第二十四話 クラウディアの奉仕
夕食を終えたゲオルグたちは、それぞれ、入浴と就寝のため、自分の部屋へ向かう。
ゲオルグは、ラウンジを出たところでエミリアに呼び止められる。
「ゲオルグ様」
「ん?」
エミリアは、うっとりとゲオルグの顔を見上げながら告げる。
「ゾフィー様がお休みになるまで傍らで寄り添われたなんて。ゲオルグ様は、お優しいのですね」
ゲオルグは、照れながら答える。
「そうかな。手を握っていただけだけど」
エミリアは、背伸びしてゲオルグの耳元に顔を近づけて、ささやく。
「……次は、私がキスする番です」
ゲオルグがクラウディア、ゾフィーと伯爵令嬢の二人に順にキスしていたため、『次は子爵令嬢である自分の順番だ』という意味であった。
ゲオルグが知らないうちに、いつの間にか、班の女の子たちの中で『第四皇子妃の序列』ができあがりつつあった。
「え!?」
ゲオルグは驚くが、エミリアは頬を赤らめて足早に自分の部屋に帰っていった。
ゲオルグとクラウディアは、それぞれ入浴を済ませて部屋に戻る。
ゲオルグは自分の部屋のベッドに仰向けに横たわる。
クラウディアはゲオルグの隣に腰を掛けると、声を掛けて労う。
「ゲオルグ。今日一日、お疲れさま」
「ああ……」
ゲオルグは考えごとをしており、クラウディアが声を掛けても上の空であった。
クラウディアは、ゲオルグの反応を訝しむ。
「どうしたの? なにか、考えごと?」
「イルマのことさ」
クラウディアは、ゲオルグの口からイルマの名前が出てきたことで、拗ねてゲオルグの頬をつねりながら引っ張る。
「ひどーい! ゲオルグってば、私という彼女がありながら、イルマとえっちすることを考えていたの!? ゲオルグは、ああいう茶髪のショートで、ちょっとボインの娘がタイプなの!?」
つねられたゲオルグは、必死に否定する。
「痛ててて! ちがう! ちがうって!」
クラウディアは、つねっていたゲオルグの頬から手を離すと、頬を膨らませてゲオルグを詰問するように見つめる。
「どう違うのよ!?」
「『人狩りに捕まったイルマの両親を助け出せないか』ってね。両親や家族が一緒なら、イルマもああいう身体を売るようなことはしなくなるだろ?」
クラウディアは、ゲオルグがした話を考える。
「それは……そうかも。両親が傍にいたら、娘が身体を売るようなことをしようとしたら、止めるだろうし……」
「そうだろ?」
「そうだけど……イルマの両親をどうやって探すつもり?」
「イルマは、『両親は獣人の集落の近くで人狩りに捕まった』って言っていただろ? 獣人の集落の近くを探せば見つかるかもしれない」
ゲオルグの案に、クラウディアは少し顔を強張らせる。
「人狩りだって、いつまでも同じ場所に留まっていないで移動しているだろうし、『獣人の集落』があるのって、国境の向こうよ?」
ゲオルグは人狩りについて解説する。
「ん~。兄上から聞いたんだけど、人狩りは牛に奴隷護送車を曳かせていて、移動はすごく遅いらしい」
クラウディアが続ける。
「人狩りは、ともかくとして。帝国の領土は、この収容施設がある荒野までで、『獣人の集落』のある地域や、その先の山岳地帯は外国なのよ? まさか、国境を越えるつもりなの? 越境なんてして国境警備に見つかったら、タダじゃ済まないわ」
「判ってるよ。地上から国境を越えたら、国境警備に見つかるだろうし、『獣人の集落』や人狩りを探すのだって大変だろう。だから、空から探せば……」
「『空から探す』って、どうやって?」
「飛空艇があれば……」
「この艦には飛空艇なんて無いわよ? あるとしたら、連絡艇か揚陸艇かな」
ゲオルグは、言葉を濁す。
「連絡艇か揚陸艇か……。問題は、どうやって『ちょっと借りる』か、だな」
クラウディアは、呆れた様子で答える。
「呆れた。帝国軍が私たちに貸してくれる訳、ないじゃない」
ゲオルグは、クラウディアの言葉に追従する。
「そうだよな。普通に頼んでもダメだよな……」
アイデアが尽きたゲオルグは寝ようとする。
「ふぅ……クラウディア、部屋の明かり消すよ」
「うん」
ゲオルグは部屋の照明を消すと、下着姿でベッドの毛布を被る。
ゲオルグたちの乗る大型輸送飛空艇は軍艦であり、かかとほどの高さの位置に常夜灯がついていて、僅かな魔法の青白い光を放ち足元を照らしていた。
「えへへ……」
ほどなく、クラウディアがゲオルグのベッドに入ってくる。
「……ゲオルグ。腕枕して」
ゲオルグが左腕を差し出すと、クラウディアはゲオルグの左腕に頭を乗せて、身体をゲオルグに密着させる。
ゲオルグは、身体を密着させてきたクラウディアが裸であることが判る。
「クラウディア!?」
クラウディアはゲオルグの耳元でささやくと、仰向けに寝そべるゲオルグの上に覆いかぶさるように体勢を変えてキスする。
「昼間の続き……ゲオルグ。見て……」
クラウディアはそう告げると、ゲオルグの上で上体を起こした。
常夜灯のわずかな青白い魔法の光が床の照り返しで、クラウディアの上体を幻想的に照らし出す。
「……どう? イルマのより大きいでしょ?」
「ああ……」
クラウディアは、ゲオルグの身体の上に覆いかぶさるように身体を倒し、ゲオルグの首筋、胸、腹、と順にキスしていく。
「クラウディア!?」
クラウディアは、恍惚とした顔のままゲオルグに告げる。
「だぁ~め。ゲオルグの彼女は私。イルマのことなんて、忘れさせるから」
クラウディアは、ゲオルグに口で奉仕した。
クラウディアはゲオルグに尋ねる。
「どう? 気持ち良かった?」
クラウディアの美しい澄んだ青い瞳が想い人の答えを伺う。
「気持ち良かったよ」
ゲオルグがすっきりした顔で答えると、クラウディアは安心したように微笑み、再びゲオルグの腕枕に寝そべって甘え始める。
「良かった。これから毎晩するから」
「毎晩するのか?」
ゲオルグが腕の中にいるクラウディアに目を向けると、クラウディアは恥じらいに頬を染め、ゲオルグの胸に指先で文字をなぞりながら答える、
「うん……私、ゲオルグが好き。ゲオルグと成人式でダンスを踊って、婚約者になって、ゲオルグの正妃になるの。妻は、愛する夫からの求めを受け入れ、奉仕するのよ。……私、毎晩、ゲオルグに奉仕するから」
「オレもだよ。クラウディア、愛してる」
そう言うと、ゲオルグはクラウディアの額にキスする。
「私も。ゲオルグ、愛してる。私の皇子様」
クラウディアは、ゲオルグが首から下げている『お守り』を指先で撫でる。
それは、ゲオルグが皇子の礼装をする際、純白の皇子のマントを首元で留める時に使う帝室の紋章『千年の光鷹』が象られたブローチであり、お守りとして首から下げていたのであった。
ゲオルグは、クラウディアが指先で撫でるお守りのブローチを見て、『ハッ』と名案を閃くのであった。




