7 春になるとね、思い出すことがあるんだ。いっぱいね。だいだい君のことだけど。
春になるとね、思い出すことがあるんだ。いっぱいね。だいだい君のことだけど。
「あ、ねえ、見て。ことり。ほら、桜のはなびらが舞っているよ。ほら、ほら。綺麗だね」こはくが小さな子供みたいな顔をしながら、はしゃぎながら、そう言った。そんなとても些細な日常のありふれたできごとのはずなのに、ぼくはなんだか、胸の奥の、奥のところがとっても、とっても痛くなった。
こはくはいつも明るくて、いつも楽しそうに笑っていた。半分くらいは、きっとあんまり笑ったりしない、ぼくのためだったのだと思う。
夜の時間 ひとりぼっちの薄暗い小さなアパートの部屋の中
「あ。えっと、こんにちは。『白虹こはく』です。みんな、元気してる? どう? 大丈夫かな? ちゃんとぼくの声聞こえてますか? あ、聞こえてる。うん。よかった。聞こえてますね。ありがとう。では、あらためて『自己紹介』をします。はじめまして。ぼくは『白虹こはく』です。みんなこれから、よろしく。配信が遅くなってしまってごめんなさい」
白虹こはくはいつもの白虹こはくだったけど、雰囲気がいつもと少し違っていた。それに、『その見た目にもひとつだけいつもと明らかに違うところ』があった。それは『瞳の色』だった。
白虹こはくの瞳の色が青色からかたっぽの瞳だけが、黄色に変わっていた。(青色と黄色のオッドアイになっていたのだ)
でも一番違っていたのは、『声』だった。
白虹こはくの声は、いつもの白虹こはくの声ではなかった。
「つばさふれんどのみんなに本当に大切なお知らせがあります。こういうときは、すごくいいお話だといいんだけど、とっても、とっても悲しいお話になんるだ。だから、ごめんなさいって、はじめにあやまっておきます。本当にごめんなさい。(十秒くらいあたまをさげる)つばさふれんどのみんなが一万人をこえたことをぼくがいっぱい歌を歌って、お祝いするはずだったんだけど、そのお祝いもまだみんなにこのとっても悲しいお話をしてからじゃないとできません。……、すみません。ちょっとだけ、勇気を振り絞る時間をぼくにください。(とても長い沈黙)はい。では、お話しします。ぼくにはひとりの大切なお友達がいました。今からお話しするのは、ぼくのとても大切な、世界で一番なかのいいお友達のお話しです」