悪魔の取引
万里「そうだよ。好きになったのは、男ばかりだ。だけど、『女を捨てなきゃいけないんだ』」
優しい悪魔は、動き出した。
愛「まだ間に合うぞ。素直に女になると言え。女であることを証して、女として生きると言え」
万里「僕は、女を捨てて生きるしかないんだ」
愛「自分を偽り、一片の愛情もない女を嫁にして……というのか?」
愛「なら、女の身体を私にくれ」
万里「なにを訳のわからないことをいっているんだ。そんなことできるくらいならしてほしい。できたとしたら、悪魔かなんかだ」
愛「その悪魔を知っている。嘘だと思うなら来るか?」
万里「…待ってくれ。その前に、私の、わがままを聞いてくれ」
万里「最後に女として、アイスダンスを…………」
万里「そしたら、私の女の身体を差し出す」
誰もいないスケートリンク
愛は、マユカとのアイスダンスで一度だけ着た黒い色の衣装。万里は、着ていたピンク色のロリータドレス。
息が合わずグダグダだと思ったが、もったいないくらい完璧なアイスダンスだった。
万里の悲しみを象徴するように。
シュタインズクリニック
フランケン・シュタイン「診察をしたいので、愛様は、外していただけませんか?」
愛「わかった」
入れ替わりに看護婦が入ってきた。
フランケン・シュタイン「私は一応医者だ。裸になってくれたまえ。上半身だけでいい」
フランケン・シュタイン「手術の内容だが、身体を取り換えるいうよりも、君と、愛様の首から上を取り替えたいんだ」
万里「そんな…」
フランケン・シュタイン「怖くなったかな?」
万里「…………」
フランケン・シュタイン「押さえつけていたのがもったいないくらい綺麗な女性の身体だ。自分の身体をなるたけ残すのも、やってやれなくはないが、君も、愛様も、どうしても不自然な体つきになってしまう。最善ではないが、次善なのだよ」
万里「わかりました」