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実体のある炎




「………」

「……悪かった、この通り謝る。だから許してください!」

 僕はリアにそう言い土下座をした。この世界じゃあ土下座なんて無いだろうけどこうして頭を下げて謝る事で相手のご機嫌をとるんだ、じゃないと僕の朝食が無くなってしまう。正確に言うならリアの胃袋の中に消えてしまう。

 それだけはなにがなんでも避けなければならない、僕の為に!

「で、俺の身体は?」

「そりゃぁもう永久保存!」

 そう言った瞬間、リアは残っていたお肉を全て口の中に入れてしまった。モシャモシャと咀嚼する音が響き渡る。

 その瞬間、僕の表情は絶望に染まった。多分ムンクの叫びのようになっているだろう。

「ァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!! ちょ、何で食べるのさ!!」

「自分の行いを考えろこの変態!! お前に食わせる朝食なんかあるか! 少しは反省してろ!!」

 リアはそう言って完全にそっぽを向いてしまった。

 ああ、折角の朝食が……朝食ガァァアアアア!!

 そう、思い嘆いていた時、地面が暗くなった。ふと、上を見上げると頭上には像のような大きさの二本の捩れた角が生えた怪鳥が僕らを捕食しようとしていた。

「あ、ランクAの魔獣種・リシュア!」

「ランクA?」

「魔獣にもランクがあるんだよ、ランクAクラスなら魔法騎士ランクBが十人居れば倒せるレベルだ」

 へぇ、この世界にはそんなのがあるんだ。僕のランクは一体どれくらいなんだろうか? 後で調べる方法があるのであれば僕も調べてもらおう。

「それでリアは何ランクなの?」

 そう言うとリアは淡々と呟く。

「DDDランクだ」

「え、それって強いの?」

「Dランクの魔人三人分だからあんまり強くない」

 その言葉を聞いた瞬間、静寂が流れる。

「………」

「そ、そんな目で見るな!! 俺は子どもだから仕方が無いんだ!! 見ろ、この目を、蒼いだろ? これはまだ子どもって言う証なんだよ! 大人にならなきゃ紅くならないんだよ!! それに魔人の子どもはメッチャ弱いんだよ! 分かったこのヤロー!!」

 途中から涙目になっていたけど最後まで言い切った。ふぅん、なるほど。だからリアの目は蒼かったのか。

「じゃぁ僕が倒すね」

 そう言って僕は両手を燃やし右に回転する。すると炎が僕の姿を隠すように纏わり付き――

「炎柱・火山!!」

 ――火山のように爆発し、頭上に居た魔獣に直撃した。魔獣は僕の炎にぶつかった衝撃によってバランスを崩し、背中から地面に落下した。ベキリと嫌な音をたてて。

「ギシャァー!」

 魔獣は胸に付いた炎を払おうとうつ伏せになろうとするがさっきの衝撃で骨が折れたのかじたばたとのた打ち回っているだけだった。多分背骨が折れたんだろう。そのくらいの強さの魔法だったからね。

「ごめんね、一思いに殺せなくて――」

 僕はそう言って魔獣に近づく、魔獣は僕を見る目が変わり、化物のような存在を見る目になっていた。もしくは自分の命を刈り取る死神を見る目だ。

 そりゃぁ当然だ、僕は今からこの魔獣を殺すんだから。正確に言うのであるならばコイツを殺して僕の朝食にする、だ。

「――炎手・貫」

 そして僕は魔獣の頭に燃えている手で貫いた。高温の炎が怪鳥の脳漿を沸騰させ、脳みそのタンパク質が熱により固まって炭化した。

 怪鳥は口から黒い液体と煙を吐き出し、ピクピクと痙攣した後動かなくなった。

「…………」

「よし、朝食ゲット!」

 本当、今日はついてるな。まさか朝食にこんな新鮮で大きくて美味しそうな物が手に入るなんてさ。

 さてと、丸焼き丸焼きっと。

 そう思いながら僕は両腕に炎を燈す。さぁて、こいつはどんな味がするんだ?

「………あのさぁ……」

 僕が怪鳥を焼こうとしたその瞬間、リアが話しかけてきた。

「? 何?」

「……殺し方グロすぎだろおい、魔人でも脳みそを直接焼くなんてしないぞ」

 リアは完全にドン引きしていると言った表情でそう言った。

「まぁ確かに僕もそう思うけど……まぁ止めは確実に刺した方が良いしね」

「それは構わないけど……獣とか魔獣とかだけにしてくれよ、そういうことするの」

「分かってるよ、そんなの言われなくても」

 少なくとも僕は食べる奴にしかこれはしない。確かにこの力は本当にその気になったら証拠も残らない殺人を行う事も出来る。

 だけど、そんな事はしたくない。何か嫌だ。理由になっていないけど嫌なんだ。

「それよりも……さっきの炎は何だ?」

 リアは僕を見てそう言った。

「炎? 炎は炎だけどそれが何か?」

「いや、そうじゃなくて……何て言うんだろうか……お前の炎にぶつかったそれ」

 そう言ってもう動く事の無い怪鳥を指差した。

「何でぶつかった瞬間鈍い音がなったんだ?」

「ああ、なるほどね……」

 そうか、そういえばまだ不死鳥の能力について説明していなかったね。でも不死鳥の能力を説明するのはめんどうだからな~……口で説明するより見せた方が早いな。

「じゃぁ、見てて」

 僕はそう言って全身に炎を纏わせる。そして、全身の構造を変え、巨大な鳥の姿になる。不死鳥本来の姿だ。

 リアは不死鳥の姿になった僕を見て、唖然とした表情をしていた。

「どったの?」

「い、いや……分かってはいたんだけど……本当に不死鳥なんだなって、身体が炎で出来てるんだなって……」

 ああ、なるほどね。こっちの世界でも全身が炎で出来ている奴なんて居ないのか。それに心のどこかでは信じていなかったんだろうな。

 やっぱり実際に目で見ないと駄目だよね、うん。

「どう? 綺麗でしょ?」

「自分で言うって……まぁ確かに綺麗だけどさ」

「まぁ、でも……大人になったらもっと綺麗になるんだけどね。今は子どもだからまだそんなでもないけど」

 そう言った瞬間、リアの表情が驚愕に染まった。

 それもそうだろうな、この姿でもまだまだなんだから。大人の不死鳥はそれはとても綺麗だ。この世に存在する物とは思えないほど、冒涜的に美しい。

 頭の炎は聖火と呼んでもおかしくない物になって、尾羽はビルのように長くなり、その全長は町を覆うほどだ。最近は見れなかったけど、あれは本当に綺麗だったな。

「じゃぁ僕の身体に触ってみ」

「いや、それは無理だろ。お前の身体炎で出来てんだし」

「触れ」

「……うん、分かったよ……」

 リアはそう言って僕の羽に触れる。

「……熱くない……それに触れる」

「そう、不死鳥の炎は実体がある。そして温度も調節できるんだ」

 そう言って人間の姿に戻る。

「さてと……コレ食ったら、お別れだね」

「………へっ?」



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