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敵対関係相乗効果は現実理論

いやぁ、楽だった。

三人称楽すぎる。うん、これからこうしよう!



「藤堂ゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」

 玉露は滝の名前を叫び、窓から跳躍した。そのまま地面に激突する、わけがなく背中から炎で出来た翼を出し、羽ばたかせて飛んだ。

 そして宿屋の屋根に足をつけて宙に浮いている滝を睨みつける。その表情は今までリアが見ていたおっちゃらけた、ふざけた表情ではなく怒りに、殺意に満ちた表情をしていた。

「おい! ギョクロ!! どうしたんだよ!!」

 リアが驚きに満ちた声を出すが玉露はそれが耳に入っていないらしく、ただ滝を睨んでいた。

 滝はそんな玉露をつまらない物を見るような目で見下した。

「……何のようだ?」

 先ほどの怒り狂ったような雰囲気とは異なり冷静な雰囲気を醸し出していた。

「下らない事を聞くな、混じり物が」

「……相変わらず変わらないな、そしてくだらないよ。その人を見下したような言い方。まぁ混じり物なのは認めるけどさ、その混じり物に命乞いをした奴が言うのは変だと思うけど」

「ふん、そんな些末事……忘れてはいない。貴様から受けた屈辱……嫌でも忘れられんわ」

 眉間に皺を寄せてそう言った、その表情には屈辱的な仕打ちを受けたと語っていた。

「だったら何で僕の前に顔を出す? 忘れちゃいないよね? 僕にはお前を殺す動機がある事を、そして今でも突発的に殺しに行きたくなる事も」

「はっ! そんな過去の事を今でも気にしてるのか? これだから混じり物は……」

 滝がそう言った瞬間――、玉露は接近し、刀を取り出して振るった。滝は自分の手の平から氷で出来た三叉の槍を作り出し、防いだ。

 ガキィンと、金属と氷から出る音じゃない音がぶつかった瞬間に響き渡った。

「……斬るぞ?」

「もう既に斬りかかっているだろうが混じり物が」

 鍔迫り合いしている日本刀と氷の槍を弾き、玉露はもう一度宿屋の屋根に降り立つ。

「取り合えず聞きたい事が三つ……いや、二つ出来た」

 玉露はそう言って刀を振るい、炎を刀に燈す。

「お前は何故この世界に居る?」

「愚問だな、それくらいも分からないのか? 混じり物」

 バカにしているような目で見下す滝。それを見て刀の炎がどんどんと燃える勢いが増して良く。

「まぁ……大体検討は付いているけど」

「言ってみろ、混じり物」

「勇者の召喚に巻き込まれて召喚された、だよね?」

「正解だ。その通りだ、混じり物。最も、私はお前と違い呼び出した国を壊滅させたがな。クラスメイトごと」

「最低だな――って言いたい所だけど僕も見捨てているからね」

「それはそれは……最低だな。私のように皆殺しにして居た方がまだ良かったのではないか? いや、お前なら不死にしてしまえば良かっただろうに」

「嫌だね、何で親しくもない奴等に不死鳥の血を……それにどうせ恨まれるし、後腐れも大きすぎるし狙われるし」

「そうだったな、忘れていた。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 二人は楽しそうに笑う、笑う、嘲笑う。だがそれを見ていた二人は和やかな雰囲気ではなく殺伐とした、殺意に満ちた、いや……殺意しかない雰囲気に飲み込まれそうになっている。


 後にリアはギョクロとタキが満面の笑顔で、だが目だけは一切笑っていないのに笑いあうこの状況を『大災害の前の静けさ』と名付けるのであった。


 そして二人は笑い終えるとさっきまでの殺意しか無かった雰囲気が突如消える。むしろほのぼのとした雰囲気だ。

「で、もう一つの聞きたい事は何だ?」

「ああ、うん。もう一つの聞きたい事はね――」

 そう言って玉露は左手の全ての指を滝に向ける。そしてにっこりと笑い、口を開く。

「――死ね、答えは聞いていない」

 そう言った瞬間、左手から高温の炎が溢れ出す。

火鳥の嘴ペッカタ・フレイムバード!!」

 玉露の左手から魔王にすら匹敵する程の濃密な魔力で出来た巨大な鳥のような炎が噴出され、滝を殺そうと襲い掛かる。

 滝はそれを見て冷静に、地面に自身の手から出た魔力で生成した水を垂らす。すると地面のあらゆる所から水が溢れ出し、滝の所までアーチを作って集まる。

「凍れ」

 その一言で水の一部が固まり、水と氷で出来た龍を作り出した。そしてそれを自分に迫り来る火の鳥から自分を守るように前に置く。

「ドラゴンファング!!」

 滝の言葉を聞いた氷と水で出来た龍はその巨大な口を開けて、火の鳥に喰らいついた。実体のある炎ゆえにバキバキと何かを砕く音が響く。

 炎の鳥は悲鳴じみた音を鳴らして噛み砕かれた、そしてそれと同時に龍の顔が砕けた。火の弱点は水、それは単純明快な事だ、だがそれと同時に高温でもあるのだ。実体のある炎は通常の炎が持っている熱よりも高く長く続く、それは水分を熱湯に変えて蒸発させる事くらい容易い。

 頭部を失った龍はそのまま地面、もとい屋根に雨となって降り注いだ。

「どうした? その程度……?」

 滝は玉露が立っていた場所を見て、固まった。宿屋の屋根の上にさっきまで居たであろう少年の姿が無かったからだ。

 では何処に行ったか、そんなのは少し考えれば分かる事だ。横は滝が見ていたからすぐにばれる。下は水があったので玉露は降りたくない。なら消去法で上になる。

 そしてさっき火の鳥と水氷の龍がぶつかった時に出た蒸気、で上は見えなかった。それはつまり――

「死ね」

 玉露はそう静かに言って、滝目掛けて刀を突き出し落下する。

 滝は避けようとするが間に合わないと理解する、何故なら玉露が落下する速度の方が速いからだ。足から炎を噴出して加速する、それは玉露の世界にあるジェット機のような感じだ。

 それを機械に頼らず人体でやってのける不死鳥の特性だからこその技だ。

 一方の滝は冷静な表情をしているが内心焦っていた。それもその筈、玉露が本当に本気で殺しにかかっているからだ。国を殲滅させんが勢いで。

 正直言って滝はいくら自分が玉露の大切な存在の命を奪ったからと言ってその周辺にいる人間を殺す事はしないだろう、そう思っていたのだ。だから魔王の四女と一緒に旅をしてる時には現れず、国に入って夜中人静かな時間帯を狙って現れたにも関わらずにだ。

 玉露はそんな滝の思いを真っ向から否定せんと言う勢いで暴れているのだ。そもそも今から玉露が放とうとしている技はそれこそ半径5メートルを焦土に変えることくらい簡単に出来る技だ。

 もしそんな技が街中で放たれたらどうなるかは簡単に想像がつく。

 それ故に、滝はその技を真っ向から防ぐ事にした。相性的には自分の方が有利になるくせに純粋な殲滅力なら間違いなく他の二人を含めても勝てないのだから。

「コールドシールド!!」

 滝は空気中の水分を固めて玉露の持っている刀を氷結させ、自身の頭上に雪の結晶のような氷で出来た厚さ三十センチの盾を三枚重ねで出現させる。

「ヒートディストピア!!」

 半分だけ凍り半分だけ溶けている火の刀を氷の盾に突き刺した。すると軽い爆発が起きて盾が完全に爆砕した。

 滝はその隙に横に跳躍する、それから一秒以内に滝が立っていた場所に燃える刀身が突き刺さる。本来であるならば燃えていた筈だが滝が立っていた場所には氷塊と水があり燃えないようになっていた。

「……っち、避けやがったか」

「避けるに決まっているだろうが混じり物が」

「まぁ、良い……もう終わらせる」

 玉露がそう言った瞬間、背中から出ている炎の翼を羽ばたかせて羽を展開し左手を銃のように構えて――

「火縄――」

「ストォーップ!!」

 玉露が技を放とうとしたその瞬間――、リアが玉露に抱きついて静止した。

「なっ!? り、リア!?」

「お前等もう戦うのを止めろ!! 過去に何があったかは知らないけど今この場で戦うのは止めろ! お前等の実力なら本当にこの国を焦土にしかねないんだぞ!?」

「そうだよ、タキ」

 玉露にはリアが、滝には銀髪紅目で角が生えた少女が滝の腕を掴んでいた。滝の腕は水氷になっておりいつでも反撃が出来るようにと構えていた。

 その少女の顔立ちはリアと何処か似ており、リアよりも大人な雰囲気を醸し出していた。

「ここでこれ以上暴れたらこの国の兵士まで出て来ちゃう、貴族や王族は大した事無くても兵士だけは例外なんだから」

 少女の言葉により滝は臨戦態勢を止める、それを見た玉露も臨戦態勢を止める。正確に言うならばリアに邪魔されているから臨戦態勢を解いた、と言った方が良いだろうが。

 そしてリアは玉露が臨戦態勢を完全に解いたのを確認した後、少女の方を向いた。

「……ユメ……お姉ちゃん」

「ああ、妹……生きてたんだ。って言うかよくそんな奴と一緒に居て今まで無事に生き残れたよね……」

「分かってるなら交換して、お願いだから」

「腹黒は嫌だけどそれ以上に狂戦士と言う名前の不死の怪物と一緒に居たくないからお断り」

 少女、ユメは妹のリアの申し出を軽く一蹴して滝の首もとを掴む。

「速く言いなさい、彼に……用あるんでしょ?」

「ああ、すまないな」

 滝はそう言って玉露の顔を見て口を開く。

「玉露、お前にこの世界の事を――」

「良いよ、教えてくれなくても。自分で旅して調べるから」

「――そうか、なら一つだけ伝えておくぞ。この世界に勇者召喚とやらで巻き込まれて召喚されたアホが二体居る」

「宇津木に最中もか……って言うか四神全員が召喚されるって……どうなってるんだ?」

「知るか。では、私は言ったぞ」

「そうだね、教えてくれてありがとう」

 玉露は誰もが見惚れるほどの笑顔でそう言った。

「そして死ね」

 そして頭上に現れた炎の槍を滝に投擲する、見事なまでの不意打ちだった。ほれぼれする。

「ふん、甘いわ」

 だが滝も玉露が不意打ちをしてくる事は分かっていた。だからすぐに氷の槍を大気中に出して自分に迫り来る火の槍に向かって放った。

 火の槍と氷の槍は互いにぶつかり合いあたり一面に水蒸気の煙を撒き散らす。その煙が晴れるとさっきまで滝が居た場所には誰も居なかった。

「……っち、逃げられたか」

「いや、逃げられたか。じゃねぇからなおい」

 リアは悔しそうにそう言う玉露の頭を軽く叩くのであった。



 大気がある星が月のように浮かんでいる夜空に氷の鎧を着けた青色の蛇のような生き物、竜とは似て非なるもの、神聖なる水の宿木、幻獣・龍が体をくねらせて空を飛んでいた。

 その頭部にはユメが乗っており龍に話しかける。

「ねぇ、タキ」

「何だ?」

 龍、タキはそう言って目だけをユメの方を見るようにした。

「何で殺しにかかってくるって分かっていたのに話すことにしたの?」


「ああ、アイツは本気で戦うつもりも殺すつもりも無かったからな」


「……それってどう言う事?」

 ユメは驚きに満ちた表情でそう言った。一方のタキはそれがどうしたといった雰囲気を醸し出し、軽く言う。

「奴が本気で私を殺すつもりなら足場となる全てのものを燃やし尽くすだろうな。恐らく一国全てを、そして天には無数の火の槍で覆われる事になる」

「何か実体験みたいな感じなんだけど」

「それは当然だ、私が直接体験したことなのだからな」

 人はそれを惨劇と……いや、地獄絵図と呼ぶ。

「それに、奴にはまだもう一つの血があるしな」




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