ep6 闇黒の創世記
え、ハ○ンチ学園最終回?
まぁその影響も多少あるかも?(ぇ
「超特大級彗星爆弾3000発、着弾確認」
「想定通り大津波発生。地球全体水没」
「よし、では次に惑星撹拌機始動」
「了解。惑星撹拌機、全機始動」
淡々と、そんな台詞が交わされる。
地球人には絶対聞こえない高高度にて。
するとその時だった。
地球全体が水没した、そんな状況の中で奇跡的に生き残ったわずかな者達は……さらなる絶望をその目で見る事になった。
天高くより、まるで巨人のハンドミキサーの如き巨大で大量の物体が降臨する。
そしてそれは、地球に落下した数多の彗星がもたらした大量の水の中へと先端を沈めると……超高速で回転を開始した。
渦が出来る。
水だけでなく大気も回る。
それは地球上に残った全人類を飲み込み…………その場は少し赤く染まった。
※
目に映ったのは、圧倒的な蹂躙劇だった。
まるで、地球人をゴミだと言いたげにそれは行われた。
いったい何が起こっているのか。
その圧倒的な展開を前に頭が回転しなかった僕達は、それすら考えられず、ただただ呆然とするしかなかった。
「みなさん、こちらに注目してください」
すると、その時だった。
まさかの人物の声が聞こえ……僕達は一斉に振り返った。
そこにいたのは、案の定……聖川。
それも、僕達は見た事がないタイプの服装をした聖川だった。
「そろそろみなさんには、これからのためにも、全てを一度知ってもらわなければいけません。なので少々、お時間を頂戴いたします」
※
13000000000年前。
つまりこの宇宙が生まれてから約800000000年後に私達――あなた方が知る言葉ではエイリアンと呼ばれる存在は生まれました。
私達は10000年かけてありとあらゆる技術を発展させました。
そしてその技術を用いて、宇宙全体を探索し……この宇宙の全てを知りこの宇宙での物理法則でなせる事を全てなせるようになりました。
しかしそこで、私達は一つの限界を知りました。
それは、私達の進化がこの宇宙でできる限りの範囲に限定されているという意味での限界です。
より私達が進化をするには、この宇宙の外にも進出しなければいけません。
しかし別の宇宙は、こちらの物理法則が一切通用しない世界。
下手に入ってしまえばその瞬間に肉体がバラバラになる可能性がありました。
そんなある時、その別の宇宙の神を名乗る存在が接触してきました。
私達が調べた限りでは、この宇宙には存在しない、高次の知的生命体です。
接触してきたと言っても、姿を見せたワケではありません。
自分と同じ、宇宙の管理者的な存在を探すためSOS信号を発していたのです。
そしてそれに、私達は答えました。
私達は神でこそありませんが、この宇宙に神も、そして自分達以外の知的生命体もいない以上、さらに言えば、その宇宙の神とは別の宇宙の神が、SOS信号に答える様子がいくら待とうが見られず…………私達が答えるしかなかったからです。
そして、その神がSOS信号を発した理由についてですが、どうも別の宇宙には危機が迫っているらしく、その危機を打破する存在が欲しかったから……でした。
私の仲間の一部は……自分達がこれを機に別の宇宙へと行けば、より進化する事ができるんじゃないか、という意見を出しましたが、もしも私達のような存在が、その神の手引きなりなんなりで別の宇宙に行き、この肉体を今の状態に留め、この世界でも振るえるレヴェルの力を発揮したなら……その宇宙の摂理を壊してしまうのではないか、もし行けるとしても向こうの宇宙の摂理を破壊しないためにも観光程度に留めるべきではないか、という意見も出ました。
なので私達は、私達に代わり別宇宙に行っても大丈夫な存在……すなわちあなた方の先祖を商品として生み出し、検品し、その宇宙の神に差し上げました。
この宇宙へと、私達がより高次の存在へと進化しうる……そしてこの宇宙を崩壊させない摂理を挟み込む事を条件に。
すると、今度はその神とはまた別の宇宙の神々が私達に助けを求めました。
どうやら私達が生み出し送り出した商品は、別の宇宙の神々にとっては、とても高品質なモノのようでした。
そしてそれを機に私達は、あなた方を商品としたビジネスを始めました。
入來院――別の宇宙へと送る価値がまったくない商品にはさっき言いましたが、13000000000年前から。
そして品切れになる度に、また良質な商品を生み出すべく……粗悪品であるが故に弾いてきた商品を肥料にしてきました。あなた方にも分かりやすく説明すると、文明を何度も何度もリセットしてきました。
あなた方が、生ゴミを肥料にして作物を育てるようにね。
アトランティスやムー大陸、ノアの箱舟を始めとする洪水神話を聞いた事がありますよね? あれはまさに、今この時点でも起きている事柄を、生き残った人類が無意識下で記憶し紡いだ物語なのです。
今あなた方がいる場所こそ、ノアの箱舟のモデルたる……私達が所有する宇宙船なのです。
というか、神話という形でわざわざ警告を出したのに……何度繰り返しても人類はあまり学習をしないのですね。
悪性の存在が世の中に満ちたら、その時に神の手……正確には、神の代理の手による粛清を受ける事になると、わざわざ深層意識に刷り込んでおいたのに……まぁそのおかげで、その対極にある良性の存在が光り輝くのですが。
とにかく、長話になってしまいましたが……先日まで起きていた失踪事件は私達の仕業です。
別の宇宙の神へとあなた方の同類を差し上げるためのアブダクションです。
ちなみにあなた方は、別の宇宙の神に差し上げませんよ。
なにせあなた方は、次の世代の人類の始祖になっていただかなくてはいけない、私を始めとするグループが好意を抱いた、選りすぐりの良質な商品ですからね。
次世代ではより高品質な商品を生み出してほしいものです。
毎回そういう存在を選んで生き残らせてきましたが、数十年も経てば悪意を持つ存在が必ず生まれるので……商品から悪性は消せないのかもしれませんがね。
それでも期待させてください。
あなた方ならばより良い商品を生み出してくださると。
あぁちなみに。
あなた方以外の生物――犬や猫などの動物も救出しています。
彼らの中からももしかすると……私達が干渉し商品にしても大丈夫なほどの知性を持つ個体が出てくるかもしれませんからね。
それでは、長々と失礼しました。
ちなみにこうして長々と説明したのは、これからあなた方の記憶を、あなた方が堕落し粗悪品になりにくいようにするために一度リセットしなければいけないからですが、その際に……この時点での出来事を、私達の恐ろしさを深層心理へと刷り込んで、より粗悪品にならないようにする、という意図もあります。
あぁそうだった。
これからあなた方は、全てがリセットされた地球で、石器時代レヴェルの生活をしなくてはいけませんから、サバイバル関連の知識を始めとする様々な知識も刷り込んでおきますね。
それから最後に、鈴峰くん。
私が診た限り立花さんはもうすぐ妊娠二ヶ月な状態だよ。
だから子育てのための知識も刷り込んでおくよ……末永くお幸せに。
※
一気に知らされた前代未聞……いやそれどころか文字通り驚天動地な様々な事実を前に僕は、いや僕達は……当然頭をフリーズさせた。
だけど、記憶を消す云々な部分に差し掛かって……なんとか全てを理解する事ができて、高橋先生や、僕の両親、さらには竹田のおばあちゃんが異世界へと連れていかれた事を知って…………ついでに言えば、聖川が僕へと微笑んだのは……僕が聖川の選んだ人類の一人だったから……すなわち、ペットの犬や猫に向けるようなラブを向けていたからだと知って…………………………納得できるようで納得などできるワケがない。
あまりにも濃過ぎる情報であるために。
そしてあまりにも残酷過ぎる真実であるために。
神が一番人間を殺してる……そう言ったのは誰だったか。
なんて一瞬思ったりするくらいの衝撃の情報だった。
だけど、最後の最後に聖川が言った事……それが一番僕を驚愕させた。
ま、まさか……避妊失敗していたなんて。
地味子な見た目だけど、前髪さえ切れば結構可愛い部類に入るんじゃないかってくらい実は可愛いかった、志乃との間に、まさか子供が――。
そして、この瞬間。
刹那の間に様々な事を考えた僕の記憶は――消滅させられた。
※
ゴ ロ ジ デ ヤ ル
フ ザ ケル ヌ ァ
シ ニ ク サリ ヤガ レ
あまりにも一方的な蹂躙劇の後。
この蹂躙劇を仕組んだ、聖川を始めとするエイリアンへの憎悪を覚えた者は……あまりにも不条理な最期を迎えたが故に、一人残らず悪霊化した。
だがしかし、彼らは天上へと上がれない。
成仏できないという意味合いでの、上がれないではない。
聖川が乗ってきた宇宙船の発する特殊な電磁波の檻が地球を覆い……彼らがいる天上へと行けないのだ。
「おっと、いけないいけない」
そんな彼らを、聖川の仲間の一人が目撃する。
「万物分解液を惑星に投下するのすっかり忘れてた」
彼はすぐに、あるボタンを押した。
すると宇宙船から、何色とも言い表せない複雑な色をした液体が垂れ始めて……それが悪霊達を、素粒子レヴェルで分解する。
『『『『『『『『『『グアアアアアアアアッッッッ!!!!』』』』』』』』』』
良太郎を始めとする人類の新たなる一歩を邪魔しうる存在を、彼らは許さない。
※
そして、彼らが蹂躙劇を開始してから……230日後。
地球を覆っていた水は少しずつ彼らにより蒸発させられ。
それに伴い、少しずつ少しずつ、彼らは地球の環境を整えて。
そしてついに、記憶をリセットした人類の生き残りを地上へと放った。
放たれた人類は、全員笑顔を浮かべていた。
そしてその中には、赤子を抱く少女と共に新世界を歩く少年の姿もあった。
「神の代理って……その神であるワタシ達より強いクセに何言ってんのあのエイリアン」
「それなのにさらに高次の存在になろうだなんて……これ以上強くなってどうするのだ」
「まさか、宇宙を消滅させる機械のバケモノや星々を食うマモノや大きさ無限大のバケモノと戦うつもりか?」
「おい、お前ら……文句だけは言うなよ」
「分かってる分かってる」
「ワタシ達の宇宙を滅ぼされたりしたら堪らないからな」