どのエージェントにしたらいい?
僕が『海外行きますわ』と言った時、初対面だったA君はとても驚いていた。
彼は『え、まじ?就職は?』と笑いながら聞いてきました。
さらに続けて『じっくり考えた方がいい、もうちょっとワーホリについての情報を集めた方がいい』などと慎重になっていた。
どうやら自分のせいで人の人生を変えてしまうという謎の責任感に襲われたのだと僕は思った。
もしも本当に初対面で責任感などを感じていたのなら本当に彼は優しすぎると僕は思った。結局決めるのは僕自身なのでやることなすこと、全て僕の責任である。
家に帰り、母に今日会った人の事や僕が海外に行こうと思っている事を話したが母は完全に反対していた。もちろん内定をもらったのにも関わらず辞退して海外に行くなど常識的にありえない事であった。
母は意見を変えない人であったため説得するのを諦めた。
諦めたが僕のしたいことは誰になんと言われようがしようと決めていた。
母は僕が海外に行こうとしているのを否定していたが、A君とエージェントに話をしに行った。
一つ目のエージェントでは、どんな国がどんな条件でその国のビザが取れるのかなどを教えてくれた。スタッフの方々は僕の勧誘に成功すればお金が儲かるのでメリットや僕のテンションをあげるような上手い話し方をしてくれた。
保険の話や英語の話は僕の苦手分野だったがその分野で詳しくもない僕でもわかるように丁寧にどんな保険がオススメなのか、英語力はどれぐらい必要でどこの語学学校がオススメなのかも教えてもらった。とても役に立った。
だが、今思えば、保険も語学学校も進める理由はもし僕が加入すれば儲かるからであって、彼らが本当にその語学学校が他の所よりも良いと言う保証はなかったため、彼らの言っていた年間12万の保険も語学学校にも結局、入らなかった。
2つ目のエージェントは逆に僕をワーホリをオススメしてこなかった。その理由は僕が内定が決まっていたのと英語が全く話せないと言う点であった。
彼が言うにはILESという英語のテストで9点満点で6点は必要との事だった。ちなみにA君はスピーキングで8,5点という事をエージェントの人に伝えたところ物凄く驚いていた。
自分のことではないが僕も気づいたら、それからA君の英語自慢をするようになっていた。
エージェントの考えでは、僕はとりあえず就職して3年働き、その間に英語を勉強したり、どうすべきかと自問自答すべきとの事だった。
彼は親友を亡くし、自分もいつ死ぬかわからないと思ったため、その時仕事を辞め、行きたかった海外に行ったらしい。
そんな話を聞いたら尚更、すぐに海外に行かないとと僕は思った。彼はおじさんで僕は高校生だった。だが僕だっていつ死ぬかわからない。やりたい事やる前に死ぬもんかと思った。
彼とはそういった面では最後まで意見が合わなかったがこの時初めて、ビジネスのためではなく僕の人生をサポートしてくれる人だと思った。それは僕にとってすごく嬉しい事であった。
どうしてかというとお金のために仕事をしている大人たちがいっぱいいるのを知っていたからだ。
そんなこんなで最終的に決めたエージェントはオーストラリア在住の日本人であった。
まさかその人とたくさんのいざこざがある事はこの時、まだ想像すらすることができなかっただろう。