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~第6章 ~ 出逢い

「あれは幻獣…!創造神『イデア』の世界に住んでいると言われている生き物か…あの小娘が呼んだのか?…」

全身が炎で覆われている巨大な鳥を見てギルフォードが呟いた。その姿は黒い空の中で一際輝いていた。フェニックスは上空の悪魔達をその炎で焼き払っていた。あっという間に巨大な悪魔だけを残して他の悪魔を一掃した。

「あれはなんだ…」

ケルミナの背に乗る祐は言葉を失った。大量の悪魔を一瞬で焼き払ったその幻獣に恐怖さえ覚えていた。また、それを呼び出した唯に対しても同じ感情が芽生えていた。

「ありがとう、フェニックス」

唯がそういうとフェニックスは光を放ちながら消えていった。

「あとはあんただけだよ…覚悟してよ?」

ガルガンテを見据えながら唯は右手を挙げた。

「…我が力を今ここに解き放つ…」

唯の右手に白く光る線のようなものが空に向けて伸びていく。やがてそれはガルガンテの全長に匹敵するほど伸びた。

「…聖裁技(せいさいぎ)不動聖剣(ふどうせいけん)!!」

右手をガルガンテに向けて振り下ろすとその白く光る線はガルガンテの体を真っ二つにした。

「…ギャァァァ!」

「…み、耳が…」

「うるさい…!」

その断末魔は辺りにいた人達の聴覚を刺激した。やがてガルガンテは消えていった。黒澄んでいた空からは光が指し、青空が見えた。

「…ふぅ…」

唯が地上へ降りてきた。ケルミナも丁度地面に降りたった。

「…あの小娘…やるな…あれで第七位の実力だとしたら果たして第一位はどんな化け物なのやら…」

ギルフォードがデュランダルを元の人間の姿に戻して唯をじっと見つめていた。その戦場にいた者は何が起きたのか理解ができずにいた。天使が現れた後に上空から悪魔が現れ、その天使は巨大な鳥を呼び出し、巨大な悪魔を真っ二つにした。天使や悪魔はおとぎ話だと思われていたはずなのに目の前にそれは現れた。各々が常識と思っていたことが覆された瞬間だった。


「…ガルガンテがやられるとは…これは一筋縄では行きそうにないな…勇者だっけか確か?…鍛練して強くなったところを潰し、奴等に絶望を与える…ははは…いいシナリオじゃないか…」

黒いマントを着た男が丘の上で呟いた。やがてその男は一瞬にして消えた。



~半刻後~

一時停戦をした両軍は各々の陣営に一旦戻ることにした。静かになった戦場に祐と愛菜と唯、そしてギルフォードとデュランダルが残っていた。

「お前は本当に唯なのか?」

「…どうみても私に決まってるじゃない…」

「人間じゃなくて天使…なのか?」

「…そうよ…あの世界にいたのは第一位天使より私に与えられた任務を遂行するため…」

「…任務?」


~回想 パルス神殿~

「ねぇねぇ、お母様、どうしてあたしを呼んだの?」

まだ5歳だった唯を第一位天使『ラファエル・クロアーヌ』は神殿に呼んだ。

「これからあなたには任務についてもらいます」

「任務?どんな?」

「パルティーンにいるあなたと同じ歳のある子供を監視してほしいのです」

「監視?」

「そうです。まずはこれから実際にそこに赴き、ある夫婦に会います。その夫婦の養子となりそこに住み込んでその子供を監視するのです」

「…住み込むってパルティーンに?…唯は要らない子なの?」

そう言うとお母様は笑って答えた。

「そうではないのですよ。私の娘だから安心してあなたを下界に送ることができるのです。この任務はそれほど重要なのですから。元々これはイデア様の依頼なのです…イデア様のお話によるとその少年は将来、この世界を含めた全ての世界に滅びがきた時に、仲間と立ち上がり世界を救ってくれる救世主だそうです。…勿論、会えなくなるわけではなく週に1回ぐらいはこちらに戻ってきて定期報告をしてほしいのです」

「…そっか…じゃあ唯、頑張るね!」


~パルティーン 菊池家~

「…やはり天使は居ましたか…実は私も詩織も1度見たことがあるのです。あれは忘れもしない初デートの日…夕焼けが綺麗に見える海の砂浜を二人で歩いていたときに1人の天使が立っていて、こちらに気づくと微笑んで白い翼を広げて空に飛んでいったのを私達は実際に見てしまいました…」

菊池智は微笑みながら話した。

「…そうでしたか…なら理解が早くて助かります。この話を受けてもらえますか?」

「子供ができないことを知った日は悲しさでいっぱいでしたが、今はとても嬉しいです…」

そう言うと菊池詩織は泣いた。

「私の魔法でこの世界にロゼリアを存在させたことにします。後は名前をこの世界に適したものにしないといけないのですが…」

「それならもう決まっています。女の子ができたら名前は『唯』にしようと思っていました」

詩織は笑いながら嬉しそうに言った。

「…いい名前ですね…では唯、これからあなたに柊祐の監視を命じます。あとはこの夫婦と仲良くすること…いいですね?」

「…うん!よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくね、唯」

こうして彼女は『菊池唯』となってこの夫婦の養子となり『柊祐』という子供の監視についた。


「では私は戻りますね」

「はい…ありがとうございました」

ラファエルが戻ろうとした時に思い出したように言った。

「…そうそう、唯、この世界にいるときは天使の力は制限されますよ?それを忘れないように…あとはこれを忘れていました」

ラファエルは詩織の手に触れた。

「あなた方、『家族』に幸があらんことを…」

そう微笑みながら言って、ラファエルは天界に戻っていった。唯はあの時、ラファエルが詩織にしたことを知っていた。あれは治癒魔法…詩織の体を正常な状態に戻してあげたようだ。



~回想 久里浜公園~

「(う~ん…その例の子供はどこにいるんだろう…この近くにいるのは間違いないはずなんだけどな…)」

すると公園を通り過ぎようとしたときに違和感を感じた。公園の真ん中で遊ぶのは3人の子供だけであり、他の子供達は隅っこでこじんまりとして遊んでいた。

「…!まさか…あの子達…!」

すると唯は3人の男の子達の目の前に行った。

「ここはみんなの公園なのよ?わ・か・る・?」

「ここは俺たちで遊んでるんだよ!女はどっか行けよ!」

「ここはあんた達の物じゃないでしょ!?」

1人、3人に対して抗議していた。

「うるさいなぁ!」

3人のうちの少し太っている男の子が唯に手を挙げた。唯は防御魔法を使おうとしたが、他の人間にはできないことをやろうとすることができなかった。他の子供達が自分を不気味がるからだ。唯は怖くなり目を閉じた。だが、唯にはぶたれる感触がなかった。恐る恐る目を開けると目の前には男の子の腕を掴んでいた子供がいた。その子供は右手で男の子の襟を掴み、背中に背負い、投げ飛ばした。

「…!い、いたーい!」

投げ飛ばされた男の子は泣いてしまった。

「…これ以上同じ事をするとまた同じ目に会うよ?」

その子供は3人を睨み脅しのつもりでそう言った。

「お、覚えていろよ!」

3人は急いで公園から出ていた。

「あ、ありがとう…」

唯が頬を少し赤くして言った。

「大丈夫だった?怪我してない?」

「うん…あの…名前は…?」

「ん?俺?俺は柊祐!」

柊祐と名乗った男の子は笑顔でそう言った。唯は驚いた。

「(…この子がお母様の言っていた人…)」

「君は?」

祐が唯に聞いてきた。少し緊張した顔を浮かべて言った。

「…菊池唯…」

「そっか!唯か!よろしく!…怖くなかった?」

「ちょっとだけ…」

「また困ったことがあったら呼んでよ!また助けるから!」

祐の瞳は真っ直ぐ、輝きに満ちていた。

「本当に助けてくれるの…?」

「任せてよ!」

「…約束だよ?」

「うん!じゃあさ、これから一緒に遊ぼうよ?」

そう言って祐は唯に手を差し出した。唯は静かにその手を握り返した。

「…うん!遊ぼ!」

二人は公園で一緒に遊んだ。この時の唯は祐に対して子供にはまだわからない感情を抱いた。その感情がわかったのは唯が中学生の時だった。


次章、「約束」

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