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18「現金」


 秘密や嘘なんてのはいつだって、よりたくさん抱えている側の勝ちだと思うのだ。


 魔力の発現した国民は、その旨を国に届け出ねばならない。

 主に政府による監視のために発令された法だが、私は少々悪知恵が働くタイプの魔女だったので、今に至るまで監視、課税、白眼視を回避して生活している。

 もちろん自分の利益のためだが、正体を隠して凡人の中に紛れている優越感も最高だ。街角の薬屋を営みつつ、チョイと魔法を使って経費を削減しているため利益率は他店の比にならない。帳簿は適当に誤魔化して、今日も私は善良で頑張り屋の小市民である。


 ところで、最近そんな私にも恋人ができた。大変かわいい年下の男の子で、ついつい甘やかしてしまう。

 当然だが、私の正体は秘密である。全部を全部つまびらかにすれば良いってもんじゃないでしょう? 自分の損になるようなこと、する訳ないじゃない。

 その辺りの価値観を巡って、たびたび論争になった。彼は何でも正直に報告する律儀な質だったのだ。つくづく損な性格だと思う。


「実は、部署を異動になることになったんだ。魔力保持者の管理をすることになる」

 ある日、改まって告げられた言葉に、私は覚悟を決めた。

 どうやら最初からバレていたらしい。魔女摘発のために囮捜査が横行しているという噂は聞いたことがあった。


 悲しいやら悔しいやらで、「まあ私だって最初からあなたのことなんか好きじゃなかったわよ」と吐き捨てると、彼は大層衝撃を受けた表情になった。


「何のこと? 俺はずっと本気だよ」

 潤んだ瞳で声を震わせているのが可愛くて、思わずきゅんと来てしまった。

 正直者の方が可愛いし、変な墓穴を掘ることもなくてお得で勝ちかもと思ったので、そのあと私は全て自白して転向した。

 改心して真人間になったってわけ。……ほんとだってば!



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