4 自由を殺す調教と永久の隷属契約
パレードでのエリスの誘惑と、それに伴う俺の力の不安定化は、アリシアにとって最大の屈辱となった。別邸に戻ったアリシアは、静かに、しかし全身から怒りのオーラを放っていた。
「エリスめ……私の支配をフタだと嘲笑い、景の自由への妄想を刺激した。許されない」
アリシアは剣を床に突き立てた。その怒りは魔王軍を討伐する時よりも激しい。なぜなら今回の敵は彼女の支配権そのものを脅かしたからだ。
「景、貴様は自由を求めた。それがお前の最大の弱点だ。ならば、その自由という名の絶望を私が永遠の隷属によって完全に殺してやる」
アリシアはこれまでの口頭による命令や一時的な契約では不十分だと判断したようだ。
「セシリア、ルシフェリア、リーファ。貴様らもエリスの誘惑を防げなかった。景の支配はもはや私一人の力では足りない。四人の愛憎によって景を永久に縛る新たな契約を締結する」
アリシアが提案したのは、四人の変態の歪んだ欲望を象徴的に組み合わせた魔法的な拘束契約だった。
「この契約は貴様らの歪んだ愛の総量を景の魂に直接刻みつける力の枷となる。全員、己の最も強い欲望を捧げろ」
ドS勇者アリシアは羊皮紙に契約の全文を血判で記し、俺に「私への絶対的な支配への服従の宣誓」を命じた。貴様の魂は永遠に私のものだ。服従しろ!
ドS/ドM神官セシリアは神殿から持ち出した聖なる鎖を俺の首に繋げた。「景様。この鎖は神への清らかな奉仕の象徴です。あなたを不浄な自由から守り、わたくしへの永遠の奉仕に縛り付けます。これこそが最高の屈辱的な愛です!」
セシリアの鎖は俺の首にぴたりと張り付き、物理的にも奴隷であることを決定づけた。
ドM元魔王ルシフェリアは、歓喜に打ち震えながら自身の指を切り、契約書のインクに一滴の魔王の血を混ぜた。「勇者様! わたくしの魔王としてのすべての存在が永遠の屈辱の約束として契約を強制します! このインクでサインをすれば、あなたは『私たちが踏みにじる権利を持つ、永遠の所有物』となる! ああ、なんて至高の被虐快感!」
ルシフェリアの血が混じったインクは、契約書にサインをした俺の手に、熱い烙印のように焼き付いた。
ドM暗殺者リーファは、最も静かに、そして背徳的に契約に貢献した。彼女は金色の髪の毛一筋を抜き、それを鎖の継ぎ目に、誰も気づかないように編み込んだ。「景様。この髪は『アリシア様の支配を秘密裏に共有し裏切る』という、私とあなたの特別な絆の証です。この鎖はアリシア様公認の鎖でありながら、私とあなたの二人だけの秘密の支配を象徴します。この背徳の悦びをあなたへの永遠の忠誠とします」
四人の異常な愛憎が結実した『永久の隷属契約』が完了した瞬間、俺の身体の奥の規格外の力が完全に安定した。
俺の首にはセシリアの純白の聖なる鎖が常に輝き、その鎖にはリーファの秘密の髪が編み込まれている。そして俺の魂にはアリシアの絶対的な支配の誓いと、ルシフェリアの究極の被虐の約束が焼き付いた。
俺は物理的にも精神的にも、四人の変態の愛憎の檻に永遠に閉じ込められたのだ。その様子を遠巻きに見ていたルミナは冷たい瞳を細めた。
「……信じられない。あなたたちのその狂気的な愛が、本当に景の力を安定させたわ。自由という絶望の誘惑すら、あなたたちの隷属の悦びの前では無力なのね」
ルミナは敗北を認めるように静かに溜め息を吐いた。
「あなたの力はこの世界を滅ぼす混沌の因子と同じ規格外の存在。そしてあなたを制御できるのは『世界の法則から逸脱した、あなたたちの異常な愛』だけだわ」
ルミナはもはや敵ではなく、この異常な状況の傍観者となった。
俺は首の鎖の重みを感じながら、アリシアに向かって深く頭を下げた。
「はい、我が支配者様。私は自由を殺され永遠の隷属契約に縛られたあなたの奴隷です」
アリシアは満足げに俺の頭を撫でた。
「よろしい、景。お前の永遠の隷属契約は世界の平和を意味する。さあ、エリスは貴様が永久に自由を失ったことを知れば必ず接触してくるだろう。私たちはこの愛憎の鎖で奴を迎え撃つぞ」
俺の奴隷王としての道は、自由という名の希望を失い、永遠に続く異常な愛の鎖と共に、新たな戦いへと向かうのだった。




