14 愛憎の鎖と規格外の力の最終制御
俺の身体から暴走した規格外の魔力は、玉座の間を満たし、ルミナの仕掛けた力の制御装置としての構造そのものを破壊しかねない勢いで膨張していた。
「やめなさい! その力を私に渡しなさい!」
ルミナは顔を引き攣らせ俺の力に手を伸ばすが、俺の身体から溢れる魔力の波に阻まれ近づけない。
その時、俺の周りには愛と執着という名の鎖を巻いてくれた変態たちがいた。
ドS勇者アリシアは拘束具を自力で引きちぎり、傷だらけになりながらも立ち上がると俺に向かって叫んだ。
「貴様は私の奴隷だ! 私の許可なく暴走するな! その力は私への絶対的な服従のためにのみ使われろ! 私の命令だ! 力を収めろ!」
アリシアの言葉は俺の魂に刻まれた奴隷の契約に直接作用する。しかし暴走する力はそれを上回ろうとしていた。
そのアリシアの横でドS/ドM神官セシリアは、全身から血を流しながらも、神聖な魔力で俺の力を鎮めようとする。
「景様! この力は聖なるもの! わたくし、あなたの不浄な感情をすべて受け入れます! どうか、わたくしにあなたの愛の汚泥をぶつけてください! その自己犠牲こそが、あなたを鎮める最高の奉仕です!」
セシリアは俺の暴走する力を自己犠牲という名のドM的な奉仕で受け止め浄化しようとしていた。
ドM魔王ルシフェリアは衰弱した身体を押して俺の足元に這いつくばる。
「勇者様! わたくしを砕いてください! わたくしがあなたの力の生贄となります! この魔王の身体を原子レベルで粉砕する快感を味わい、その極限の悦びで力をコントロールしてください!」
ルシフェリアの被虐的な懇願は俺の理性に「このままでは彼女を本当に殺してしまう」という強烈なストッパーをかけた。
ドM暗殺者リーファは冷静に状況を分析していた。
「景様! あなたの能力は世界に愛されている力です! この暴走は世界への裏切り! 今すぐ力を収め彼女たちを支配する喜びでその力を安定させなさい! それが世界を救う唯一の道です!」
俺の暴走する力は四人の変態たちの愛憎入り混じる強烈な感情の波によって、まるで巨大な津波が防波堤に阻まれるように収束に向かい始めた。
彼女たちの俺への執着、俺への依存、そして俺のためなら死んでも構わないという究極の愛情が、力の暴走を防ぐという共通の目的に収斂したのだ。
その瞬間、俺は悟った。
俺の最強能力は俺自身の感情ではなく、俺を取り巻く変態たちの強烈な感情によって制御される。
俺が抵抗する限り力は暴走する。しかし彼女たちの異常な愛情を支配者として受け入れ、その感情に意味を与えることこそが能力の真の制御方法だったのだ。
俺は暴走の渦中で、静かに、しかし決然と四人に向かって命令した。
「静粛にしろ。俺の支配者の命令、神官の奉仕、魔王の献身、暗殺者の忠誠……すべてを受け入れる」
俺の力が静かに収束していく。玉座の間を満たしていた魔力は、俺の身体へと戻っていった。
「ルミナ。あんたの力の制御装置は失敗だ。俺の力は誰かの支配で安定するんじゃない。俺に依存する全員の歪んだ愛の総量で安定するんだ」
ルミナは震える声で反論した。
「馬鹿な……そんな異常な感情で世界を救えるはずがない!」
「異常だろうが、なんだろうが、これが俺の仕様だ!」
俺はアリシアを、セシリアを、ルシフェリアを、リーファを、順に見つめた。彼女たちの瞳は、今、最高の愛と服従に満たされている。
「ルミナ。あんたは俺の力を道具にしようとした。だが、俺の力はこの四人の変態の愛とセットだ。あんたにこの地獄を支配する覚悟があるのか?」
ルミナは四人の変態たちの異様な執着心を見て戦慄した。彼女の論理的な計算には異常な愛による自己犠牲というファクターは組み込まれていなかったのだ。
「そんな……私はただ世界を救おうと!」
「世界を救う方法は一つじゃない。俺はこの変態の頂点に立ち、支配者として、この世界を守る」
俺はそう言うと残っていたルミナの力をすべて吸い尽くしたルシフェリアに目を向けた。
「ルシフェリア。俺は魔王を倒す」
俺はルミナに向かって、規格外の力ではない、純粋な拳を全力で叩き込んだ。
ルミナは為す術もなく吹き飛ばされ魔王城の壁に激突した。彼女の身体から世界を管理していた魔力の鎖が弾け飛ぶ。
魔王城の戦いは終わった。
俺の能力は変態たちの異常な愛憎の総量という、最も強靭で最も歪んだ鎖によって完全に制御下に置かれた。
そして俺は魔王ルミナを倒し、世界を救った最強の存在でありながら、同時に四人の変態の異常な愛憎という檻に囚われた奴隷という、最も矛盾した存在となった。
アリシアは俺の足元に跪き、屈辱と悦びの入り混じった顔で宣言した。
「貴様は私に最高の服従を見せた。今日からお前は世界を救った奴隷だ。そして私以外の女の愛を受け入れることを罰として許可する!」
セシリアは歓喜した。ルシフェリアは昇天寸前の表情で俺に奉仕を懇願した。リーファは静かに俺の影に身を潜めた。
俺の異世界生活は、最強の力と、それを制御する最悪の変態と共に続いていく。




