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5 神官の献身と三人のヒロインによる奴隷争奪戦

 俺の周りでは勇者パーティの神官であるセシリアが、俺を神の御子と崇め、屈辱的な試練を懇願し、アリシアがそれに激しく嫉妬し怒鳴りつけるという、地獄のような状況が繰り広げられていた。


「景様! どうかこの神官に不浄の言葉を浴びせ、清らかなる魂を汚す試練を与えてください! 私の信仰の証としてあなたの靴を聖油ではなく、あなたの汗で磨き上げさせてくださいませ!」


 セシリアは白い神官服を乱しながら、熱狂的に俺の足元にすがってくる。その瞳には真の信仰心と、それに逆行する行為を渇望する異常な性癖が混じり合っていた。


「くっ! ふざけるなセシリア! その試練は私が奴隷に課している特権中の特権だ! 私の奴隷がお前のような偽善者に奉仕するなど許さん!」


 アリシアは激昂し、セシリアの襟首を掴み上げた。


「私の奴隷は私が不機嫌な時にだけ、私への恐怖と屈辱によって靴を舐める。お前のように歓喜しながら舐めるような行為は私のサディズムを汚す!」


「アリシア様! それは違います! 真の献身とは主の不浄を受け入れること! あなたの求めるドSな支配は、景様の絶対的な御力を、小さな娯楽へと貶めているだけです!」


 二人の壮絶な口論の中心で、俺は完全に蚊帳の外だった。


「おい! 誰でも俺の意見を聞いてくれ! 靴を舐めさせられるのが娯楽とか、奉仕とか、もうどっちでもいいからやめてくれ!」


 俺が叫びを上げた、その時だった。


 バサァ!


 神殿の巨大なステンドグラスが内側から粉砕された。瓦礫と砂埃が舞い上がる中、そこに立っていたのは、俺たちが追い払ったはずの魔王ルシフェリアだった。


「お待たせいたしました、我が愛しき勇者様! わたくし我慢できませんでした!」


 ルシフェリアは前回とは比べ物にならないほどの熱狂的な表情で俺に向かって突進してきた。


「アリシア様、セシリア様! この卑しき魔王は、あなた様の崇高な支配や奉仕に嫉妬いたしました! 勇者様! わたくしを徹底的に痛めつけ、この嫉妬の炎を鎮めてくださいませ!」


 ルシフェリアは俺の目の前で四つん這いになり、嬉しそうに尻尾を振っている。


「勇者様! ご覧ください! この無防備な魔王の背中を! どうか、あなたの最強の力でこの身を鞭打って! そしてこの身体に奴隷の烙印を押してください! わたくしはあなた様のMな奴隷になるために魔王の地位を捨てます!」


 最悪だ。ドS勇者、ドS/ドM神官に加えて、ドM魔王まで参戦し、俺の奴隷の座を巡る、異常な三つ巴の争奪戦が始まってしまった。


 アリシアは剣を抜き、ルシフェリアに襲いかかろうとする。


「この痴女魔王め! 私が景に教え込んだ屈辱の美学を、お前のような快楽主義者と一緒にするな!」


 セシリアは神官杖を構え、ルシフェリアを浄化しようとする。


「魔王! あなたは景様の聖なる光を、汚れた快感へと誘導しようとしている! その不純な愛は私が清めの杖で叩き直します!」


 アリシアの剣がルシフェリアの肩を狙い、セシリアの光の鎖がルシフェリアの身体を拘束しようとする。


 しかしその瞬間、俺の身体から再び無意識の防衛本能が発動した。


 俺の心の中で三人への感情が爆発する。


 アリシアへ:「もう支配するな!」

 セシリアへ:「崇拝するな!」

 ルシフェリアへ:「懇願するな!」


 この俺への執着を拒絶する強い感情がチート能力のトリガーとなった。


 ゴオオオオオオオオオオ!


 純粋な魔力の塊である透明な光の球体が爆発的に膨張し、不可視の結界となって三人を弾き飛ばした。


 アリシアもセシリアも、そして魔王も俺に触れることができない。その衝撃波を受けて三人は同時に極度の快感に悶絶した。


「ッッッアアァァァ!!!」


 アリシアは剣を取り落とし片膝をついた。彼女の瞳は潤み口元が微かに震えている。


「な、なんだ、この力は! 私が最も望む、絶対的な力の支配! こんな強烈な支配を無意識で仕掛けてくるとは! 景……お前は最高の暴君だ!」


 セシリアは杖を落とし、恍惚とした表情で胸元を抑えた。


「あぁ……神よ! 景様の力はわたくしの存在そのものを否定し踏みにじり浄化している! この強烈な無関心こそが、わたくしが求めた最高の屈辱! さらに! さらにこの無垢な魂を穢してください!」


 ルシフェリアは背中を反らせ、快感に震えながら喘いだ。


「ひぃん! 勇者様! わたくしに触れずに、この身体を内側から支配している! この圧倒的な力の圧力! これこそが、わたくしが望んだ至高の虐待! もっと! わたくしの細胞一つ一つを、あなたの力で粉砕してください!」


 三人の変態たちは俺の拒絶の力を、最高の支配、最高の屈辱、最高の虐待として受け止め快感に打ち震えていた。


「いや……あの、拒否してるんだけど……」


 俺の抵抗は彼女たちには届かない。


 アリシアは立ち上がり、俺に向かって歩み寄り結界に手を触れた。


「景、その力を解け! そして私を罰しろ! 私の奴隷が私を支配する快感を味わわせてくれ!」


 セシリアは祈りを捧げながら、俺の結界に額を押し付けた。


「景様! その力で私を不浄の地へ追放してください! その罰こそが私の最高の報酬です!」


 ルシフェリアは結界の外側で、もはや涙と涎を垂らしながら懇願している。


「勇者様! わたくしを一生分の靴磨きに任命してください! そしてその靴底でわたくしの魔王としてのプライドを日々踏み潰してください!」


 俺は自身のチート能力が三人の性癖を増幅させ、執着を深めるという、最悪の副作用を持つことを完全に悟った。


 最強の力を持ちながら、俺は、ドS、ドM、そしてそのハイブリッドという、三人の異常な連中に永遠に翻弄される運命なのだ。


「誰か……誰か、この変態地獄から俺を助けてくれ……」


 俺の異世界での戦いは魔物との戦闘ではなく、ヒロインたちの異常な性癖と、自身のチート能力の副作用との戦いへと完全に舵を切ったのだった。


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