第二十七話 揚陸艇で舞い上がる
ゲオルグたちは揚陸艇のコクピットに入ると、ゲオルグが操縦士席に座り、クラウディアが副操縦士席に着く。悪友二人とエミリアたちは、後ろから二人を見守る。
席に座ったゲオルグは、計器盤と周囲を見回す。
(飛空艇とそんなに変わらないな……いけるか!?)
ゲオルグは、以前、長兄ジークと一緒に飛空艇に乗ったことがあった。
クラウディアは、不安そうな顔でゲオルグに尋ねる。
「ゲオルグ、本当に大丈夫なの!?」
「任せておけって!」
ゲオルグは、飛空艇の飛行手順を始める。
「発動機始動! 一番! 二番! 三番! 四番!」
ゲオルグが掛け声と共に順番にエンジンの起動ボタンを押していくと、四基の魔導発動機は甲高い音を響かせながら起動し、その駆動音を響かせていく。
ゲオルグは続けていく。
「飛行前点検、開始!」
ゲオルグは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ゲオルグが手際よくエンジンを起動させた様子に、仲間たちは感心する。
マティスは、ぽかんと口を開けて呟く。
「ほぇ~……」
オズワルドも呟く。
「すげぇ……」
唖然とする悪友二人を尻目に、ゲオルグは手順を続け、浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「浮遊水晶、起動!」
浮遊|水晶が起動する重低音が振動と共に揚陸艇に響く。
ゲオルグは、順調に飛行手順を進めてきたが、ここで手詰まりになってしまう。
(……おかしい! 飛空艇なら、これで離陸するはず!)
帝国の飛空艇や飛行戦艦は、浮遊水晶に魔力を供給することで浮力を得ており、浮遊水晶に関連する技術は、帝国の門外不出の独占技術であった。
クラウディアは、ゲオルグが手詰まりになったことに気付き、彼を気遣う。
「ゲオルグ、大丈夫!? なにか、手伝える?」
ゲオルグは、計器盤を見回しながら答える。
「大丈夫! 心配ない!」
ゲオルグは、操縦席の左側にあるT型のレバーを見つける。
(『浮力制御桿』!? そうか、飛空艇より図体がデカい分、浮力制御が必要なのか! ……これだ!)
「離陸!」
ゲオルグが左手で浮力制御桿を上げていくと、揚陸艇の船体は、きしむ金属音をさせた後、甲板を離れてわずかに揺れながら空中に浮上していく。
仲間たちは揚陸艇が離陸して浮上したことに歓声を上げる。
マティスは、壁に手を突きながら口を開く。
「飛んだ!」
オズワルドも口を開く。
「やった!」
エミリアたちもゲオルグに尊敬のまなざしを向ける。
「発進!」
ゲオルグがエンジンのスロットルを徐々に開けていくとプロペラの回転数が上がり風切り音が大きくなっていき、揚陸艇の船体は徐々に上昇していく。
エミリアたちは喝采を挙げる。
「やったぁ!」
「飛んだ!」
「すごーい!」
揚陸艇を離陸させたゲオルグは、仲間たちに指示を出していく。
「マティス、オズワルド! 航法と測量を頼む! 計器を読み上げてくれ!」
マティスは航法士席に座ると計器を読み上げ、オズワルドも測量士席に座る。
「判った! 一,〇〇〇、……一,五〇〇、……二,〇〇〇」
ゲオルグは続ける。
「エミリア、カタリナ、エリーゼ。三人は、望遠鏡で地上を観測。何か見つけたら教えてくれ」
「わかりました」
クラウディアはゲオルグに告げる。
「ゲオルグ、獣人の集落は南西の方角よ」
「よし! とりあえず、そこに行ってみよう!」
ゲオルグが揚陸艇を南西の方角へ向けると、揚陸艇は難民収容施設の上を通過して獣人荒野の先にある獣人の集落へ向けて飛んで行った。
ゲオルグたちの乗った揚陸艇は、獣人荒野の上空を抜けていく。
オズワルドが口を開く。
「国境を通過した!」
クラウディアはエミリアたちに尋ねる。
「国境警備隊は?」
エミリアは、望遠鏡を覗きながら答える。
「いました! 警備隊です! 小隊規模!」
クラウディアが望遠鏡でエミリアが指し示す方角を見ると、帝国軍の偵察小隊とみられる部隊が野営しており、二人の歩兵が望遠鏡で上空を飛行する揚陸艇を見上げていた。
ゲオルグは、何の問題もなく国境を通過できたことに拍子抜けする。
「何もなく、通過できたな」
クラウディアが答える。
「帝国軍の小隊だけね。今のところ」
ゲオルグたちの乗った揚陸艇は、獣人荒野を越え、国境の上空を越えていく。




