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第37話 俺と覗きのリターンマッチ!

時刻は21:30。


一日を使ってたっぷり遊んだ俺と奏は旅館に帰ってきた。

遊んだ、と言っても大したことはしていない。何処にでもありそうな屋台で射的をやったり、綿飴を食べたり、近くのゲーセンで遊んだり、要は学生がやりそうな普通の遊びをした。


それでも彼女にとっては全てが新鮮であったのだろう。始終目を輝かせていた。

そこまで喜ばれると此方も嬉しくなるわけで、ついつい熱が入ってしまった。まぁ後悔はしていない。

寧ろ久しぶりに思い切り楽しめた気分だ。


奏もとても楽しかったらしく、帰ろうといったときには「決してまだ居たいとか楽しみたいとかその様な類いではないけれど、貴方がまだまだ遊びたいと言うのであればやぶさかではないわよ?」と、珍しいくらいのテンプレツンデレが炸裂した。

勿論、theシスコンの俺がその甘言に勝てるわけもなく、結局延長してしまい、今に至った。


当たり前だが身体が疲労の塊みたいになっている。

こんなときは温泉に入るに限る。


「んじゃあ温泉にでも入るか」


「そうね、今度は間違えないで頂戴」


「へいへ、・・・え?」


「え?」


俺と奏が同時に疑問を口にする。

そして嫌な汗が止まらない・・・


「奏?い、今のは・・・」


「さあ、私もよくわからないけど、自然と口がそう動いていたの」


「へ、へぇーソーナンダ」


セェェェエエエエイフ!!

あっぶねえええええええ!!


「まぁ、いいわ。先にいくわね」


その一言と共に、奏は部屋から出た。


さて、俺もチャッチャと準備して入るとしよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

温泉は珍しいことに貸しきり状態であった。


もくもくと浮かんでいる煙が暖かみを帯びており、俺の温泉入りたい欲求を掻き立てた。


温泉入りたい欲求とは生理的欲求の一つである。

温泉に入りたくて入りたくて入ってしまう、と言う欲求である。

この欲求は定期的に発散しないと、そこら辺で売られている白い粉を(白線のマーカー引くほうの粉だよ!)家の風呂にばらまき、疑似温泉を味わおうとしてしまうと言う恐ろしい欲求なのだ。


嘘です。


んな欲求あってたまるかってんだ。


閑話休題。


体と頭をさくっと洗い早速湯船に浸かることにした。





「ふいー、極楽極楽」


お湯は少し熱いが、それがいい。まさに生き返ると言う感じだ。

空を見上げると満天の星がそこにあった。こんな景色は都会では見れない、そう思うと星に対する有り難さが込み上げてくる。

ガイア万歳だな。


そう言えば奏はまだ温泉にはいっているのだろうか。少し気になる。

訂正、かなり気になる。

断っておくが覗きたいがためではない、断じてない。昨日、と言うか今日の湯船のなかで倒れる、と言うハプニングがあったから心配なだけだ。もしまた倒れていたら駆けつけなくてはならない。そしてついでに覗かなくてはならない。


「奏ー、いるかー?」


柵のむこうに呼び掛けてみる。

・・・返事がない。


戻ったのか、それとも倒れているのかこれでは解らない。

もしかしたら湯船の中に沈んでしまって居るかもしれない。


しょうがない、いやホントに仕方なくね?決して下心とかないからね?覗けるぜわっほーいとか思ってねぇから!


元気よく湯船から立ち上がり柵の方へ走る。


「下心まみれに決まってんだろぉぉぉぉおおおおおおお!」


そんな叫び声と共に、空をとんだ。


そう、俺はまさしく鳥になっていたのだ。


そして信じていた。そこには必ず楽園があると。


俺の描いた桃源郷が有ると・・・


「イヤーーー!」


黄色き声が響き渡る。


目を見開く。


視界を遮っていた煙が少しずつ晴れていく。


そこにいたのは、


いたのは、


い、た、の、は、!


















「ごくごくごく。ブヒヒ」





女湯をごくごくと飲む油本だった。





あぶら、もと?





男、男、男の裸。




裸体、男の。





女湯に、男がいる。



つまり・・・






















「てぇめえナニしくさっとんじゃこの変態ヤロオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」


渾身の蹴りは油本の顔面を捉え、彼は天高く舞っていった。


さらば油本。

願わくは二度と現れないでくれ。


女湯の方を見るとかなりの量が減っている。


変態と言う言葉はアイツのために作られたのだろう、絶対そうだ。


何はともあれ奏はここには居ないらしい。つまり俺が心配するようなことはなにも起こっていなかったのだ。


・・・いや、悔しいとか思ってないからね?ホントダヨ?


取り敢えずさっさとこの場をずらかるとしよう。こんなところを誰かに見られたらーー


「何を、しているのかしら・・・?」


・・・・・・見られたら。


後ろからものすごーい知っている声が聞こえた。そして、顔を見なくても解るくらい、すごーい殺気に満ちていた。


ギギギ、と壊れかけの機械のように恐る恐る振り向くと、そこには色んな意味での楽園が広がっていた。


この日以降、この旅館の七不思議に、『血まみれダルマが女湯を歩き回る』という項目が追加された。


・・・・・・・・・うん。


やっぱ覗きはダメだわ。


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