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ネットく  作者: ニュルり
1/1

ネットをくるくる飽きずに来るくる

 私はいつも通り、ホームの待合室からでようとする。

午前九時、高校生の通学にしてはだいぶゆっくりな時間だ。

この時間、最寄り駅はガラガラになる。


たいくつ


 私の心にそんな感情が芽生える。

毎朝同じ電車に乗る。

 早く学校が終わらないかと、考えるが、実はまだ入学したばかりだ。

三年間まるまる残っている。

私はためいきをついて、いつのまにか到着していた、電車にのる。

といっても一駅となりだが。

そこから自転車に乗り、十分ほどで学校につく。

なんて名前の学校だったか。

たしか...。


「私立磯風高校。」

私は暗い部屋の中で、まぶしくひかるディスプレイに打ち込んだ。

「ふーん。高校って楽しいの?」

「たいくつ」

「そ。」

他愛もないやりとりをする。

私がやっているのはオンラインゲームだ。

ユーザー数世界一のオンラインゲームらしい。

「ところで、このゲームて何人プレイしてるんだっけ。」

私は暇なので、質問した。というかこの質問なんか前もしたことがある。

「だからぁ!ユーザー数、国内だけで十万人、対人やギルド戦が活発な超人気ゲーム、バトルオンラインでしょ!てか、ゲームの名前覚えたの?リュータ?」

「まぁ名前くらいは。リアルで会話するやつなんていないから、使わないんだがな。」

「ぼっち乙。」

「うっせ。」

私はブラウザを開き、自分のブログにアクセスする。

執筆中の小説の続きを打ち始める。

「ねぇ?怒った?それとも落ちちゃった?ねぇ...。」

私は三十分ほどして、ブラウザを閉じ、ゲーム画面を開いた。少し前に、個別メッセージが届いていた。

「ネットサーフィンしてたわ。てか通話しようよ。それなら見てないってこともなくなるしさ。」

すぐに返信が返ってきた。

「音声チャットは恥ずかしいからちょっと...。」

「そ。」

「うーん...。わかったから、やるから。明日マイク買ってくるから...。」

「アカウントはこのまえ作ったんだろ?とりあえず聞いてるだけでいいからやろうよ。私、アンナと違って、タイピング遅いからさ。しゃべったほうが楽だし。」

「うん...。わかった。」




 学校につく。

私が通っている学校は日本でも変わった学校で、好きな時間に登校して、好きな勉強をする。専門の教師も充実しているし、設備も一流だ。

 しかし、高額の学費を納めなければならず、だいたいが遊びたいだけのボンボン達だ。

 私の家は裕福ではないが、特待生として、学園招待された。

 親が何か偉大なことをしたらしいが、そもそも家にいない家族のことを私はよく知らない。海外で働いている両親は一ヶ月に一回電話をしてくる。生存確認のようなものだ。

 私は登校する時間はいつもゆっくりだ。一時間目が終わったと同時に学校につく。ほかの生徒は真面目に授業を受けているので、教室に入ると、みんな一斉にこちらをみる。しかし、私だということを認識するとあっという間に元の姿勢に戻る。嫉妬の声がちらほら聞こえる。


これだからリアルの人間は


この学校では成績が優秀なものが偉い。しかし、成績は単純にペーパーテストの点数ではない。試験はあるにはあるが、授業の確認程度だ。重要なことは、成績は学業以外に優れたものを評価する。ということだ。この範囲は幅広く、部活動や課外活動があてはまる。それに加え、趣味ですら評価対象になる。

 成績評価の発表は毎月一日に行う。私は入学して以来、ずっとトップをキープしている。

 しかし、退屈だ。

 私は入学したと同時に、広告で見たオンラインゲームをやり始めた。

 

バトルオンライン


 サービスが開始されて五年が経過した、このオンラインゲームは多面的に展開しており、リアルのネットワークをも強化しようとしている。オフ会の記念にアイテムが与えられたり、結婚した場合はご祝儀まで運営が出す。それにユニークアイテムやスキルといった、付加価値も与えられる。

 常に接続していないと、できないオンラインゲームと違い、ログアウト中のプレーヤー達と対戦するオフラインバトルというシステムのおかげで、忙しい社会人でもレベル上げや、対戦ボーナスを獲得できる。

 しかし、オンライン対戦をメインに行っている、通称廃人達は、成長速度がこれの比ではない。

 私はオンライン対戦しかやっていない。それに、プレイ以来一万戦行い、無敗だ。

 大きなギルドに入れば、なんら難しいことではない。相手についての情報や、装備といったものが援助してもらえるからだ。また、ギルド単位のバトルにも参加できるので、成長速度はさらにあがる。

 しかし、私のギルドはたった二人

だ。


リュータとアンナ


 とある掲示板にこんなタイトルが作られたのは、今年の四月ごろだ。


---こいつら知ってる?

---あー。なんか強い奴?てか名前ださいよなwww

---チーター?

---人間だろ。あの動きは

---廃人だろどうせ

---アンナて昔からいるやつじゃね?

---ソロでやってたやつじゃねーの?俺ギルド誘ったけど、シカトされたわ

---アンナはけっこう昔から強いよな。装備もいいのしてるし

---リュータて何者?


 こんなやりとりがされているらしいと、アンナはメールで送ってきた。

 私とアンナはゲームを通じて、出会い、連絡先を交換した。

 出会い、といってもリアルであったわけではない。初心者だった私がアンナと対戦して勝ったのだ。

 そのときからアンナと二人のギルドで、このゲームを攻略し尽くした。

 アンナは私と年が近いらしく、見ていたアニメやマンガが一緒だった。

「よ。」

「ん。」

 私達の中ではこれが挨拶だ。

「マイク買ってきたよ。おかーさんが。通販で。送られてきたよ。」

「そっか。じゃやってみるか。気が向いたらしゃべりなよ。ひきこもりだから声でないだろ。」

「バカにされてるきがする...。」

「してるからな。」

 アンナのゲームキャラクターが私に対戦を挑んできた。

 怒ると感情的になり、すぐに対戦を申し込んでくる。

 私は対戦を受けながら、通話ソフトでアンナに電話をかけた。

 私はアンナが電話に応対してる隙をねらって、アンナを倒した。

「あー!リュータずるい!いまのなし!」

ヘッドフォンから十代と思われる若い声が聞こえる。キンキンした高い声で耳が痛い。

「うるせーな。油断したアンナがわるいんだよ。」

 私は少し笑いながら答える。

「むー。」

 彼女は不機嫌そうに答える。

「声だと初めましてだな。リュータ。性別不明だ。よろしく。」

「アンナ。女性。よろしく。」

 バトルオンラインでは最初の会話は基本的に、自己紹介になる。うそを言ってもいいし、真実をいってもいい。それもネットならではの楽しみだ。

「リュータって女だと思ってたんだけど、この声って男?にしては高いような...。」

「リアルであえばわかるんじゃなくてよ?」

「うーん...。なんか声いじるソフト使ってるの?てかその口調きもい。」

 初対話なのにひどいなこいつ。

「別にソフトは使ってないぞ。もともとこんな声だ。で、アンナはニートから脱却したのか?」

「ニートじゃないし...。不登校で引きこもりなだけ。」

 ふてくされたように彼女は答えた。

「ま、あんまり詮索してもな。」

「そ。そうえいばさ、新しい装備でたね。使ってみてよ。」

 私はアンナから装備を受け取る。新しい課金装備で、三千円ほどのリアルマネーがかかるアイテムだ。

 私は性能を見て、モンスターで試し斬りをしてみる。

「威力高いな。あとこの効果って便利だな。対人やるときちょろちょろ動く相手に。」

「やっぱそうよね。買ってよかった。」

 役割として、アンナが装備を集め、私が使って敵を倒す。そして、使わなくなった装備を私が相場を見て、値段を決め、アンナに露店を出してもらう。露店とはネット上でアイテムを売買するために使うシステムだ。このゲームではオンライン状態でないと出来ない。つまり、ずっとゲームにログインしていないといけない。

 私は一日家にいることはほとんどないし、パソコンはスペックの高いものなので、やけに電気代がかかる。なので、ゲームをやりながら放置することはない。

 このゲームでは珍しく、ゲーム内で稼いだお金を現金に返ることができる。もちろん、バグやチートを使った場合は逮捕されるというリスクがある。サービス開始直後は何人も捕まっていた。最近では滅多に聞かなくなったが。

 アンナが装備を集めて、リュータがライバルを倒す。私たち二人はこの方法でトップに君臨している。大手ギルドに屈することなく、多人数だろうと私はすべてなぎ倒してきた。私はゲームキャラを操作する能力が高いのだろう。昔から反射神経や、運動能力がとても高かった。様々なスポーツをやったが、誰にも負けなかった。


しかし、たいくつだった


しばらく彼女と談笑していた。

「ひきこもりにしては声でるじゃん。」

「実は音声チャットの話がでたあたりから、リュータが強引にやるだろうと思って、部屋で発声練習してたの。」

 なるほど。

「ほんと真面目なひきこもりだな。学校いけよ。」

「いやよ。私は絶対専業主婦になるんだから。リュータ養ってよ。」

「いいよ。」

一瞬沈黙になる。

「...。」

しばらく沈黙になる。

「ほんき?」

「ジョーダン。」

大きなため息がきこえた。

「がっかり...。」

「あったこともない人とは結婚なんてしたくないわ。」

「まぁ、それもそうだけどね。」

「アンナ、本気だったら私と結婚するの?」

「リュータならいいかなって。」

 まじか。アンナは嘘は言わない。子供のように純粋だからだ。

「だってさ、初めてはなすけど私友達いないし。はなしてて緊張しないのリュータだけなんだよね。むしろリュータが結婚してくれないと、私生きていけないかも。あ、やばくないそれ?」

「うん。やばいね。」

 依存症か何かかこいつは。

 しかし、アンナは極度のひとみしりらしい。病気レベルの。外を出歩くだけで、体中から汗が出て、動悸がして、めまいがして、倒れる。

両親も困っているらしい。

 しかし、家事は出来るらしい。よく料理の写真を見せてくれるが、どれもおいしそうなのばかりだ。アンナの両親は海外で仕事をしているため、広い部屋に一人きりというわけだ。れんらくは基本メールでやりとりしてるため、両親は心配していないらしい。

 そこで暇つぶしに家事を極めたらしい。努力の方向を間違えてると思う。

「眠くなってきたわ。」

「まだ八時なんだけど...。小学生?」

「アンナお姉ちゃん、絵本よんでねかせてくだちゃい。」「きもちわる。」

 私はアンナの罵倒を耳にして、ベッドに飛び込んだ。

「今ベッドにダイブしたでしょ?こういう音まで聞こえるの楽しいね。」

「うーん。気持ちいい。てかさ、アンナの家遊びいくよ。もう住所わかるしさ。運営サイトの売り上げはやっと軌道にのってお金もたまったし。」

「ほんとに?楽しみ。でも私見たら幻滅するよ。きっと。かわいいからさ...。」

「私も見たら幻滅するよ。こんな見た目さ。ほんと外見だけは好きになれない。自分の顔だけは大嫌いだ。」

「リュータ、ほんと自分の顔きらいだよね。」

 私は自分の顔が大嫌いだ。

「くるときは電話してね。服着たり準備するからさ。」

「いいかげん服を着る習慣を身につけないと、風邪引くぞ。」


 私は次の日いつも通り学校にいった。



淡々と授業を受ける。

この高校は授業のレポートを提出すれば授業に出たとみなされる。私のこの高校でのテーマは

「今後情報産業において、必要とされる社会貢献制の高い仕組みの構築」である。

簡単にいうと、新しい市場を作る仕事だ。といっても、わたしは実際にするわけではなく、実社会で働いてる企業庁に方向性を示すだけである。参謀といったところか。

とても、退屈だ。実際にその企業のトップにあえるわけでもないし、匿名で行われるこの作業は私になにも価値をくれない。

しかし、すむところや食べ物は保証してくれるし、学費もかからない。三年間かけて、卒業すれば、莫大な資金を提供される。それをどう使おうが、私の自由というわけだ。


高校生活など華から好きではなかった。

この見た目や家庭環境のせいで私は迫害されてきた。

迫害はいいすぎかもしれないが。私がそう考えているだけかもしれない。


私には家族がいない。


孤児だった。両親はおろか、うまれた国もわからない。


なんと豪華客船で発見されたのだ。


私は生涯ずっと一人であろう。

孤独にはなれていた。



高校に誰より遅く登校し、誰よりはやく帰宅する。


ちょっとした優越感に浸り、私は帰路に就く。


「おかえりなさい。」

「ただいま。」


「いや、ちょっとまて、なぜ私のパソコンがついていて、ゲームが起動してて、通話ソフトがアンナとつながっている?」

「はっきんぐした。」

「お、おう。」

やばいこいつ天才だ。

「アンナ。」

「なに?怒った?」

「結婚しよう。」

「・・・。はい。」

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