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第21話 やっぱりこの作品はコメディーな訳で

「?どうしたの、四十崎君」


「ちょっと・・・狭すぎやしないか?」


プリクラ機?の中に入った俺と文月。


端から見れば完璧にカップルだろう。こんなところを誰か知り合いに見られたら5秒以内に爆死する自信がある。

そんな自信要らねぇな・・・


てか殺されるだろう、確実に。

その自信だったら他の誰にも負けないくらいある。

・・・やっぱりこんな自信も要らないね。


100円を入れる文月。


「ほら!撮るよ四十崎君!」


「うわっ!ちょっ、」

プリクラ機がカウントを始める。


3


1


パシャッ


「2どこいった!」


不良品にも程がある。


ジー


2がカウントできなと言う世紀のポンコツから先程撮ったプリクラが出てきた。


改めて思うが女子って不思議だよな。

こんな小さな写真を皆で撮りたがる、その気持ちがいまいちよくわからん。

カメラとか持ち歩けば良いのに・・・

カメラを持ち歩く女子、か・・・フォ〇カノの実原みたいでいいと思うよ!

いやー、ホント可愛かったなぁ・・・


「四十崎君どうしたの?顔が末期だよ?」


「君は俺を精神的に殺したいのかい?」


俺のツッコミを無視し、文月は先程のプリクラを見てニコニコしている。


「そんなに良いもんか?」


「うん!だって初めて撮ったから!」


初めて・・・?



「意外でしょ?けど私って写真が嫌いだったんだ。嘘をついてる自分が笑顔で映ってると思うとね、何だか耐えられなくて」


「文月・・・」


「あっ、でも四十崎君の前では大丈夫だよ!私の秘密を知ってるわけだしね!」


えへへ、と笑う文月。


こいつなりに色々と思うところが有ったんだ。

本当の自分を隠して周りと接するその罪悪感を、ずっと感じながら生きてきたのだ。

そしていつの間にか学校の人気者。

引き返せないところまで来てしまった。もう進むしかない。

戻ってしまったら、落ちてしまうから。

高く高く積み上げた、大切なものを崩してしまうから。


だから言えない。

だから言わない。


想像を絶する辛さだっただろう。

その辛さから、今、この瞬間だけは解放されているのだ。


ならば俺がすることは、

慰めじゃなくて、


「・・・また」


「ん?」


「また、撮ってやるよ、暇なときにな。

思い出は沢山あった方が良いだろ」


約束だった。


「・・・!」


うん


その声はあまりにも小さく、耳をすませなければ聞こえなかった。

けどそれが彼女の本当の声なのだろう。


ずっと隠してきた、本当の自分。


いつかこの声が耳をすませなくても聞こえるくらい響く日が来るのを今はただ待とう。


そしてそのときが来たら、一緒に笑おう。


「さて、次はどうする?」


頬をつたう滴を拭いて、笑顔で答える文月。


「私の買い物に付き合って!」


この日は本当の文月に出会えた日だ。

だから、この日くらいはらしくない自分でいても、良いかもな。


「勿論!」


―――――――――――――――――――

「いや~いっぱい買ったね!」


「・・・そうですね」


「ホントにこんなに大量に買い物したのは久しぶりだよ!」


「・・・・・・そうですね」


「また買い物に付き合ってね!」


「・・・・・・・・・そうですね」


大量の荷物を持たされ、今にも死にそうな俺はこのとき悟った。


この子と買い物にいくのはもうよそう。


格好つけてると死ぬ。


結局俺は大量の荷物を文月の家まで持ち歩いた。

そして、肩の感覚が消えた。


―――――――――――――――――――

「ただいま~」


玄関でぶっ倒れる。


そこに妹が蔑むような目をしながら来た。


「お帰りなさい。

随分と気持ちの悪い声だから変質者かとおもったわ」


「君、玄関でぶっ倒れた兄にたいしてかける言葉がそれかい?」


この子、俺が道端で傷だらけで倒れていても助けずに防犯ブザーとかならしそうだな。


めっちゃ泣きてぇわ。


「取り敢えず、そんなところで倒れてないでリビングにさっさと来なさい。さもないと首に紐を結んで無理やりリビングまで引っ張るわよ」


「確実に途中で死ぬわ!」


兄を労ると言う言葉を知らない無礼な妹に泣きつつもリビングへいく俺。


あー、今日の夕飯どうしよっか・・・・・・


そんなことを考えながらリビングに入るとそこには、


「・・・え?」


料理が並べられていた。

しかも、めっちゃうまそう。


「夏樹に教えてもらったのよ、簡単な料理だけどね」


妹が後ろから話しかけてくる。

どんな顔をしているかは、解らない。


「ほら、貴方いつもご飯をつくってくれるでしょ。私も、何かつくることが出来たら便利だと思ってね。

それに、何もしないで貴方の料理を食べるのも何だか癪だったから」


「・・・・・・」


先程までの疲れは、いつの間にか消えていた。

まさか、妹の手作り料理が食べれる日が来るとはな。


こんなんだからいくら罵倒されても嫌いになれないんだよな。


「ありがとな」


「お礼は良いからさっさと食べなさい」


いつもは泣きたくなるその罵倒も、今は何故か安心する。


「おう、じゃあ頂くとするか」


椅子に座り、料理を食べる。

その瞬間、視界の端に捉えた妹の顔は、笑っているように見えた。


全く、素直じゃない妹だ。


料理を口に運ぶ。


俺が記憶しているのは、ここまでだった。


気がつくと病院にいた。

医者いわく、「体内に毒に等しいものが入っていた」とのことだ。


病室にて思ったことはただひとつ。

やっぱり平穏が大好きです。


こうして、長い長い休日は終わりを迎えた。

妹さんと文月さんのダブルパンチです。


何だかんだ言ってもコメディーなので最後には痛い目にあってもらわないとね!


感想をお待ちしております。


では!

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