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~第4章 運命~

「で、具体的に何をすればいいんだ?」

真っ白な空間の中で妖艶な姿をしたルミナに質問した。

「まずはアロンダイトを除く他の聖遺物の持ち主を見つけるんだ」

「アロンダイトは最初に作られた聖遺物。神の力を最も強くもらい、元々は正義の剣だったがあることが原因で闇に落ちてしまった。アロンダイトに対抗するために我ら他の9個の聖遺物が作られた」

「そもそも…なぜ神はアロンダイトなんか作ったんだ?」

「はるか昔に起きた天使による反乱を止めるため、戦う手段を持たない神は武器を作り出した。天使による反乱…言わば『堕天使』と呼ばれるようになった天使による神への裏切り…天使の中でも他の天使とは別格な強さを持った天使ルシファーはその力を過信したがために神を殺すことで新しい神になろうとした」

「その戦いの結果は?」

「神と聖剣アロンダイトの勝利だ。堕天使は異次元へ葬られた。その異次元は『アビスゲート』と呼ばれ堕天使の怨念が悪魔を産み出したとされている。今でもルシファーの怨念によってアビスにアビスゲートからの闇の障気が入り込んでいるが天使がそれを魔法でおさえている。それが天使の仕事でもある。アロンダイトは堕天使ルシファーを斬った際に奴の悪が入り交じった返り血を浴びたことでその影響を受け邪剣とでも呼ばれる存在となってしまった」

「その後、神は人間という種族が住むこのヴァルハラにアロン王国と呼ばれる封印城を新たに造り、神の分身であるクリスタルを創造しその傍らにアロンダイトを封印した。封印されたが約千年前にその封印が長き封印により効力が弱まり封印が解けた。アロンダイトを監視していた約五万の人間が目覚めたアロンダイトの影響で悪と化し、軍隊となってその同時の王、ギルティアを筆頭として世界を支配し始める。神は封印が解かれることを想定していたから我ら九個の聖遺物を造り、各地に存在した王国に新たにクリスタルを創造してアロンダイトと同じく封印した。その王国はこのカルディア、クルナラ、アルミナ、サリアン、ラファエルの五つ。カルディアに五つ、他の国に一つずつ封印した」

祐はここで疑問を持った。

「なんでカルディアだけ五つなんだ?力は分散させた方がいいんじゃないのか?」

「この国は最後の砦。ここが一番アロン王国から遠く、仮にアロンダイトが復活したとなればクリスタルが他のクリスタルを通して危険を知らせる。その知らせを受け、対抗する戦力を集めることができる。他の国には申し訳ないが時間稼ぎになってもらう。ギルティア率いるアロン王国軍は他の聖遺物のおかげもあって約二万の兵士を連れてこのカルディアにやって来た。」

「それでも二万か…多いな…」

「だか、アロンダイトの復活はクリスタルを通してこのカルディアにも知らせは来ていた。聖遺物を持たない周辺諸国から力を借りて、一万五千で迎え撃った」

「それでもまだ劣勢じゃなかったのか?」

「まだ劣勢だったさ…あいつが戦場に赴くまではな…」

「?」

「まぁ結果はアロン王国の敗退、アロンダイトは見事封印された。今度もまた封印できればいいのだが…」

「じゃあ俺はその他の7人を集めればいいんだな?」

「ああ…千年前の奴の運命(さだめ)が終わっていないのなら今度はお前の番ということだ…頼むぞ?選ばれし人間…」

「運命か…わかったよ…」

ルミナの願いを祐は仕方がなく聞き受けた。


~北宮高校~

「失礼しました。…さてと、帰るか…」

職員室を出た大介は学校を出ようとして昇降口に行った。

「あれー大ちゃん?まだ残ってたの?」

梓がちょうど靴を履いていた。

「梓か…先生に呼ばれていたんだ。梓は何してるんだ?」

「忘れ物しちゃって。お兄ちゃんと愛菜ちゃん待たせてるんだよね」

「そうか、じゃあ一緒に帰るか」

「うん!」

昇降口を出た大介と梓は祐と愛菜が待つ公園に向かった。

並んで歩いていると数メートル先に歩く人影が見えた。

「ん?あれ矢野っちじゃない?」

「隼人か?声かけてみるか」

二人は先を歩く人に声をかけた。

「隼人、今帰りか?」

「?…ああ、大介先輩お疲れっす!梓も」

「矢野っち、今日は遅いんだね?」

梓の問いかけに矢野は答えた。

「大会が近いから練習長めにやってきた。これから帰り?」

「うん!だけど、お兄ちゃんと愛菜ちゃんを公園で待たせてるんだよね…」

「じゃあ、さっさと合流するか。あいつらふたりっきりだと何するかわからん」

矢野が面白げに笑い始めた。

「もぉ…さすがにそれはないよ」

梓は笑いながら否定した。二人が大変なことになっていることを知らずに…


~久里浜公園~

三人は二人が待っているはずの公園に行ったがそこに二人の姿はなかった。

「あれ~二人共いないよ~」

「梓が遅いから早く帰っちまったんじゃないか?」

「そんな~」

梓と矢野がそんな会話をしているときに大介は大木の前に何か物があることに気づいた。

「これは…祐と愛菜のバッグか?」

「ほんとだー」

大介が見つけたのは学校指定の手提げバッグを2つだった。そのバッグの持ち主は祐と愛菜だった。

「じゃあ、あいつらまだここにいるってことですかね?…でも…」

矢野のは冷静に今の状況を確認した。だが、公園に二人の姿はなかった。

「いないね…謎だなー…まさか…誘拐!?」

梓は心配になった。最近、この辺りでは謎の失踪を遂げている人が数人いた。ニュースでは誘拐ではないかと報道されていた。

「…いや…仮に誘拐だったとして潤叔父さんに鍛えられている二人だ。そう簡単に誘拐犯も連れ去ることはできないだろう」

大介は二人が潤に武術を指導されていることを知っていた。

「あいつら部活もやってそんなこともしてたんすか…」

矢野は知らないようだった。

「確かに…今の私でも護身術を使えば誘拐犯なんて倒せるよ!」

梓も自信満々に言った。

「そうすると…!?」

大介が言葉を言いかけた瞬間、三人の前にある大木からよくわからない渦が現れた。祐と愛菜が吸い込まれた物と同じだ。

「な、なんだこれ!?…吸い込まれる!」

「きゃあ!」

こんな状況下で大介は自分にできる咄嗟の判断をした。

「二人とも俺と手を繋げ!」

大介の言葉を聞いた二人は大介の右手を梓が、左手を矢野が掴んだ。その後、三人は大木の中へと吸い込まれた。



「まだ話はあるのか?」

真っ白な空間にいる祐はルミナに問いかけた。

「あとは契約のみだ」

「契約?」

「契約することで正式な選ばれし者となる」

「お前に選ばれた時点で選ばれし者じゃないのかよ?」

祐は呆れながら聞いた。

「あくまでも我が勝手に選んだだけだ。我とお前とで共通の意識共有を行うことで真の力を発揮できる」

「なるほどな…何をすればいいんだ?」

「握手だ」

「…は?」

祐は唖然とした。契約というのだから何か大掛かりな事を予想していた祐だった。

「だから握手だ」

「…それだけでいいのかよ?」

「今はそれだけでいい…」

『今は』という言葉が気になった祐だが深く聞かないようにした。そのうちわかることなら今はそれだけで充分だと判断したからだ。

二人は握手をした。

「とりあえずは契約完了だ。あとは…何やら表が騒がしいが?」

ルミナは城の外で起こっていることに薄々気づき始めた。

「ああ…なんかギルフォードってやつがデュランダルを使ってこの城を乗っ取ろうとしているんだ」

「デュランダル!?…なぜあの小娘が…」

それまで平然として余裕が感じられたルミナが初めて焦った顔をした。

「…だがちょうどいい。お前はデュランダルとその使い主を仲間に加えろ」

「……は?」

ルミナの言ったことの意味がわからなかった。この城を手に入れるために攻めに来ている敵を仲間に加えろと言ったからだ。

「いやいや…敵を仲間にするって…無理だろ!」

「だけどそうして世界を救うために手を取り合わないとこの世界どころかお前のいた元の世界も滅びることになるぞ?たとえ相手が敵だったとしてもそいつも聖剣を使うということは選ばれし人間なのだから」

「…くそ…!」

「さあ?どうする?」

「…俺に考えがある…」



「ではそれで行くか?意外に上手く行くかもしれない」

ルミナは祐からあることを聞いた。それは時期にわかることだった。祐は静かに頷いた。


「では祐よ…力が欲しければ我が名を叫べ!これからの運命に立ち向かい、見事世界を救って見せろ!」

その言葉に祐は力強く反応した。

「来い!エクスカリバーー!!」

祐が叫び、右手を掲げると刀身が真っ白な刀の形をした武器が祐の右手に現れ、それは雷を帯びていた。祐はそれを静かに大事そうに握り目を瞑った。

その瞬間、祐の頭の中に様々なイメージが流れてきた。その流れてくるイメージを祐は理解できずにただ見ていた。その中に大量の血を流して倒れる愛菜らしき人も見えたが祐は気がつかなかった。


そして目を開くと目の前には白馬に乗る銀色の甲冑、銀色の兜をを身に付けた騎士がぼんやりと見えた。その騎士はやがて霧のように消えたがその奥にも何かいた。

「どうかあの子を救ってください…私ができなかったことを…」

白いローブを着た銀髪の女が確かにそう言った。

「あの子…?」

その言葉を残してその女は真っ白な空間の奥に向かって歩いた。やがてその姿は消えた。

「…俺は…俺が…世界を救う!」

真っ白な空間の中、祐は心の中でそう誓った。


「ここは…」

グングニルに触れた愛菜も気がつくと真っ白な空間の中に立っていた。

「こんにちは。ここはあなたの精神の中よ」

声がした方を振り向くと綺麗な銀髪が肩ぐらいまである女が立っていた。

「あなたは…?」

「私は聖槍グングニル。本当の名前はマリナ」

「あなたがグングニル!?…聖遺物は武器のはずじゃ…」

祐と同じく混乱する愛菜にマリナは優しく説明した。

それはルミナが祐に説明した内容とほぼ同じだった。

「なるほど…つまり私達は世界を救う仲間を集めればいいんですね?」

「そういうこと。急なお願いだけど世界のためだから…」

「わ、わかりました…」

「じゃあ、愛菜。私と握手を」

「握手?」

「握手をすることで正式に私との契約が成立する。これからよろしくね、愛菜」

マリナが愛菜の前に手を出した。

「はい!」

愛菜も手を出し、お互いに握手をした。

「じゃあ、契約も終わったことだし…私は槍の姿に戻るわ。また私と話したかったら本当の名前を呼んでくれればいいから。逆に武器になってほしかったら武器での私の名前を呼んでね?」

「わかりました!」

「汝に神イデアの御加護があらんことを…」

「来て下さい!グングニル!」

愛菜の右手に真っ白な槍が現れた。その槍は風を纏っていた。その瞬間、祐と同じように頭の中にイメージが流れてきた。思わず目を閉じたがそれでもどんどん頭の中に流れてくる。

「な、何これ…!」

理解ができないイメージはどんどん流れ込んできたがその中で鮮明に見えたイメージがあった。

「せ、先輩が泣いている…!?」

そのイメージは寝そべる愛菜の目の前で泣く祐の姿があった。


やがて流れてくるイメージは終わり、目を開けるとそこにはケルミナより大きい黒い竜が現れていたがやがて消えていった。しかし、祐の時に見えた女は愛菜の前には現れなかった。

「…やるしかないんだ…!」


~クリスタルルーム~

「どうやら二人とも上手くいったようだな」

キルナが安心したように言うと祐が口を開いた。

「表に出てギルフォードと戦います」

「…すまないが頼んだぞ?」

「…はい!」

キルナは祐に全てを託した。

「(気のせいか…祐と愛菜が少し頼もしく思えたな…)」

キルナは微笑んだ。



~ソマリア平原~

丘を下りたクルナラ王国は城の20キロ離れた場所に待機していた。周りには霧が広がっていた。

「…奴らに姿を晒してもうすぐで半刻か…霧を濃くしたとはいえそろそろ奴らにばれているはず…何もしてこないとどういうことだ?投降すると思い待機していたが…そろそろ行くか」

クルナラ王国は半刻ほど待機していたがカルディア王国は何の行動も起こさなかった。

「よし…全軍突…」

ギルフォードが声をかけようとしたその時、ギルフォードの元に一人の兵士が来た。

「ご報告します!10キロ先に人影あり!カルディア王国騎士団と思われます!」

「数は?」

「およそ二千!」

「来たか…だがそれだけの戦力で何ができると言うのだ…かまわん!全軍突撃!」

「うぉぉぉ!!」

声をあげクルナラ王国の兵士達が突撃を始めた。


~カルディア王国 正門~

「いいかお前ら!数など関係ない!この城を守り抜くぞ!」

「うぉぉぉ!!」

ラザフォードの声に騎士団の兵士も声をあげ突撃した。やがて両軍は衝突し、戦闘に入った。

クルナラ王国は鎧を着た重歩兵や槍や盾を持った歩兵で構成されていて、最後尾にはデュランダルを携えたギルフォードと兵士数人が待機していた。対するカルディア王国は、馬に乗った騎士を中心に機動力のある構成となっていた。空からは竜に乗った竜騎士、ペガサスに乗った天馬騎士もおり、陸と空から攻める。


~半刻後~

戦いはクルナラ王国の数に圧倒されカルディア王国が押されていた。

「隊長!敵が押し寄せて来ます!このままでは…」

「耐えろ!そうすれば救援がくる!」

その言葉とは裏腹に敵はどんどん押し寄せてくる。

「(このままでは城内に入られてしまう…!…早くしてくれ!祐!愛菜!)」

ギルフォードがそう思った時、空から翼を大きく羽ばたかせながら近づく黒い物体がいた。その姿は竜であった。その竜の口は青白く光っていた。竜はクルナラ王国軍の中心を目掛けて口からブレスのようなものを出した。

「うわぁぁ!!」

「ケルミナか!?間に合ったな!」

ブレスを出した場所にいた周辺の敵はそのその凄まじい威力にたちまち飛ばされた。

「…陛下!先程の攻撃による我が軍の損失は約500です!」

「…あれがカルディア王国の竜人…しかも竜の中でも最高クラスの実力を持った黒竜…二つ名は竜人王だったか…だが…落ちろ!」

ギルフォードはデュランダルをケルミナに向けて振りかざすとその剣から大きな衝撃波のようなものが出た。その衝撃波はケルミナに向かっていき、ケルミナはなぜか回避行動のひとつもしなかった。

「…黒竜など私とデュランダルの前だと恐れるに足りんな…」

ギルフォードが攻撃が当たることを確信した時、その衝撃波は突如鳴り響いた雷によって打ち消された。

「何だと!?…あの雷…魔法のレベルを越えているな…」

聖剣から放たれた衝撃波は魔法ごときでは到底打ち消すことができない。ギルフォードは驚いたが竜の背中に乗る何者かに気がついた。

「あれは…子供…それにあの剣…」

ギルフォードはその者を睨み付けた。ギルフォードの持つデュランダルが心臓の鼓動のように光り始めた。

「…デュランダルが共鳴している……何だあれは!?どういうつもりだ!?」

ギルフォードが驚いたわけは竜の背中に乗る子供は白旗をあげていた。

「し、白旗!?」

「…俺たちの勝ちなのか?」

「ゆ、油断するな!奴らの作戦なのかもしれない!」

回りにいた兵士達も動揺していた。ケルミナが徐々に高度を下げ、ギルフォードの前に降りてきた。

「構えろ!こちらからは手は出すな!」

ギルフォードは回りの兵士に命令した。ケルミナが地面に着陸した。

「(なるほど…威圧感は王という名に恥じないようだな…)」

ギルフォードはケルミナを前にして威圧を感じながらも平然としていた。やがて、ケルミナから三人の人間が降りてきた。

「久しいな…ギルフォード?」

「10年ぶりか…キルナよ?…今度は確実に息の根を止め、城と聖遺物を貰うぞ…」

ギルフォードがキルナに静かにその大剣を向けた。二人が向かい合う姿に周りにいた者は緊張感を覚えた。一国の王同士が向かい合うということはここで戦いが始まったとして生き残った方が勝者となる。それは両軍にとって大きな影響を与えることになる。

「残念だが俺はあの時の怪我で剣を使えなくなってしまった…」

「それなら好都合…死ね!」

ギルフォードがキルナに大剣を振りかざした。

「…だから俺の意思を継ぐ者にこの戦いを託す!」

キルナに大剣が振り落とされる寸前にキルナは後ろに飛んで回避した。それと同時にキルナの後ろから祐が飛び出してきてデュランダルを受け止めた。聖遺物同士のぶつかり合いにその衝撃で祐とギルフォードが立っている地面が凹み、周りにいた者を衝撃が襲う。

「(ぜ、全身の骨が軋む…!…これがデュランダル!)」

「…我の攻撃を凌ぐとは…その刀が聖剣エクスカリバーか!」

「(…この攻撃を受け止めただけでわかる…この強さ…ラザフォードさんとは別格だ…だけど…)」

祐はデュランダルを徐々に力で押していく。

「はぁ!」

その掛け声と共に祐はデュランダルを押しきった。

「な、何!?」

驚くギルフォードに祐は更なる攻撃を続けた。

「柊流剣術…壱ノ段『村雲(むらくも)!』」



次章、~第5章 戦場~




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