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2.稀代子の手駒たち

今回は短いです!

 稀代子は外に待機していた四人の女中を、茶室内に呼んだ。


「彼女たちは私の息のかかっている女中たちよ。彼女が私付きの上女中の一樹」


「はい」


 二十代前半の、すらりと背が高く、冷たい印象を受ける女性が返事をして頭を下げた。白雪は慌てて頭を下げる。


「よ、吉野 白雪と言います」


 白雪が名乗ると、一樹はふむと小さく呟いて口を開いた。


「言いますではなく、申しますのほうが丁寧に聞こえていいですよ」


「は!はい!」


 一樹に言葉遣いを指摘された白雪は、顔を真っ赤にして返事をした。稀代子と同じく、初対面の人間に恐れられる一樹。一樹はニコリともせず頷いたが、素直な白雪を気に入ったようだと稀代子は小さく口角を上げた。


「上女中の二花と三果。彼女たちは双子なの」


 稀代子たちより少し年上に見える、少女二人が白雪に微笑む。


「二花です!よろしくね!白雪ちゃん」


 左目の目尻に泣きぼくろのある二花が元気に挨拶をした。白雪は頭を下げる。一樹がジトリと二花を見下ろしたが、彼女は気づいていない様子で楽しそうにニコニコと笑っていた。


「三果と申します。よろしくお願いします」


 右目の目尻に泣きぼくろのある三果はやんわりと微笑んで頭を下げた。白雪も小さく笑って頭を下げた。一番、白雪と相性がいいのは年も近いし三果かしら?と稀代子は考える。


「この子は下女の四葉」


「四葉と申します。よろしくお願いします」


 稀代子たちより年下に見える少女が頭を下げる。その人懐っこい笑顔に、白雪も思わず笑顔になった。四葉は相変わらず人たらしねと、稀代子は目尻を下げると、白雪に話しかけた。


「あなたを入れて五人ね。どうか皆、仲良くしてね」


 フフッと口元に手を当てて、父が白雪を見て、どんな顔をするか楽しみねと、稀代子は笑う。


「さて、二花と三果は私の部屋に戻って掃除や衣装の整理を。四葉はいつものように他の女中たちの噂話を聞いてきて」


「はい!お任せください!稀代子様!」


 二花が勢いよく返事をした。三果と四葉は「はい」と笑顔で返事をする。三人は茶室から出て行くと、それぞれの持ち場に向かいあるきだした。

 稀代子は一樹を見上げた。


「一樹。外出先から、白雪さんを連れて帰ってきたように見せるから、裏口から出ましょう。先に行っていて」


「はい。稀代子様」


 一樹は頭を下げると、履物を履いて裏口へ向かう。再び茶室内で二人きりになると、稀代子は口を開いた。


「あの四人の中に、裏切り者がいるの」


「え?」


 稀代子は茶室の出入り口に向かい、ゆっくりと腰を下ろし、背後の白雪に話しかける。


「白雪さんも、気をつけて」


 履物を履いて、稀代子は振り返った。戸惑った様子の白雪を安心させるように微笑む。


「私だけを、信じてね」


 ふわりと稀代子の回りに大輪の花が咲く錯覚を白雪は覚える。彼女はこくりと頷き、急いで履物を履いた。稀代子は、純粋な白雪に裏切り者を炙り出してもらおうとは思ってはいないが、彼女が自分の配下に入ることで、尻尾を出すはずだと心の中で笑う。


 この化かし合いを楽しみましょう、裏切り者さん。


 稀代子は白雪と並んで歩きだすと、裏口で待つ一樹の元へ向かった。

お読みいただき、ありがとうございました。

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