こんなところに梅がある⑮
❑旅人
とりあえず出発したものの、今だ何も決まってはいない。ここはどこだ。自分はどこへ向かっているのか。
「どこに行くの?」
声に振り返ると山鳥がいた。
「さぁ、風に聞いて」
適当な答えを返し足早に通り過ぎる。
山鳥が後を追ってきた。
「風に聞いたらね、そんな個人的な事はわかりかねるって」
❑カフェ
セルフカフェで米粉のドーナツを選び、レジを待つ列に並ぶ。飲み物を決めかねている内に自分の番が来た。
「お飲み物はお決まりですか?」
店員の声が掛かり、レジを挟んだ二人の間に沈黙が流れる。
ほらほら、どうするの? ドーナツだけじゃ喉に詰まるわよ。
店員の幻声が私の脳内に働きかける。
Tw140文字小説⑮