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蝉時雨の詩  作者: 一時停止
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蝉時雨の詩


外を見れば、夕暮れがすぐそこまで迫っていた。

茜色の空が水色の空を追いやって…やがて、茜の空も虚無の色に呑まれて行く。


そうして、また。


朝を迎え、昼を越し、やがて夜の感傷に沈み。自分に酔いしれ、眠りにつく。

そんな、平和で何も変わり映えの無い、1日に自分はとけ込んで行く感覚に落ちていた。



マグマの気持ち。

あつい溶けたチョコレートの気持ち。

山間を流れる流水の気持ち。


まだ、日の目を見れない日暮ひぐらしの気持ち。




七日しちかは、ぼうと外を眺めていた、悠長に外を眺めていると、巡回してきた先生に丸められた教科書で、小突かれる。


「七日ぁ~、優等生のお前が外なんて見て、美人でも歩いていたか?」


いたずらげに、担任は笑って”俺も美人と結婚してみたいもんだ”と、半ば自己満足の発言をし、一人で頷いている。僕は美人と結婚なんて考えていない。本音を言うと寒い。


「先生は、”優等生”の僕を商売道具でたたくんですから〜、そんな人を美人さんは結婚したいとは思いませんよ〜」


皮肉とギャグのミルフィーユをどうぞ、と僕が言葉のナイフで突いてあげると途端に痛そうな顔をする担任。そう、担任の先生は結婚のことを結構気にしていて隣町で合コンをしたとか、なんとか本当か嘘かわからない事も生徒に話しては、からかわれている。


担任にからかわれ、僕がそれをお返しする…なんてのは、既に日常と化して僕らの世界にとけ込んでいる

代わり映えの無い、日常の中のほんの少しの出来事でしかない、僕にとってはこんな茶番は通例行事とおもってやっている。


ほんわかした笑いが教室を包み、僕もそれにあわせて微笑んでいた。


こんな、茶番も後何年続けるんだろう。優等生、劣等生って決めつけて敷かれたレールの上をただただ、走るだけの簡単な事。大抵の人はそのレールの上に乗って走っている事を知らない。そうして、知る事もなく

命を散らして息絶える、でも僕は確かに実感していた。ここが現実で、僕もまた優等生というレッテルを他人の裁量で貼り付けられて、自分の手では剥がすことのできないシールとなって、一生付き纏うこともあれば、他人が剥がしてくれる時もある。



あるいは、剥がす事が出来なくて。

苦しくなって、生き辛くなっていって、

深い深い海の底に堕ちて行き。

光の届かない、深海の底から泣きながら懇願するのである。


光が、見たい、見たい。


見られないのであれば。


この、深海で死ぬしかないの、か と



この世界は、僕らのような人にとって、とても息がし辛いのかもしれないな。






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