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アスカニア大陸戦記 旅立ちの大空【R-15】  作者: StarFox
第二章 獣人荒野

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第二十三話 半剥け85mmGUN

 しばしの沈黙の後、エミリアがイルマに尋ねる。


「貴女のご両親は?」


 イルマは顔を上げると涙ながらに答える。


「……両親は、ここに来る途中、獣人(ビーストマン)の集落の近くで人狩りに捕まりました」


 エミリアが救いを求めるようにゲオルグへ顔を向けると、他の女の子たちも同じようにゲオルグの顔を見る。


 ゲオルグは、何も名案が浮かばず、どうすることもできない悔しさに唇を嚙みながら拳を握り締める。


 クラウディアがゲオルグに声を掛ける。


「ゲオルグ。もう帰りましょう」


 ゲオルグは諦めたように答える。


「……ああ」


 ゲオルグたちはイルマと別れ、倉庫から大型輸送飛空艇への帰途に着く。




 大型輸送飛空艇に着いたゲオルグたちはラウンジで寛ぐが、ゾフィーは『疲れました』と言って、一人で先に入浴して部屋に戻って行った。


 ゲオルグは呟く。


「ゾフィー。大丈夫かな?」


 クラウディアが答える。


「クレメンスたちに集団で輪姦されそうになったのよ? そっとしておいてあげたら?」


「なら、余計に放っておけないだろ」


 ゲオルグは、ゾフィーを心配して彼女の部屋を訪れる。


「ゾフィー。入るよ」


「どうぞ」


 ゲオルグがドアをノックして部屋に入ると、ゾフィーは既に入浴を済ませてバスローブ姿で寝床に入っていた。


 ゲオルグはベッドの隣にある椅子に座り、ベッドに横たわるゾフィーを気遣う。


「ゾフィー。大丈夫かい?」


 ゾフィーは笑顔で答える。


「大丈夫です。でも、疲れたので先に休ませて頂きます」


「構わないよ」


「あの……ゲオルグ様」


「んん?」


「助けていただきまして、ありがとうございました」


「君が無事で良かったよ」


 ゾフィーは、ゲオルグの顔を見上げて、誇らしげに告げる。


「あのクレメンスを殴り倒したのは、ゲオルグ様だけですよ」


 ゲオルグは、苦笑いしながら答える。


「あいつ。もう一発くらい、殴っておけば良かったな」


「本当に、物語の王子様のように私を助けてくれました」


「まぁ、オレは皇子だからな」


 ゾフィーは、照れくさそうに答えるゲオルグの笑顔に、影があることに気が付く。


「ゲオルグ様。イルマの言葉を気にされているのですか?」


 図星であった。ゲオルグは言葉が見つからず、返答に困る。


 ゾフィーが続ける。


「ゲオルグ様。ゲオルグ様が気を病まれることはありません。帝国本土に難民を入れたら、帝国本土の治安と経済は混乱して悪化します。かといって、難民を帝国外に追い返したら、あるのは戦乱と疫病、奴隷貿易と麻薬貿易。難民は、それらの犠牲になるだけです。……『少々、自由がなくとも難民は収容施設に集めて開拓農場に定住させる』という皇帝陛下やジーク様、帝国政府が推進する政策こそ適切なのです」


 ゲオルグがゾフィーの話を聞いて考えこんでいると、ゾフィーはゲオルグの手に自分の手を重ねる。


「手を握っても、良いですか?」


「良いよ」


 ゲオルグがゾフィーの手を握ると、ゾフィーはゲオルグに告げる。


「……今の私には、クラウディアの気持ちが判ります。『想い人に触れたい、抱かれたい、慰めてあげたい、交わりたい』……女の本能です。……もう少し、このままでいて良いですか?」


「……ああ」


 やがて、半時ほどすると、ゲオルグが傍についていることに安心して、ゾフィーは穏やかな寝息を立てる。


 ゲオルグは、ゾフィーを起こさないようにそっと手を離すと、静かに部屋を後にする。




 ゲオルグがラウンジに戻ると、仲間たちは夕食を食べていた。


 クラウディアは、席に戻ったゲオルグに尋ねる。


「彼女、どうだった?」


「落ち着いて眠ったよ」


「良かった」


 ゲオルグは、夕食を食べながら仲間たちをねぎらう。


「初日なのに、いろいろあって、みんな、疲れただろ」


 クラウディアは、ゲオルグを労う。


「ゲオルグは良くやったわ。私も、疲れちゃった」


 エミリアは二人を労う。


「二人とも、良く頑張ってましたね」


 カタリナは、クレメンスたちを批判する。


「それにしても、帝国貴族にあんなことをしている人たちがいるなんて。驚きました」


 エリーゼもカタリナに続く。


「信じられませんね」


 クラウディアは、したり顔で解説を始める。


「あの人、自慢げに私たちに『アレ』を見せつけていたけど、あんな『お粗末なモノ』を淑女(レディー)に見せびらかさないで欲しいわ」


 ゲオルグは苦笑いしながら聞き返す。


「オレは良く見ていなかったけど。……あいつ、そんな『お粗末なモノ』だったのか?」


 クラウディアは力説する。


「そうよ! だって、これくらいなのよ!?」


 そう言うと、食卓の上に乗っている燭台の小さな蝋燭を指で指し示す。


 エミリアは、ハッと気付いて小物入れの巾着から巻尺を取り出すと、小さい蝋燭の寸法を測る。


「……八十五ミリ……ですか?」


 マティスは笑いだすのを堪えながら口を開く。


「アレが元気になってて、八・五センチって!? 小さすぎだろ! ……オレのより小さいじゃん」


 オズワルドもマティスに続く。


「……だな。元気になっていて八・五センチなら、オレのよりも小さい」


 ゲオルグは、吹き出しそうになりながら問いただす。


「いや、ちょっと待て。あいつのアレ、そんなに小さかったのか?」


 クラウディアは、断定しながら力説する。


「間違いないわ! しかも、半分しか頭が出ていないの! あんな『お粗末なモノ』を自慢げに淑女(レディー)に見せびらかすなんて、あり得ないから!」


 ゲオルグは、吹き出して笑い出すのを必死に堪える。


「プププ……何だよ。その『半剥(はんむ)け』って……」


 オズワルドも吹き出して笑い出すのを必死に堪えながら続く。


「あいつ、『半剥(はんむ)けの八十五ミリ砲』を女の子たちに見せびらかしていたのか」


 マティスもオズワルドと同様であった。


「ププッ! 『半剥(はんむ)け八十五』って。……そんなのを女の子に見せて自慢するって、恥ずかしい奴だな」


 クラウディアは、人差し指を頬に当てて考えながら仮説を口にする。


「あの人、きっと、自信がないから難民の子で試そうとしたんだわ。そしたら、偶然、ゾフィーが入ってきて……」


 ゲオルグは、納得したように答える。


「そういうことか」


 エミリアたちは頬を染めながら一連の話を聞いていた。




 こうして、ゾフィー強姦未遂事件を引き起こしたクレメンスには、『半剥(はんむ)け85mmGUN(八十五ミリ砲の意)』という不名誉な二つ名が付けられ、女の子たちの口伝てに準備学校内に広まっていった。



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