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第十五話 ファースト・キス

-大型輸送飛空艇 艦橋。


 艦橋では航法士官たちが発艦準備に追われていた。


 士官の一人が計器類が指示する数値を確認しながら、傍らの同僚に向けて呟く。


「貴族のガキどもが乗っているんだ。しくじるなよ」


「大丈夫だって」


 二人の元に艦長がやってきて告げる。


「貴族の子弟子女だけではない。第四皇子殿下が乗艦されておる。お前たち、ミスは許されんぞ」


 無駄口を叩いていた二人は、緊張した面持ちで艦長に答える。


「了解!」






 ゲオルグたちが乗り込み、小一時間ほど経過すると、大型輸送飛空艇は飛行場から離陸する。


 大型輸送飛空艇の動力部の浮遊水晶は、その魔力で重力を無くし、巨大な艦体を空中に浮遊させていた。


 離陸の際にも大きな振動は無く、ゲオルグたちは窓の景色の変化で離陸を知ったのであった。






-ゲオルグの部屋。 


 ゲオルグはベッドに寝転がっていたが、窓の外の景色が変わったことで、大型輸送飛空艇が離陸したことを知る。


「おぉ!? 飛んでる! 離陸したのか!」


 ゲオルグは、少し興奮気味にベッドから起き上がって窓の傍に顔を寄せ、外の景色に目を向ける。


 窓の外の景色は、見えていた帝都の街並みや点在している高層建築物が眼下に見下ろせるようになり、大型輸送飛空艇が空を飛んでいることを実感する。


「すげぇ……」


ゲオルグの声にクラウディアもゲオルグの隣に来て顔を寄せ、共に窓の外の景色に目を向ける。


「綺麗ね」


ふと、ゲオルグは、クラウディアが纏う淡い石鹸の香りに気が付く。

 

クラウディアは思春期の女の子らしく、ゲオルグを異性として意識して、身綺麗にしていた。


クラウディアは、一呼吸の間、ゲオルグの隣で景色を眺めていたが、自分のベッドに戻ると、ベッドに腰掛けながら騎乗ズボンを脱いでいく。


「二人で外泊するのって、初めてじゃない? ……最近、このズボンはキツくなってきたのよね。今度、買い替えないと……」


 クラウディアの身体は、子供から大人の女性の身体へと日一日、成長していた。


 身体の女性特有の曲線は凹凸が顕著になり、腰はくびれ始めていた。


 同様に思春期のゲオルグの目はクラウディアの淡い水色のパンツに釘付けになる。


 クラウディアは、自分のパンツを見つめるゲオルグの視線に気付き、自分のベッドに腰掛けると悪戯っぽくゲオルグに尋ねる。


「ゲオルグ。どこ見てたの? 正直に言いなさい」


 ゲオルグは、クラウディアのパンツを見ていた事がバレて、少し恥ずかしそうに答える。


「う、うるせぇ! いきなり脱ぐなよ!」


 赤面するゲオルグを見て、クラウディアは口元に手を当て、からかうようにクスクスと笑う。


「良いじゃない? 二人きりなんだし」


 笑われたゲオルグは、少しムッとした顔をして答える。


「『ズボンがキツい』なんて、太ったんじゃないのか?」


 ゲオルグの言葉を聞いたクラウディアは、大げさな身振り手振りでゲオルグに告げる。


「あ〜! 言ったわね! 乙女に言ってはいけない、その言葉!」


 そこまで口にすると、クラウディアはベッドから立ち上がり、棒ネクタイを外して白いブラウスを脱いで下着姿になると、ベッドにいるゲオルグの前で腰に両手を当てて仁王立ちする。


「私のどこが太っているのか、言ってみなさいよ!」


 下着姿のクラウディアは、仁王立ちしながら強めの口調でゲオルグに告げたものの、羞恥からほんのりと頬を赤く染めていた。


「……なっ!?」


 ゲオルグは、想定外のクラウディアの行動に驚いて焦るものの、下着姿の彼女から目を離すことができず、目が釘付けになってしまう。


 ゲオルグは、焦りながら続ける。


「いいから、クラウディア! 服を着ろよ! 服!」


「言わないと〜ぉ、……こうだっ!」


 クラウディアは、ゲオルグの言葉など意に介せず、悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、ゲオルグに飛び掛かり、くすぐり始める。


「クラウディア!?」 


「あ〜ははは」


「おい! やめろって!」


「あっ!?」


 ゲオルグは、両手でクラウディアの両手首を掴んで身体を引き寄せるとベッドの上に押し倒し、クラウディアの上に覆い被さるように乗り、両手をその頭の上に抑え込む。


 ゲオルグが勝ち誇った顔でクラウディアに告げる。


「ったく! 子供(ガキ)の頃とは違うんだよ! ……これでもう、くすぐれないだろ?」


「……うん」


 クラウディアは、ゲオルグの予想に反して抵抗する素振りもなく、大人しく抑え込まれていた。





 一呼吸の後、ゲオルグは我に返り、状況を再認識する。


 下着姿のクラウディア。


 その彼女をベッドの上に押し倒し、その上に乗る自分。


 至近距離にある二人の顔。


 クラウディアの澄んだ青い瞳が自分を見詰めていた。





 クラウディアは、ゲオルグの目を見つめたまま、静かに告げる。


「離してくれる?」


 ゲオルグは、握っていたクラウディアの両手首から手を離すと、クラウディアはうっとりとした表情で呟き、ゲオルグの頬を右手で撫でる。


「もう子供じゃないよね。私達」


「ああ……」 


「大人になろう……二人で」


 クラウディアはそう告げるとゲオルグの首に両腕を回し、二人は唇を重ねた。



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