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~第3章 選ばれし者~

「先輩、お疲れさまです」

「二人ともお疲れ。祐もやるな?」

「まぁまぁですよ」

観客が決闘場からぞろぞろと出ていく中、愛菜とラザフォードが二人に歩み寄りラザフォードが祐を誉めると祐は少し照れた。

「さっきは因縁つけて悪かった」

ダグラスが祐に詫びた。

「いや、それはもういい。それとあんたの槍はまだまだ強くなれる」

「!?」

祐の意外な言葉を聞いたダグラスは驚いた。

「元々の素質はあるけど行動が単純、攻撃のパターンがわかりやすい…これらを直すことができればかなり強くなれると思う」

「お前の『目』はそこまでわかるのか?」

「愛菜から聞いたんですね…この『目』は観察眼とも言えます。『目』に意識を集中することで相手を見抜いたりその者の器までも計ることができます。これも親父からの教えです」

「それにはこちらの世界にも同じようなものがある。呼び方は『目憑(ルーン)』。もしかして、一瞬先の未来も見えたりするのか?」

「まぁ、意識を集中すればですね。俺の場合、動かず集中しないと一瞬先の未来は見れないので戦闘に使うには向いてないですけど」

祐は苦笑いした。

「それに比べて愛菜は動きながらでもそれを使うことができますよ?稽古をしているときにそれを使われて負けた時もありましたから」

祐は目線を愛菜に送ると愛菜は照れた。するとラザフォードは疑問を投げ掛けるように話した。

「うーん…どうやら君達の使う目と目憑は同じみたいだな…お前の親父さんはこちらの人間なのか?」

ラザフォードが祐に問いかけると祐は困りながらも答えた。

「たぶんそれはないと思いますけど…俺もよく親父のことはわかっていませんから…」

祐は潤のことを考えてみるとよくは知らない。自分と梓の父親、明美の妻、好きな食べ物、公務員、剣術の師匠…出てくることはありきたりなことだった。

「(こうしてみると俺って親父のこと何も知らないんだなぁ…)」

神妙な顔をした祐にラザフォードは声をかけた。

「ま、いいさ。お前の実力も知れたし。ダグラスもこれからの訓練に励めよ?」

「…はい…」

ダグラスは祐に負けて相当ショックなようだ。

「とりあえず今日はゆっくりしろ。この世界に来ていろいろ疲れただろ?」

ラザフォードが祐と愛菜を気遣い、休むよう進めてきた。

「そうですね…確かに疲れました」

「私もです。ラザフォードさんの言う通りにします」

祐と愛菜はラザフォードの提案を受け入れた。

「よし、じゃあ行くか!」

4人は決闘場から出ようとした。


すると一人の兵士がラザフォードに駆け寄ってきた。

「ラザフォード様!見張り隊からの報告です!ソマリア丘にクルナラ王国軍が武装して待機しています!その数約五千!」

「クルナラ王国だと!?なぜもっと早く気づかなかった!?」

兵士の話に驚くしかなかったラザフォードであった。

「見張り隊竜人兵によるとその軍勢の先頭には『無敗の神将』と聖剣デュランダルがいるとのことです!」

「ギルフォード!?なぜあいつが……発見できなかったのはデュランダルのせいか……」

すると4人のもとに2人近づいてきた。

「おそらく狙いは私とクリスタル、そして神の聖遺物だろう」

4人の近くにキルナとイルミナが決闘場にいた。どうやらさっきの決闘を見ていたらしい。

「まさか…クリスタルの力で封印されている神の造りし武器ですか?」

ラザフォードがキルナに言った。この世界に初めて来た二人にとっては話がわからなかった。

「ギルフォードと私は因縁の関係にある。私が遠征で各地に旅をした時に偶然奴と出会い決闘を申し込まれた。その当時、奴はまだ『無敗の神将』とは呼ばれていなかった。その際、最初は互角だった…デュランダルを使った奴と対峙する前は…」

キルナは凄く怖い顔をした。まるであの日のことをトラウマのように感じているかのように。

「勝つことはできなかった…奴とデュランダルが一緒だとおそらく誰も勝てん……」

「それほどまでに聖剣デュランダルっていうのが脅威なのですね…」

愛菜が呟くように言った。

「おそらく、攻撃を仕掛けて来ないのはこの城ごとクリスタルと聖遺物を手に入れるためだろうな…」

「では、すぐに部隊を編成します!無敗の神将が相手ですが…」

ラザフォードは自信が無さそうに言った。そのギルフォードがどれくらい強いのかラザフォードの様子で2人は察した。

「その必要はない。5つの聖遺物の内の2つを祐と愛菜に授ける」

「!?…いいのですか?聖遺物は世界を破滅に導くとも言われていますよ?」

ラザフォードは驚いたがキルナの内に秘めている想いを感じ取った。

「力を正しく使えば二人の力になるさ…それに遅かれ早かれこうなる運命だったのだ。…先ほどから5つの内、聖剣エクスカリバーと聖槍グングニルの2つが聖なる輝きを発している」

「神の造りし武器、クリスタルの聖なる輝きを放ち、選ばれし者を待つ…『イデア神話 3章 天変地異』…ではこれから世界は…」

「荒れるだろうな…」

雰囲気が穏やかではない二人についに沈黙が訪れた。一国の王として何か思うことがあるのだろう。その沈黙を破るようにして祐が口を開いた。

「ようは無敗の神将を退けばいいんですよね?」

祐の口から出た言葉は意外な言葉だった。

「『退けば』、か…今の私でもラザフォードでもできないが…その自信はどこから来るのだ?」

「聖遺物…もしそれを使うことが出来れば可能かもしれません」

「聖遺物の力に頼るのはよくないぞ?」

キルナは祐を心配した。

「わかってます。ただ、もし俺達がその選ばれし者なら何か道を示してくれるかもしれません…」

愛菜も首を縦に振った。だか、まだ17歳と16歳の子供には重すぎる選択だった。

「わかった。ではクリスタルと聖遺物のある場所に行こう。ラザフォード達騎士団は警戒体制に移ってくれ」

「かしこまりました!行くぞダグラス!」

「はい!」

ラザフォードとダグラスは走り去って行った。

「では、行こうか」

キルナとイルミナと祐と愛菜はクリスタルの場所に向かった。


~王の間~

「クリスタルはこの玉座の後ろだ」

玉座の後ろには何もなかった。

「イルミナ頼む」

「はい」

イルミナが何かの呪文を唱えるとそこには扉が現れた。祐と愛菜にはその呪文がどんな言語を使っているのかわからなかった。わからなかったのではなく聞き取れなかった。4人はその扉を開け奥へと進んだ。中は人工的に建てられた洞窟のような感じがあり、神殿を思い浮かばせるような造りだった。道は真っ直ぐに延びていてその奥には光が差していた。

「クリスタルへの道は普段、封印術を施している。イルミナはその封印を作ったり解除できたりする」

「クリスタルへ近づけるのはごく一部の者だけ。これはその他の者を近づけさせないための処置です」

すると祐が二人に質問を投げ掛けた。

「クリスタルとか神の聖遺物とかギルフォードとか…俺達には全然何もわからないんですが…」

キルナはその言葉を聞いて申し訳無さそうに言った。

「おおすまんな。祐達には何のことかわからんよな…少し話が長くなるがいいか?」

「大丈夫です」

「はい」

二人は同意した。キルナは歩きながら語り始めた。

「クリスタルっていうのは創造神イデアが作り出した自らの力の一部を与えた石。クリスタルは世界に6つありはるか昔からこのクリスタルがあることによって世界は調和を保っている。約千年前に聖戦と呼ばれた戦争があったが…」

「聖戦?」

祐が疑問を抱いた。

「1つの国が世界を支配しようとしてクリスタルの力によって封印された聖遺物を使い、他の国々に進行したことがきっかけで始まった戦争だ。その国の名はアロン王国…他の国も抵抗しようとクリスタルの封印を解き、聖遺物を使って抵抗したがその国の軍事力はとてつもなかった。どんどん進行するアロン王国に対して我々の国も抵抗した。その当時の王・ジュンサイはこの国にある5つの聖遺物を使いこなし、兵士と共に抵抗した。その結果、アロン王国の当時の王を打ち倒し戦争が終結した…」

「じゃあ、この国は英雄の国…?」

「そうだはあるが…まだ続きがある」

キルナが困り顔になりながらも話を続けた。

「この国に伝わる逸話『英雄伝』にこのような節がある。『世界を救いし英雄の傍らには大勢の兵士と一人の天使がいた。天使は掟を破り、力を封じられ異次元に飛ばされた。英雄は聖遺物を不安定にさせたことで次元の渦に飲み込まれた。残った兵士は戸惑いながらも英雄の弟を新たな王とした。聖遺物はクリスタルによって再び封印され、選ばれし者が現れるその時を静かに待ち始めた』…とある」

「では、この国は英雄の弟の末裔が治める国なんですね…」

「私で20代目だ…天使には人間に干渉してはならないという掟があるらしい。聖遺物を不安定にさせたことについては諸説ある。持ち主がその聖遺物の力を最大限に使いこなせなかった、聖遺物を多く使うことで聖遺物同士の力のバランスが崩れた、聖遺物を全て使いこなさなければならない、などいろんな考え方ができる」

キルナの言葉に祐と愛菜は唖然とした。自分たちが今から手にしようとしている物の恐ろしさを知ったのであった。

「その後の英雄と天使の行方は?」

愛菜がキルナに質問した。異次元に飛ばされた天使と次元の渦に飲み込まれた英雄の行方を愛菜は気にしていた。

「それについてはわからない…どの書物にも記載されていないからな」

「そう…ですか…」

愛菜が残念そうに言った。その瞬間、四人の目に青白い光が見えた。

「…着いたぞ…ここがクリスタルのある場所…言わばクリスタルルームだ」

案内された部屋の中心に巨大で青白く透き通った色の石が宙に浮いていた。その回りには聖遺物と思われる武器があり、内の2つだけ青白い光を放っていた。

「…石が…宙に浮いている…」

「で、でかいな…」

二人は今見ている光景に驚くしかなかった。

「二人共、時間がないのでな…驚くのは後にして光を放っている聖遺物に触れてくれ。剣でも槍でも好きな方を選んでくれ」

キルナは驚いている二人に声をかけた。二人は互いに顔を合わせアイコンタクトを取り、考えていることを言葉にせずに理解した。祐は聖剣エクスカリバーの方に、愛菜は聖槍グングニルの方に歩きそして触れた。その瞬間、二人を青白い光が包み、二人は意識が飛んだ。


祐が意識を取り戻したとき、周りが真っ白な空間だった。

「…なんだ…ここは…」

戸惑っている祐に声をかける者がいた。

「…千年ぶりのお客さんだな…我は歓迎するぞ?」

声が聞こえた方を見ると黒い髪をかんざしでまとめていて、花柄の着物を着た女がそこに立っていた。モデルのような体型をしていて妖艶な姿をした彼女を見た祐は少しドキッとした。

「着物…誰だお前?」

祐は目の前にいる物の正体がわからなかった。

「我はルミナ…人は我のことをエクスカリバーと呼ぶ」

「!?…エクスカリバーって人だったのか!?」

祐の問いかけにルミナは答える。

「まぁ人とはちょっと違うのだが……ん?お前よく見たらあの男によく似ていい男だな?…まぁそれはどうでも良い。我はお前を待っていた」

「?意味がわからない…何でだよ?」

「この世界を再び良くないものが広がり始めている…千年前と同じだ。お前は私に選ばれし者…どうか世界を救ってくれ…」

「良くないもの?」

「また聖剣アロンダイトが目覚めようとしている…せっかくの封印の力が弱まっているようだ…」

ルミナは深刻そうな顔をした。

「聖剣アロンダイト…一つ質問なんだが聖剣の力を使って異次元に行けるのか?」

祐は唐突な質問をルミナに投げ掛けた。

「…異次元?……ああ、もしかしてパルティーンやアビスのことを言っているのか?」

「パルティーン?アビス?」

祐の頭はパンクしそうだった。また新しい言葉が出てきたのだから仕方がない。

「パルティーンはこの世界よりも技術が発展した世界。我もよくは知らん。アビスは創造神イデアとそれに仕える天使の住む理想郷。緑が広がり、動物が生き生きと暮らしている世界…」

「そのアビスとやらに関してはずいぶんと詳しいんだな?」

「我は元々その世界の住人…神により力を授けられ聖剣エクスカリバーとなった人間だ」

ルミナがアビスの人間であり、神によって聖剣エクスカリバーになったということを祐は信じることができなかった。

「人が途中から武器になるとか…信じられないな…」

「それを可能にするのが神だ」

祐はまだ信じることができなかった。

「じゃあ、聖遺物ってのは全部アビスって世界の住人なのか?」

「そうだ。我を含め、10個の聖遺物があるがそのルーツはアビスに結び付く」

「…アビス…パルティーン…で、異次元に行く方法は?」

「…どうやらもうお前の中に答があるようだが?…時が来たらわかるだろう…」

ルミナは意味深な言葉を言った。祐の中に何かあることをルミナは知っているらしい。だが祐には何を言っているのかわからなかった。

「はぁ…意味がわからないぞ…」

ため息をつき呆れる祐であった。そのため息は真っ白な空間に飲み込まれるように消えていった。


次章、~運命~


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