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いつかは沈む標に舫う【短編集】  作者: 冬至 春化


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12「天命」


 世の中には輪廻転生ってやつがあって、それは時間も空間も関係なしに魂が巡る仕組みのことらしい。


 正直言ってあたしは懐疑的。前世の記憶を持ってるなんて人もいるけど、それって本当かしら? あたしは自分が体験したことしか信じないタイプなの。


 ちなみに生前の行いとの関連性に関しては、最新の論文でも玉虫色の結論だった。ただ、もし今世で悪いことをした奴は来世でろくな人生を送れないとしたら、あたしは既に完璧アウトだね……と、殺し屋のあたしは思う訳です。



 ところで、そんなあたしの次の仕事はさる王女サマの暗殺である。

 とびきりの要人だけあって警備は厳重だし、報酬も破格。でもあたしにかかれば大変な仕事じゃない。さっさと終わらせて南の島にでも高飛びするつもりだった。


 ……しかし、任務は思いがけず難航した。この少女には一切の隙がないのだ。業を煮やした依頼主は、あたし以外の殺し屋たちも次々と宮殿へ投入し、あらゆる物陰という物陰に物騒な連中がいるような状態にまでなった。

 しかし王女はいかなる凶弾にも倒れない。どんな罠さえ難なくすり抜けてゆく。まるで、暗殺者たちの居場所や手口を了解しているかのように。でもそんなはずはない。


 ……あたしは百戦錬磨のアサシンだ。絶対にこの女を殺してやる。そうして、誰も殺せなかった女を仕留めた暗殺者として、闇の歴史に名を残してやるのだ。



 戴冠式、あたしは慎重に狙いを定めて、彼女が跪いた千載一遇のチャンスに引き金を引いた。仕留めた、とあたしの長年の勘が告げる。

 その額が撃ち抜かれる一瞬前の刹那、顔を上げた彼女は過たずあたしを見た。あたしを見て、歯を見せて笑った。

 そのせいで逃げるのが遅れたのだ。あたしは衛兵に捕らえられ、女王殺害の罪で処刑された。


 ……そうして気がついたとき、私は、鏡の中に見覚えのある少女の姿を見つけた。それは紛れもなく、あたしがずっと追い続けてきた女の幼い姿である。律せられた運命の意地悪さに私は歯ぎしりする。――私は、絶対に、殺されてなどやるものか。



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