表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

敗北令嬢は自由を手にする(7)

※ダーク注意


 前回13話で結末がわかる、とか書いたんですけど全然そんなことはない構成になりました……。ひとまず今回もダークです。

 ソレイユが到着し、ジョジアによって儀式の始まりが告げられた。


「さてぇ、まずは1度契約を解除させていただきます。例のものは、お持ちになりましたかぁ?」

「ああ」


 ソレイユが袋から出したのは3つの腕輪だ。主契約者と従契約者を取り持つためにはこういった物体による中継が必要になる。シエルサも受け取り、ひとつ右手に付ける。


「さぁ、どうぞ公爵様も」


 ジョジアの薦める声を聞いて、シエルサはソレイユを見た。ソレイユは当たりを見回して眉をひそめる。


「ひとつ聞かせろ」

「なぁんでございましょう?」

「この子供たちは……なんだ」


 通常のかけ直しなら必要なかったこどもたち。それこそがジョジアの企みで、シエルサが利用しようとしている方法だった。


「この子達は……奴隷ですよぉ。大丈夫です、公爵様とご息女様には影響などございませんからぁ」

「今までの儀式では必要なかったはずだ」

「ご息女様が大きくなられたのでぇ……その分、大きぃな力がぁ……必要となるのですよぉ」


 ジョジアは大きな力が必要になると言って、ここにいる奴隷たちの魔力を吸いあげようとしているのだった。今回の依頼に乗じて、自分の力を高めるつもりなのだ。

 魔力というのは血の流れに乗っている。他人から魔力を無理矢理吸いあげようとすれば、無くなった魔力を補完するために心臓の鼓動は早くなる。それが長く続けば……やがて肉体は耐えきれなくなり、命を落とすのだ。


 人の命が無くなることを嫌悪するのは、人として当然のことなのだけれども、シエルサはソレイユの対応に引っかかるところがあった。


(こんなにも、動揺していたかしら?)


 横たわりながら、首を動かしてソレイユを見る。握りしめた拳が震えているのが目に入った。シエルサの記憶にある「そうか」と、一言口にした父とはまるで違う。そのことに、シエルサは焦りを覚える。


「まぁさか! この期にぃ及んで……やめる、などとはぁ、言い出しませんよぉねぇ?」


 ジョジアはソレイユに詰め寄り、地を這うような低い声で囁いた。

 ジョジアの最も嫌悪しているものは、この世にふたつ。

 貴族と裏切り。

 ジョジアを歪ませたのもまた、それだった。いまシエルサが動けば、ジョジアの「お人形」という願望を裏切ることになってしまう。

 だから、シエルサは動けない。


(はやく……。わたしは、諦めるわけにいかないのに)


 シエルサが焦るなかで、ソレイユは脱力したように「わかった」と口にした。


「よぉろしぃいです! でぇはぁ……はぁじめましょう!」


 その言葉を肯定するかのようにソレイユは右手に腕輪を付けた。3人が腕輪をつけたことで、それぞれの腕輪をつなぐ光る糸が現れる。魔力の通り道が出来たのだ。それぞれの間に2本ずつ。ソレイユから出ている糸はジョジアを通り、シエルサへ。シエルサから出ている糸はジョジアを通してソレイユへ。ちょうど3人を繋いで一周している。


 その糸が動くのは、一瞬のことだった。

 ジョジアはシエルサから流れてくる糸を己の魔力で断ち切り、もう一方の糸を手繰る。シエルサの体を傷つけないように細心の注意を払って、すばやく抜き去った。するすると糸はジョジアの腕輪の中に仕舞われる。仕舞うのを待って、ソレイユから流れる糸をその腕輪の近くで切り離す。自分の中の魔力を流し、ソレイユの中へと糸を戻していく。


 それは10秒も経たないほどの短い時間だ。しかしそれで3人の体にはそれぞれ負荷がかかる。最も軽度なのはシエルサだけれど、そのシエルサも朦朧とした意識の中にいる。

 胸元の紋様が光の粒となって消えていくのを、シエルサは他人事のように眺めていた。


「まずはぁ……ひとつですねぇ」


 きゅぽん。

 ジョジアは懐から小瓶を取り出し、蓋を開ける。甘ったるい匂いが広がる前にジョジアは中身の液体を飲み干した。

 空の小瓶を仕舞い、今度は代わりにまた違った腕輪を取り出した。


「しあげの時間でぇすよぉ……!」


 金属の擦れ合う音が聴覚を奪う。

 ジョジアは魔法具についた宝石を光らせながら、口の端を持ち上げて笑う。


さあ(   D a i ,)、血(  b a l l )にま( i a m o)(   n e l)( )(s a n g) (s e) か!」


 流暢な他国語が耳鳴りの中で際立った。その言葉に檻の中にいる子供たちが反応する。


「うぅああああああ!!!!」

「うぁぎぃぃぃぃぃい!!!」


 ジョジアが子供たちの体のなかから魔力を無理矢理奪っているのだ。心臓がばくんばくんと大きく動く。それを止めようと必死で胸をかきむしる子やただ動けずにいる子がいる。多種多様な姿ではあるが、それは地獄絵図だった。

 シエルサは手をぐっと握りしめて、動揺を抑えようとしていた。


「はははははっ! こぉれこそ! わたぁしが求めていた……無二の力ぁ!」


 ジョジアのもとへ集まる魔力は、左腕の腕輪からジョジアの体の中へ入っていく。吸い込まれていく魔力が人の目に見えるほどくっきりしていた。

 それとともに、こびりつくような断末魔が何度も何度も聞こえてくる。

 ダークなところにはダーク注意、と書きます。もしかしたらもうダークは出てこないかもですが……。


 それと、竜神のミドルネームみたいなのを初対面で公開することにしました。ルゼルと言います。学院編ではほとんど出てきません。後半辺りにちょろっと出てきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ