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ようやく序章終了です。

次回は別の章になります、って言うか物語的に言うならこれでもまだ一日しか経っていないんだよなぁ。


「生きている全てが大嫌い?」

 リアはそう呟いた、それに対し僕は力強く頷く。

「そうだよ、僕は嫌いだ。あの子を否定した世界も、全てが憎い」

 僕はこの世の全てが憎いと言った感じでそう言った。他人が見たらそれはどうしようもない憎しみや絶望をただただぶつけるだけの子どものようだったっていう感想を言っていただろう。

 それに今のリアの表情、間違いなくそうだ。リアは分かってしまった。目の前に居る少年は自分のそれよりも非常におぞましい境遇をおくって来たのだと。

「だからこそ、僕は英雄にならなきゃいけないんだ。世界を変える為に」

 その言葉に込められた思いは非常に重く、強迫観念に似た何かを感じさせた。

「……世界がそんな簡単に変わるわけないだろ」

「ううん、一つだけあるよ」

「どんな考えだ?」

「世界征服」

 僕は子どものような事を至極真面目に言った。

「……そんな幼稚な考えを至極真面目に考えているお前が恐ろしいよ」

「アハハハハハ、もしかしてバカにしてる?」

「まさか……まぁ確かに幼稚って感じがするけどよ、でも――」


「――俺は凄いと思うよ、きっとお前ならそんな世界を作れると思う」


 ……まさか本気にするとは――。

「アハハハ、と言ってもやるつもりなんて無いしね……」

「結局嘘だったのか」

「まぁね、でも、郷理との約束が無かったら――」

「まさか……」

「――勿論嘘だよ」

 と、言ったけど実際の所は本当かな? と、言っても世界征服なんて時間がかかる上にその準備をしている間に殺される可能性も高いからやんないけど。

「でも、まぁ当分は旅をする事になるだろうね。ここには居たくないし、いずれはだけどこの大陸からも去りたいし」

「どうしてだ?」

「ああ、それは――ちょっと移動するよ!」

 僕はそう言ってチキンとリアの襟足を掴み、背中から炎の翼を出して空を飛んだ。

「なっ!? い、いきなりどうしたんだよ!!」

「ゴメン、悪いけど……下を見ればすぐに飛んだ理由が分かるよ」

 僕はそう言ってリアに下を見るように促す、そしてリアは下を見て納得したような表情になる。

 リアの目線の先には、下にはあの国の、僕が脱走した国の兵士が居たからだ。

「成る程な……あれがお前を召喚した国の兵士ってわけか」

「正解」

 そう、多分僕を連れ戻しに来たんだろう。昨日、顔写真のようなものを撮られてたし。

 見つかったら大変だよ、ちきしょー!

「と、言う訳でちゃんと口閉じときなよ。下手したら舌が切れるから」

「へっ? ちょ、ちょっと待て……お前俺置いてくんじゃなかったのか?」

 ああ、それね。

「最初はそのつもりだったけど、お前魔王の子なんだろ?」

「ああ……」

「それで人間にあんな目で見られてるっと、そうでしょ?」

「その通りだぜ」

 だったら――。

「それでリアは素材はいいのに何か男っぽい感じがするでしょ? だから僕が君をコーディネイトして上げるんだよ」

「……はぁ? ちょっ! 何でそうなるんだよおい!! それに可愛いって、俺は魔王の子どもなんだぞ!!」

「まぁまぁ! そう言わずにィ!!」


 最も、それは嘘なんだけどね。人が嫌いって言うのも、全部嘘。嘘、嘘、嘘。

 僕は嘘吐きだ、結局の所自分しか信じられない。おじいちゃんが誰よりも英雄だったから、おばあちゃんが不死鳥だったから、僕は化物だった。人になりたかった、人で生まれたかった。人だったら、こんな思いもせずにすんだんだ。

 当時の僕はそれで苦しんでいた。

 そんな僕を変えてくれた、救ってくれたのは郷理だった。誰よりも美しく、誰よりもはかなく、そして全てを見通せたから殺された少女。

 そんな少女に、リアは似ていた。外見も、性格も、全てが正反対と言っても良いほど似ていないはずなのに似ていた。

 正直言って嘘を言いからかっていて楽しかった。まぁちょっと言い過ぎた気もしたけど……。

 でも、まさかあの時に……郷理と同じ言葉を言うなんて。


「驚いたな……」

「ん? 何か言った?」

「いや、何も……じゃぁちょっと飛ばすから……舌を切らないようにがんばってね♪」

「へっ? ちょ、キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




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