース単位での連続ラッキーパンチが決まっても、取れるのはせいぜい三ゲームか四ゲームッ!!

 まぐれ勝ちなんてものが、ほとんど存在しない世界ッ!!

 負けるべきは負け、勝つべくが勝つのが常ッ!!


 その世界の中で、ひたすらひたすらひたすらッ!!

 彼は【王者】たちに圧巻な力の前に、圧倒されてきたッ!!


 それでも彼は、一度たりとも「どうせ奴らには勝てっこない」などと腐った事は無いッ!!

 ただの一度たりとも、だッ!!


 そう……彼の中で燻る【闘志】と言う名の灯火は、どれだけの強風に吹かれようとも、決して絶えないッ!!

 例え漆黒の極焔と表現すべき暴風に吹かれようとも、絶えず耐え続けるッ!!


 彼は本能的に知っているのだ!!

 その火が途絶えた時、人は【永遠の敗者】に成り下がるのだと!!


『ぐあぁ、ぉ……ぉお、ぅうううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!』

『ッ、な、何ィ!? まだ吠える元気がッ!?』


 世には【負け犬の遠吠え】なんて言葉がある。

 だが実際には、【負け犬の遠吠え】なんてものは存在しない。

 何故ならば、吠える事を止めた時、人は負け犬になるからだッ!!


 吠え続ける限り、闘志の火が消えていない限り、人は戦えるッ。

 今は敗者でも、吠え続ける限り永遠の敗者には、負け犬と言う畜生には堕ちない。

 闘志の火が、その灯りが、どれだけ果てしなく続いていようとも【勝利への道】を照らし続けるからだッ!!


『づぁぁらっしゃいッ!! 燃える着地ィィィ!!』


 ヤケコゲロウの紅い巨体が、何度も宙返りひねりをしながら、広場に見事着地ッ。

 石畳を踏み砕いたその太い足には、まだ熱い気合が流れている。


『クカカッ……!! おいおいおい……本当に熱い野郎だぜい百永坂苑丞ッ!! その様子……心にヒビひとつ入っちゃいねぇな!!』

『当然、だッ!! 君のその機体が焔である様にッ、俺の心は燃える炎ッ!! 炎はヒビ割れたりなどしないッ!!』


 先程の体当たりのダメージは大きいはずだ。

 それに加えて、ウルトラテングKCは機体を気体化してしまうと言う反則的な特性を持っている。


 どれだけ足掻こうと、あんなチート機体が相手では、一方的に焼かれるだけだ。


 普通なら、今の一撃でそう考えるはずだ。

 そして、心がポッキリ折れてしかるべき。


 だが、百永坂苑丞はそんな事が全く無いッ!!


『機体が熱い焔になる……それは羨ましいッ……羨ましい、だけだ!! 羨望しても、決して絶望足りえないッ!! 俺の希望はまだメラメラと燃え盛っているゥゥゥ!!』

『面白ェ!! じゃあどうする!? KNPな俺っちがエネルギー切れするまでひたすら我慢でもするつもりかよ!? KNPつってもなァ、硬めのカップ麺なら作れる程度の時間は持つぜい!!』

『否ァ!! 答えは簡単だァ!! 俺も【同じ次元に至る】までッ!!』

『!?』

『俺は貪欲かつ強欲な欲張りの業突張りな挑戦者だッ!! 羨ましいと思ったまま、大人しく指を咥える柄ではなァァいッ!!』


 指は咥えるものではない。


 指は、掴むためのものだ。


『この熱い憧憬を力に変えるッ!! 甦れファイアヘアァァ!!』


 百永坂苑丞の叫びを合図に、ヤケコゲロウの後頭部から、帯状に伸びた紅いプラズマ体がとんでもない勢いで吹き出した。


『そして、熱く熱く熱くゥ、燃え盛れェェェェェェェェッ!!』


 紅いプラズマ体が、意外な挙動を見せる。

 なんと、ヤケコゲロウの機体に巻き付いたのだ!!


『づぅ、あああああああああああああああああああ熱いぃぃいいいいいいいいい!!』

『なッ、馬鹿かお前は!? そりゃあそうだぜい!?』

『だがァァア!! それでいいんだァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

『!?!???!』


 意味不明……!!

 理解不能……!!


 普通の輩には理外の行動ッ!!


 百永坂苑丞は、紅いプラズマ体をヤケコゲロウの機体に巻きつけたまま、ラケットを構えて戦闘態勢を取ったのだ!!


『俺も……俺もォォォ……俺自身が、炎になァァァるッ!!』

『あ、そう言う事か!!』


 ……どうやら、冠黒武には何か通じるモノがあったらしい。


『お前も炎と一体化して、俺っちと張り合おうってかッ!! 熱過ぎるだろうがよぉぉおお!! 百永坂苑丞ォォォ!!』


 ………………?


『おおおおおおおおおおお!! あああぁぁあ熱いぞぉぉおおおおお!! 心もぉぉぉ体もぉぉおお!! まるで機体が焼かれて燃えている様だァァァーーーッ!!』


 実際その通りである。


『これがァ……これがァァ炎になると言う事ぉぉぉおおおお!!』


 いや。装甲が焼けていると言うだけの事である。


『この熱さァァ……これが答えだったんだァァアアアアアッ!!』

『ようこそ、血沸き肉溶ける焔の世界へッ!! 俺っちはお前を歓迎するぜい!! ウルトラテングの最大火力でなァァァーーーッ!!』

『ぐあおおおお!! 必殺ゥァ!! レッドホットチリファイアパァァァンチィィイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーッ!!』

『正面から受けて立つぜい、凪を燃やし尽くす奔風ガスティ・ザ・ヴェイリヒートォォォーーーッ!!』



 ――……このあと、普通に冠黒武が勝った。

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