表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3.僕は本当のことを言うことができない。

「あなたは、本当に一体どこから来たのですか?」

「僕は『ここから遠い国で行われた転移実験の事故でこの森に落ちて、その結果、外では生きられない体になってしまった』んだ、それ以上のことは言いたくない」

 僕は自分の身の上の設定を思い出しながら、そう言った。いくら気の知れた仲とはいえ、本当のことは言えない。言いたくはない。悲しくなってしまうから。というか、思い出しただけで、恋しくなってくる。あの青い地球、僕の故郷が。


 気がついた時には、この星のこの場所にいた。緊急事態が発生した当初は地下に閉じ込められる形になったが、それが幸運だった。この星は地球生物の僕にとって、生存に適さなかったのだ。

 この地下室は、疑似生物圏を形成している。大気は常に地球のそれと同等に保ち、生物圏は日本のそれを模倣している。この星に太陽が昇る限り、その環境は維持し続ける。この地球とは異なる星にありながら、僕は小さな地球環境の中にいる。この研究施設は、もともとそういう研究をしている場所だったのである。

 


「僕は、この小さな世界から出られない。悲しいことに、思い出以外で僕の故郷に戻ることは許されないんだ。思い出すと、未だに涙が止まらない……」

 僕の生きていたあの地球に戻る術はない。僕はこの閉鎖された世界で生きていくしかない。


「すいません。そうでしたね」

 彼女は感づいているだろう、僕がこの場所に現れた理由に嘘があることぐらい。しかし、彼女はそれを責めたりはしない。誰しも踏み込んではいけない事というものがあるのだ。

 僕は彼女に真実を話せる日が、いつかくるのだろうか。

 話したところで、心の虚無が大きくなるだけではないだろうか。

 今はまだ話せない。

 僕の迷いはまだ消えていないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ