ななちゃんと、ゆきのスタンプ
知っていますか?
雪はたくさん降ると、音を吸収して街全体が静まり返ることを。
そして、意外とあたたかいということを。
ななちゃんとかなちゃんは、まだ誰も踏んでいない新雪を踏みたくて、お外へ行く支度をしています。
「なな、あったかくしようね」
そう言ってかなちゃんは、ななちゃんにコートを着せて、帽子を被せて忘れずに手袋もはめてあげて準備万端。
「いてちまぁしゅ!」
「行ってきまぁす」
玄関を出た二人の目に飛び込んできたのは……。
「しゅごぉいでちゅ! じぇんぶまっしろでちゅ」
「眩しいね」
「むぶちぃでちゅ」
そうなんです。
雪は降り積もり、陽が出ている時には、地面からの照り返しがあり、眩しくて目を細めてしまうくらいなんです。
「かなしゃん。ふみふみしゅる?」
「いいよぉ。ななやってごらん」
「しぇぇぇのっ!」
ギュッ──
雪を踏んだときの音が、思っていたのと少し違ったようで、ななちゃんは首を傾げます。
「ななはどんな音だと思ったの?」
「えっとぉ……ふわぁぁ! でちゅ」
降る雪はふわふわしてるから、ななちゃんの気持ちは解ります。
真っ白でふわふわしている雪。
「かなしゃん、ながぐちゅしゃんがぁ……」
雪の中に残った、ななちゃんの長靴。ななちゃんは泣き出しそうです。
両手を上げて、かなちゃんに抱っこをせがむななちゃん。
「しょうがないなぁ」
近づくかなちゃんを、ななちゃんは急に叫びました。
「かなしゃん! あしぃぃ! あしのことぉぉ!」
「ん? 足がどうかしたの?」
ミトンを付けた小さな手で、ななちゃんは答えを指差します。
「……あっ、これかぁ。足跡」
「あちあと! ななのあちあとでちゅ!」
大きな足跡と小さな足跡が、そこら中にペタペタと、スタンプのように押されていた。
「なな、ペタペタしゅるぅぅ!」
たまに雪に足をとられてかなちゃんに助けてもらいながら、雪に足跡をつけるななちゃん。
「かなしゃん? あちたもペッタンでちまちゅか?」
「雪が降ったら出来るかもね」
「へくちっ!」
「お風邪さんひいちゃうから寒くなってきたし、そろそろお家に入ろうか」
「はぁいでちゅ」
明日も大好きなお姉ちゃんと一緒に、ペッタン出来るといいね、ななちゃん──
「たらいまぁ。たのちかったでちゅ」
あったかいお部屋で、ななちゃんは、大好きなかなちゃんとふたりで足跡をつけた雪を眺めながら楽しかったお話をパパとママに聞かせてあげるのでした。
遥彼方さま、素敵な企画に参加させていただきありがとうございました。