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お宝カレーライスと犬耳少女3

 

「お皿を落とさないようにね?」


「ありがとう!」


 レベッカからお皿を受け取ったククルのご飯探検が今始まった。まず向かったのは野菜の森だ。しかしククルは野菜が好きではないため、ここは戦略的撤退を選ぶ。


「ダメだよ。お野菜もしっかり食べないと!」


 しかしレベッカに捕まりお皿にサラダを乗せられ上に白いソースをかけられる。いきなりの野菜攻撃にしょぼんとするククルだったが、気を取り直して次へと向かう。


「お魚さんだ!」


 次にやってきたのはお魚の海だった。実はククルは魚をあまり食べたことがない。未知の料理の中で選んだのは茶色いカサカサが付いたお魚だ。


「お姉ちゃんそれ取って!」


「アジフライだね。はいどうぞ」


 野菜の隣にアジフライを寝かせてあげる。そこに茶色いソースのお布団をかけたら、なんだかアジフライも喜んでいるように見えた。


「よし!次はお肉の山だ!」


「お肉の山?」


「うん!ククルは今冒険してるの!野菜の森にお魚の海と進んできて次はお肉の山だよ!」


「あれ?ククルちゃんはいつの間にか冒険者になってたんだ?」


「お姉ちゃんも一緒!」


 どうやらレベッカも知らない間に冒険者になっていたようだ。


「じゃあ沢山お宝持って帰らないとね!ククル隊長、今日の狙いのお宝はなんですか?」


「えーとね。うんとね。美味しいやつ!」


「あはは。それは沢山あって困っちゃうな」


 レベッカという仲間を加えてククルの冒険は進んでいく。お肉の山に向かうと、そこには美味しそうな料理が沢山あった。


「お姉ちゃん大変」


「どうしましたかククル隊長」


「今までよりもお肉の山はつよい。お宝が沢山ありすぎる」


 どれも美味しそうで悩んでしまったククルが最終的に選んだのは一口サイズのハンバーグだった。


「お宝は見つかりましたか!」


「うん!これはハンバーグはとても美味しいものだと思います」


 その後も冒険者ごっこは続く。メインホールを回ってお宝を集めたククルが最後に向かったのはパンの街だった。ここなら知ってる物があると思ったククルだったが、実際に目にすると知らないパンも沢山ある。


「どうしよう」


 食べたことのあるパンだけに悩んでしまう。そんな時レベッカがパン達の横にある箱から、白い粒々をお皿に乗っけているのをククルは見てしまった。


「お姉ちゃんそれなあに?」


「これはお米っていってパンみたいな主食なんだって」


「そうなの?ならククルもそれ食べる!」


 パンに悩むならパンじゃないのを食べればいい。ククルはパンの街の隣にあるお米王国の探索を始めた。


「じゃあククルちゃんのお米にはとっておきの魔法をかけてあげよう!」


 そういうとレベッカはククルのお米に茶色いソースをかけてきた。


「なにこれ!凄く変な色だよ!?」


「これはカレーっていってね。見た目は良くないかもしれないけど、すっごく美味しいんだよ。辛いのもあるけどこれは甘口だから安心してね」


「うー。お姉ちゃんがそう言うなら食べてみる」


 順調にきていた冒険に暗雲が立ち込めてしまった。お米王国に得体の知れないカレー達が攻めてきたのだ。


「なんだか茶色が多くなっちゃった」


「確かにそうだね。ならカレーにトッピングして綺麗な色にしよう」


 レベッカはカレーの上にトロトロなスクランブルエッグを乗せた。茶色かったお皿に卵の黄色が足されて一気に華やかになる。まるで不毛な大地に黄色い花が咲いたようだ。


「これでよし。じゃあ戻って食べよう!」


 席に着いたククルはまずお皿を眺めてみた。瑞々しいサラダにきつね色に揚げられたアジフライ。ハンバーグはみるからに美味しそうだ。そして未知数なのはカレーとお米だった。


「ここでは食べる前にいただきますって言うんだよ」


「そうなの?いただきます」


 まずククルはサラダに手をつけた。ギュッと目を瞑ると口に入れてもぐもぐと口を動かす。


「あれ?美味しい」


 ククルの嫌いな苦さを全然感じられない。それどころか白いソースがクリーミーで美味しいとすら思える。


「美味しいよねシーザードレッシング。お姉ちゃんもこれ好きなんだ」


「しーざー?」


「この白いソースだよ」


 なるほど。この白いソースのおかげで野菜が美味しくなっているみたいだ。これなら食べれるとククルはにっこりと笑った。


「次はアジフライ!」


 アジフライは魚の尻尾の部分がニョキっと生えてて可愛い。フォークで刺すと中はふわっとした柔らかい感触をしている。一口齧るとサクッとした歯切れのいい音がした。


「アジフライ美味しい!」


 カリカリの衣にふわっふわの身が対照的でとても面白い。噛むほどに魚の旨みが溢れ出して、それとソースの甘塩っぱさが相まって美味しさが爆発している。


「アジフライにはアジっていう魚が使われてるんだけど、とっても味がいいからアジって名前になったんだって」


 それを聞かされてククルも納得だ。こんなに美味しいお魚なら名前を考えた人もアジと付けるしかなかっただろう。


「ハンバーグはどうかな」


 アジフライと違ってハンバーグはお肉料理だから味の想像ができる。そう思ったククルだったがフォークを刺した時にそれが間違いなことに気づいた。


 違う。これはククルの知っているお肉じゃない。フォークで切れるほどに柔らかすぎる。ごくりと唾を飲み込むと少し震える手でハンバーグを食べた。


「んーっ!」


 一口噛んだだけで肉の旨味が弾けた。香り高い茶色いソースを纏ったハンバーグは、ククルが食べたことのあるお肉の中で圧倒的ナンバーワンだ。あまりの美味しさにすぐ食べ切ってしまった。


「最後はカレー」


 スプーンでお米にカレーとスクランブルエッグを掬うとパクりと食べる。


「わっ」


 思わず驚きの声が漏れた。カレーはその見た目に反してほんのり甘い優しい味がする。それだけではなく鼻を抜ける香りや奥深い味わいにククルはすぐに夢中になった。


 ぱくっ。もぐもぐもぐ。ぱくっ。もぐもぐもぐ。


 ククルのスプーンは止まらない。それを見てレベッカも満足そうに笑っている。


「ククルちゃん。カレー美味しい?」


「うん!カレーが一番のお宝でした!」


 どうやら冒険者ククルが一番気に入ったお宝はカレーのようだ。全てのお宝を食べ切ったククルは満足そうにお腹をさするのだった。

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