常識は時に非常識になる
今回から少し新展開
「ようこそ、我が国『リアデズ』へ!」
銃剣を持った衛兵らしき男は僕達にそう言って煉瓦で出来た小さい小屋の中に戻った。
何か、適当だな。まぁ、あんまり聞かれなくて正解だったけど。
そう思いながら僕らは門を潜り抜けて『リアデズ』に入った。
取り合えず第一印象。
「……何この臭い……臭すぎ……」
本当に酷い、無意識に言葉を出すほど酷い。汚物の臭いが酷い、香水の臭いも酷い。何て言うか……もう消えたほうが良いんじゃないの? って言うくらい酷い。
吐き気がする、今すぐにも吐きそうだ。って言うか現在進行形で吐く……!
「オボロシャァ!!」
口から胃の中に入っていた内容物を吐き出す。胃の中の酸っぱい味が口の中を支配する。鼻からも胃液が鼻水と共に流れ出る。
ああ、苦しい苦しい。
「っていきなり何やってんだよ……って本当に大丈夫かおい!?」
リアが驚いて本当に心配そうな表情で僕にそう言った。
「……し、うぷ……ばらく……離れて……オェエ……」
駄目だ、ちょっとこれは無理……。
「……お前ってそんなに臭い駄目だったか? ああ、喋らなくて良いぜ。今読唇魔法使ってるから」
ま、魔法って便利だね。なら言うよ。
「ああ」
これは臭い駄目とかそんなレベルじゃない。この国は今すぐにでも滅ぼさないと世界が滅びる。消毒だ、この国を滅菌だー!!
焼いて消毒するんだー!!
「分かった、だから落ち着け……ほら、タオル。水魔法で濡らしているから綺麗にしろ」
「あ、あり……がとう」
う~、ひんやりとしていて気持ち良い。
取り合えず臭いに関してはティッシュでつめておこう、無いよりはマシだ。
そう思いながらポケットにあるティッシュで鼻に詰めていると数人の男達が僕らに近寄ってきた。どう見ても歓迎している雰囲気ではなさそうだ。いや、ある意味では友好的な雰囲気はかもしだしているけど。
「おい兄ちゃん達、旅人なんだろおい?」
男達の内、リーダー格らしき男が馴れ馴れしく話しかけてくる。
「道中荷物とか重かったろう? なんなら、今俺達が譲り受けて――」
男の言葉はそこで途切れた。その理由は僕がその男の顎に蹴りを入れたからだ。男はそのまま宙を舞い、地面に倒れた。倒れた時に変な音がしたが多分気のせいだ、まだ息してるし大丈夫だろう。
「お、お前!! よくも兄貴を!!」
「許さねぇぞこのガキャァ!!」
「ぶっ殺してやるれろ!!」
三人の男がそう喚き散らしてきたからしょうがなくその顎に拳を打ち込んだ。多分舌を噛んでいただろうけど気にしない。
なぜなら――
「……今の僕は気分が悪いんだ、だから手加減が出来ない。もし死んでも恨まないでよね」
僕はそう言って左手の平に炎を燈す。それを見た男達は後退さる。
「ま、魔法か!?」
「嘘だろ、おい!!」
「死にたくなかったら財布を置いてとっとと失せろ」
そう言って男達を睨みつけ丁寧にお願いすると全員が全員お財布を出して情けない悲鳴を上げてそのまま逃げていった。
何で逃げたんだろ? でも酷いなぁ、倒れてる二人を置いていくなんて……しかも二人とも口から血を吐き出してるし。
そんな事を思いながら倒れてる二人の懐を探る、そして中に入っているお財布を貰う。
うん、中々入ってるな。って言うか金貨って……貴族だったのかな、あいつら?
「よし、これで今日は安宿と食事をゲットだ」
「今すげぇ最低な事をナチュラルにしてたよなおい」
リアがげんなりとした顔でそう言った。魔王の娘のくせして何言ってるんだか。
「さてと、まずは服でも買いに行くかな?」
お財布のお金を一つにまとめて自分のお財布に入れて、倒れてる二人の衣服を剥ぎ取る。勿論下着は残している。
誰が好き好んで野郎の裸なんかを見ないといけないんだよ。
「ちょっ!? お前、何してるんだよ!?」
「何って、見て分からない? 迷惑料と慰謝料を貰ってる所なんだけど」
「いや、それ誰が見ても間違いなく追剥だから」
リアが常識人っぽい発言をした。意外すぎる。
「でもさ、良く考えてみなよ。あと少ししたら死ぬような奴等の死装束にするよりも僕らが貰い受けてそれを売った方が良くない?」
「外道だな、おい」
「って言うか……そろそろここから離れた方が良いんだよね……」
「へっ? 何でさ?」
「まぁまぁ良いから良いから、取り合えず買物しに行くよ」
「いや、だから何が良いんだよ」
そう愚痴っているリアの手を引っ張って、強制的に人ごみの中に入る。こうしていれば簡単に見つかったりはしないでしょ。
さて、したい事も山ほどあるし……買物買物っと。
「ふぅ、沢山買ったなぁ」
流石は貴族が実権を握っている国と言うべきか……品揃えだけは良かった。まぁ高かったけど。
お陰でせっかく手に入れた金貨の枚数が十枚から三枚にまで減っちゃったし、まぁその分銀貨や銅貨が増えたんだけど。
でも買う物は買えたし、欲しい物は手に入った。それに何より――
「な、なぁ……本当にこんな格好しなきゃ駄目なのかよ……」
リアが恥ずかしそう服屋から出てきてそう言った。今のリアの格好はミニスカに黒と白であしらった服に黄色いリボンを付けている感じだった。魔人の証拠である角を見せないように、頭には大きめの帽子を着けている。
それが可愛い、メッチャ可愛い。愛でたい、嘗め回したい。ぺろぺろしたい。
っと、危ない危ない。危うく犯罪者の道に足を突っ込む所だった。でもリアは本当に可愛い、銀髪に蒼い目、そして整った容姿。まさに芸術そのものだ。
そう思っているとリアは両腕で自分の身体を抱き締めるようにして僕を変態的な物を見る目で見ていた。
「や、やめろよ……そんな変態的な目でコッチを見るんじゃねぇよ。は、恥ずかしいだろうが……」
涙目になっているリア、もしかして女の子らしい格好を今までしてこなかったのかな?
「まぁ良いじゃないかぁ、可愛いし似合ってるし。貧乳だしッ!?」
「貧乳言うな!!」
速っ! てか今見えなかったんだけどパンチ、しかも何か普通に攻撃が効いたんだけど……てか今魔力使ったよな。もしかしてリアって水属性なのか?
だとしたら怒らせないほうが良いかも、本当に死ぬから……水はね。あれは死に掛けた、うん……刀なきゃ死んでたな。
「それにしても……お前のあの服、売って良かったのか?」
怪訝そうな目をしてリアはそう言った。ちなみに僕の今の服装は黒いズボンに黄色いシャツ、その上に黒と白のロングコートを着ている。ロングコートは若干鉄が入っていて軽装としても役に立つ一品だ。
不死鳥と言えども弱点があるんだからやっぱりこう言うのはありがたい、それにかっこいいし。
「うん、あれは目立つからねぇ」
僕はそう言ってゴムで髪をしばる、俗に言うポニーテール、馬の尻尾だ。
後は目の内側を軽く燃やして目の色を赤に……うん、出来たはずだ。
「だから、さっきから聞いてるんだが何で――」
『おい! こっちに貴族の子息を殺害した旅人が居た筈だろ!?』
『ああ、確かに……金髪黒目の変な服を着た男とローブを纏った銀色の髪をした子どもがこっちに……』
『探せ!! 草の根分けてでも探すんだ!! 見つけ出したら処刑するぞ!!』
「…………」
「こう言う訳」
にしても速いな~、あと少し遅かったら襲い掛かってくる相手を黒こげにしなきゃいけなかったんだけどな……間に合ってよかったよ。
「……お前まさかあの時の相手が貴族って……知って……」
「うん。まぁ気付いたのは……お財布を取ってる時だったんだよね、金貨ばっかだったし」
「アホかぁお前は!!」
リアはそう怒鳴り、前に殺した男が持っていた剣(種類としては多分バスターソード)を掴み斬りかかって来た。
ちょっ……まっ……ギャァー!!
「あー……良い風呂だったぁ……」
いやぁ、何処の世界でも風呂は良いものですねぇ。今まで水に浸かってこれなかったからなぁ……昔は今みたいに冷たい水でも大丈夫だったんだけど。
いや、深く考えるのはもう止めよう。思い出したくもないし。
それよりも今はふかふかのベッドで眠る事を想像しよう。久々だなぁ、きっと気持ち良いだろうなぁ。
そう思いながら自分が使うベッドに倒れこむ。ああ、ふかふかだぁ。
「……ん? もう寝るのか?」
自分のベッドに座っているパジャマ姿のリアが僕を見てそう言った。
「うん……今日はもう――」
「久しぶりだな、初恋の相手を助けられなかった人混じりの不死鳥」
「――ッ!?」
外から響き渡った中性的な声が鼓膜を刺激する。それは僕が最も知っていて覚えていて――そして何より……。
僕は窓を開けて空を見上げる。
「ふん、何時見ても間抜け面だな」
そこには水色の髪をした少年が宙に浮いていた。
「藤堂……滝……!!」
『藤堂 滝』、元居た世界に居た幻獣であり……郷理を殺した張本人が……コノ世界に来ていた。
次回から三人称になります!




