こんな私でも青春していいんですか?
本当はこんな高校になんか入りたくなかった。
そんな事を思いながら高校へ続く長い坂道を歩く。
親に無理矢理受験させられた実業高校。他の私立だって特待で受かってた。けれど私の希望なんてお構いなしの親に無理矢理入れさせられた。せめて普通科に行きたかった。
こんな事を考えていても私の両親は頭のネジがぶっ飛んでいるのでこれは無意味だ。
母曰く、
「叔父さんがこの高校に入っていい成績だったからあんなに大きな会社に入れたのよ。」
らしい。意味がわからない。
その企業とやらは、叔父さんがたまたま卒業する年に成績上位2名のみ会社に入れたいという申し出があったらしく、その話で叔父さんはその企業へ就職したらしい。
そんな理由でその後30年近く声もかかっていない高校に私は無理矢理へ入れさせられた。
私の意見や希望はフル無視だ。何のために私はあんなに勉強したのだろう。
でもきっと勉強さえしてれば大学に行けるはず。
大学ならどこへでも好きなところへ行っていいと両親も言っていた。頑張ろう。絶対にこんな所で負けてたまるか。
この街から飛び出して親から逃げてやる。
「ハァ……ハァ……」
長い坂道はかなりきつい。バスも1時間に1本ってどういう事だ。しかも電車からの乗り換えには成功しない時間とはなんなんだ。電車でさえ2時間に1本。通学がかなり苦痛だ。
「遠すぎ……だろ!」
口が悪いのは許して欲しい。変に道を踏み外していないだけまだましなのだ。
それよりも登校初日から遅れそうだ。間に合うか分からない。
かなり遠いのは分かっていた。しかし自転車の購入を両親から拒否されるとは思わなかった。なんなんだこの親は。
挙句私の貯金全て勝手に使われてるとは思わないだろう。
死んだ祖父が毎月くれていたお金を少しずつ貯めていたのに…。私が未成年なのが恨めしい。なぜ未成年だと親が勝手におろせるんだ。
しかもこの高校はアルバイトも出来ない。終わった。
なぜ1番金がかからない近くの普通科高校にしなかったんだ…。
こんな事を嘆いていても何も始まらない。頑張るしかない。
生まれてきた家が悪かった。私は絶対無計画な子作りをしない。結婚もしてたまるか。くそっ。
汗かいてきた。
私をどんどん自転車で同じ制服の人達が追い越していく。
息が苦しい。
歩きなんか1人もいない。そりゃそうだ。こんな坂道のてっぺんにあるんだから。
あと少しだ。正門が見えてきた。
「やべえ!遅れる!お前ら急げー!」
後ろからきた自転車の男子達が叫んでる。
まじか。急がないと。
走ろう。優等生として居ないと評価が下がる…!
急いで私は地面を思いっきり踏み込んだ。
運が悪かった。
まさか自転車の男子が背負って居たリュックを前カゴに入れようとするとは思わないじゃないか。
こんな歩行者の近くで。しかもこの坂道で。
そのままその重いリュックが私の後頭部にぶつかり、踏み込んだまま私は倒れた。
「やべえ!ごめん!大丈夫!?」
持ち主であろう茶髪めの男子が心配そうに自転車と荷物を放りだし、こちらに来るのが見えた。
そこで私の意識は途切れた。