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第一話

 

「おお、四人もの聖導の勇者様がいらしたぞ!」


 光の柱にのまれて気づけば全く知らない場所にいて、まったく知らない人たちに囲まれていた。

 これなんて拉致現場?

 

 俺たち(・・・)を囲んでいるのは帯剣してる兵士らしき人たち多数と三人の法衣を身に纏った魔法使いのような人たちだった。

 

 そして、幾何学的な模様の描かれた魔法陣らしきモノの上に俺を含めて4人の日本人が立っていた。


 一人は黒髪で精悍な顔つきをしたお堅い雰囲気を醸し出してる男。

 一人はきれいな黒髪を腰のあたりまで伸ばした清楚な女性。

 一人はどこぞの高校のブレザーを身にまとったどこにでもいそうな少年。夜中近い時間に制服ってことは夜遊びでもしていたのだろうか。

 

 お堅いのと清楚な女性は現状を理解しようと頭を悩ませているような感じがするが、高校生の少年は一人なぜか瞳をキラキラと輝かせていた。

 

 俺もまたお堅いのと清楚な女性どうように現状の理解に努めようと周囲に気を配ろうとしたところで、法衣を身に纏っている中でも一番貫禄のある男が俺たちの前まで歩を進めてきた。


 「勇者様方、ようこそいらしてくださいました。私の名オーウェン・ディヴィースと申します。そして我々は魔導世界リデアールにおける種族は導人族(アルマデル)。ここはマクダウェル帝国が誇る帝都ゴエティアにある聖導神殿の儀式場でございます。」


 男は片膝をつき、おそらく帝国の礼をとっているのだろう。リデアールとかアルマデルとかについては今は横においておこう。勇者様とかいうのが俺たちのことをさしているのだとしたらおそらく今後の展開を考えると俺たちは・・・。


「勇者様方は突然ことで混乱していらっしゃると思いますが、どうか我々を大魔王軍からお救いください」


 やはり、戦争か。




 場所は移ってマクダウェル城:王座の間。


 俺たちはオーウェンに案内されて神殿から城の王座の間に移動していた。

 神殿と王座は秘密の回廊でつながっているらしく外には出ていない。


 王座の間にはすでに何十人もの人が揃っていた。服装からみてこの国の重要な役職や高い身分の人間に違いない。


 王座に座るは金髪碧眼で体つきからいって歴戦の戦士といった大柄の男だった。


 鋭い眼光と顔にある傷からみて相当な修羅場をくぐってきているだろうことがうかがえる。

 王座の前まで促された俺たち四人は、誰もが皇帝からの視線に体を硬直させてしまった。


 正直、いまならなんと言われても首を縦に振ってしまうだろう。

 それくらい目の前の男が放つ圧力(プレッシャー)は重い。


「よくぞ来てくれた勇者たちよ。私がこのマクダウェル帝国が第19代皇帝ジョルダーノ・ネファリウス・マクダウェルである。戦時下である故私もすぐに出なくてはならぬ。この世界や現状とこれからのことについては後程、次席宮廷聖導師アマエルに説明させる。私から諸君には、力を貸してほしいとだけ言っておこう。是か否かはアマエルからの話のあとにこたえてくれればよい。では、私は失礼させてもらう。」


 ただただ圧倒され、口をはさむ間もなく、皇帝は話を終えると王座の間に集まっていたほとんどの人間と一緒に部屋を後にした。


 結局、俺たちはいまだ何もわからずじまいである。


 呆然と皇帝の去った王座を眺めていると俺たちの前に、一人の真っ白な法衣を纏った見るからに高価そうな杖を持つ女が出てきた。

 この人が皇帝の言っていたアマエルなのだろう。


「お初に、勇者様方。ジョルダーノ陛下からも紹介されたように私は次席宮廷聖導師のアマエルです。あなたたちにはこれから様々なことをご説明して差し上げよう。質問があったら遠慮せずに言ってくれていい。とりあえず、まずは場所を移そうか」


 アマエルがそう言って、王座の間を出ようと俺たちも入ってきた大きな扉から城の廊下に出る。

 俺たちもおいて行かれないよう、アマエルのあとに続いていく。


 アマエルが俺たちを連れて入ったのは王座の間から階段を二つ上がって少し歩いたところにある談話室のような場所だった。

 メイドが数人控えており、扉の近くにいたメイドに何かいうと談話室の中央に位置する円卓に俺たちを座らせた。


 アマエルも席に腰を落ち着けるとさっそくこの世界のことについての話が始まった。


 お堅いのも清楚なのも少しでも情報を理解しようとアマエルの話を黙って聞いていた。

 高校生だけは召喚されたばかりの時のように目をキラキラと輝かせて時折「ファンタジーキターーー!」とか「俺たちは召喚勇者かあ」とかつぶやいていた。アマエルや他二人の耳には届いていないようだった。


 リデアール世界と現状のことについての一通りの説明が終わったところで先ほどのメイドが部屋にはいなかった何人かのメイドとともにお茶を運んできて一旦休憩となった。


 お堅いのと清楚なのは聞いた話からなにかしら考えているのだろう、お茶やお菓子に口をつけながら難しい顔をしていた。

 高校生は休憩となってからアマエルに目を輝かせてあれこれ質問している。


 俺もまたお茶を飲みながら話を整理しよう。

 

 まず、このリデアールと呼ばれる世界にはおおまかに4つの種族が暮らしている。

 初めに会ったオーウェン(アマエル曰く第四席の聖導師)が言っていたように導人族(アルマデル)と呼ばれる外見上俺たち地球人と何も変わらない種族。

 

 リデアールに存在する北南東の3つの樹海の内、南と東の樹海に暮らす精霊族(アニムス)と呼ばれる種族。彼らはさらに二つの分類がなされ、実体を持つモノがエルフ、実体を持たないものをフェオムと呼ぶそうだ。ちなみにフェオムはエルフの死後に強力な個体が()るものであるらしく不老不死の存在であると言われているらしい。

 

 そして、さっきから高校生がアマエルに質問しているものの一つでもある獣人族(アルディナ)。北の樹海や高原などでその多くが暮らしている。鳥や狼などといった様々な獣人がおり、それぞれがその動物の特性を持つとされている。多くが俊敏で強靭な肉体を持っているそうだ。 


 4つ目になったのが個体数は少ないが個人で強力な力をもつ眷人族(アルガデル)。彼らは外見上は導人族と変わりないが、生まれたころからなにがしかの神からの加護を得ており、肌や髪などの色が与えられた加護による違うらしい。さらに一人ひとりが加護を与えてくれた神を信仰しており、信仰心の強さから加護が寵愛に代わり、さらに強力な力を得る者がいるそうだ。

 ちなみに眷人族は導人族と同じように国を築いているそうだ。


 この世界では『魔力』を用いた『魔導術』というものがあり、それはこの世界のいかなる種族でも持っているものであり、得手不得手はあるが使えるものなのだそうだ。

 


 ちなみに文化の発展度合いは、魔導技術の発展によって私生活でも地球にあるような冷蔵庫や暖房器具などに似た物が使用されている。それだけあるなら生活をする上での不便は少ないだろう。テレビはないようなので残念であるが。


 通貨に関しては金貨、銀貨、銅貨、銭貨というのがあり、銭貨10枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚という価値になるそうだ。平民の平均年収は銀貨2,3枚らしい。

 地球とこっちの物価の違いが俺にはまだよくわかっていないのでお金を使うときはよく考えるようにしよう。


 そして、気になる現状であるが、先ほどこの国の皇帝が話だけして出て行ったことからもわかるように状況は厳しいものであるらしい。


 リデアール世界には二つの大陸と一つの諸島がある。

 西の大陸をジャウ大陸、東の大陸をリデア大陸。諸島は1つの国ということなのでカリファ諸島国と呼ばれている。


 大魔王軍の侵攻がはじまったのは今からおよそ3年ほど前で、昨年、つまり2年でジャウ大陸は大魔王軍のによって制圧されてしまったらしい。現在でもジャウ大陸には生き残りがいて抵抗を続けているらしいのだが、連絡もろくにとれないうえ、大陸も別なため援助のしようがないそうだ。

 ジャウ大陸を制圧した大魔王軍は次にカリファ諸島へと軍を進め、同時に現在俺たちが召喚されたマクダウェル帝国のあるリデア大陸の北部に位置する商業国エチカにも攻め込んできたそうだ。

 このエチカでの戦いは現在でも続いており、情勢は芳しくないそうだ。


 皇帝も強力な戦力であるため、エチカに援軍として向かったそうだ。

 皇帝がそれでいいのかとも思ったが、大国でありながら反乱の種もなく、皇帝の跡継ぎもすでに第一王子のウェルデ・アナスタシア・マクダウェルと決められている。皇帝に万一のことがあっても大丈夫なように準備はされているようだ。


 エチカには現在、この世界に元からいる住人の勇者5名、リデス大陸の各国から派遣された軍隊10万が交戦している。皇帝が向かったことで状況が好転できればいいとアマエルは話していた。(皇帝は元勇者でその代では筆頭であったらしい)


 リデア大陸の各国の様子などは今はいいとして省く。問題はこの後だ。

 

 大魔王軍の侵略、制圧された大陸、侵攻を受ける大陸、劣勢の現在、呼び出された俺たち。


 悪いようにはされないだろうが俺たちは戦わなくてはならない。


 戦いに優位に立てるものが現状何一つない俺が(・・)


 この世界で生きるための力が必要だ。





 


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