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ちいさなせかい  作者: 桐生 拓人
2/2

Pere -おとうさん-

 未完です。

 






 人間が歩いている。



 広い広い砂漠の中を黙々と。小柄な身体に纏ったガウンを、砂を孕んだ風が揺らしていく。

 その小さな足跡の上を、更に小さな足が追いかける。


 人間は少年だった。

 黒いフード付きのガウンの下からは、淡い栗色の髪と、明らかに不健康そうな白い肌が伺える。

 小さく形のいい鼻先を汗が伝っていく。


 どれだけの距離を歩き続けたのか、黒いブーツは先が破れ、踵は磨り減って歪んでいる。

 砂で出来た大海原の上を、ひたすら足を動かし進んでいた。


 その背中に続くように、黒くて小さな四本足が追いかける。

 普段はピンと立った三角の耳も、砂が入らないようずっと閉じっぱなしだし、自慢の黒い毛は砂ですっかり灰色だ。




 じりじりと強い日差しで、太陽は容赦なく一人と一匹を照らし出す。


 照り返しもさることながら、今日は一段と強い直射日光。




 やがて太陽が真上から少し西に傾いた頃、一人と一匹はぐらりと傾いで倒れ、それっきりぱたりと動かなくなった。











 





 何処かで虫が鳴いている。

 

 小さく砂漠の真ん中にあるこの街でも、昼間から市場は大賑わいだ。

 黄色く高い家々の間を、沢山の出店が立ち並んでいる。夏虫の大合唱に重ねて、商いをする声が市場を行き交う。

 住民が大半だが、商品売買の為に外の町からわざわざやってくる旅人も少なくない。

 お蔭で宿屋も大繁盛だ。


 昼過ぎになると朝ほどの活気は無くなった。

 しかし、街の外れにある宿屋では賑やかな声が耐えない。

 一階にある食堂では、宿屋の娘と思われる少女が、街の男衆の給仕をしていた。

 小さな身体にオレンジの強い金髪。腰でまくタイプのエプロンをまいている。

「おい、フルール。こっちにビール持ってきてくれ」

 フルールは呆れた顔をしながら男に言った。

「もぉ。あんまり飲み過ぎると狸になるよっ」

 彼女の父親は売買をする商品を運ぶ商人だが、仕事は偶にしか来ない為副職として小さな宿屋の経営をしていた。

 それも今ではすっかり逆転して、宿屋が本職のようだが。

 父親と二人暮しのせいもあり、フルールは若干10歳にして宿屋の切り盛りが一通り出来るようになっていた。

 父の友人であるこの街の男達とも仲がよく、親子のように接していた。

 

 

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