エミの焼失
あらすじから始まります。
その前に語らなければならないことがある。
フランケン・シュタインが、エミに何をしたのか。
CEOには、最愛の娘「真綾」がいた。
側近たちが呆れ返るほど、真綾を溺愛していた。
ところが、真綾は、不慮の事故で脳が全壊した。
CEOは、ライバル企業を蹴落とし、自社の工場から出る有害な化学物質を反社会的勢力に不法投棄させ「化学アカデミア」を一代で急成長させた。
その重ねてきた業の報いとしては、これ以上残酷なものはなかった。
CEOは、なんの罪もない真綾に、神がしたことに憤った。
CEOは、そう思った。
CEOは、元々信じてなかった神に完全に背中を向け、優しい悪魔を探し求め奔走した。
探し求めた優しい悪魔は、「ヴィクター・フランケン・シュタイン」を自称する闇医者だった。
さすがのフランケン・シュタインも、手の施しようがなかった。
それでも、真綾のことが諦め切れないCEOは、フランケン・シュタインの悪魔のような技術力で、身体を生かし続けた。
真綾のことを諦めかけたとき、CEOは、恐ろしいことを思い付いた。
真綾を諦めるかわりに、真綾の子供、自分にとっては孫をもうけることだった。
真綾の卵巣と子宮を移植する対象として、性同一性障害の男子を探した。
新社宅
CEO「彼は、ジエイ・カーンソン」
ジエイ・カーンソン「はじめして」
CEO「彼は、ヴィクター・フランケン・シュタイン」
そういって紹介されたのは、歳をとっているようで若くも見える髪を長く伸ばした怪しい男だった。
ジエイ・カーンソン「天才科学者?」
フランケン・シュタイン「マッドサイエンティストが、本音かね?」
ジエイ・カーンソン「そんなことは……」
フランケン・シュタイン「こちらこそ宜しく」
フランケン・シュタイン「早速だが、その少年は、本当に性同一性障害なんだね?」
ジエイ・カーンソン「言動、仕草、牧師の孫娘への羨望、正直、たぶんですが」
フランケン・シュタイン「正直でいいね。まあ、私が判断することになるがね」
CEO「私が手配して、フランケン・シュタイン先生が適合化手術を格安で受ける ことをリークさせる」
ジエイ・カーンソン・シニア「これでいいのか?」
ジエイ・カーンソン「この場を救ってくれるなら、悪魔の手でもかまわない。暗黒面に墜ちたのは、俺かもな」
CEOの悪魔のような計画は、最終段階を発動していた。
キッチンに戻ると。
店長「これが、今日のまかないだ」
店長の焼いたクロワッサンだった。
エミ「いただきます」
エミ「なんです、生地の仕込みから、なにからなにまでダメじゃないですか、私にだってわかり…」
エミは、倒れる。
CEOに睡眠薬を盛るように言われていたのだ。
職人としての誇りが許さなかったので、最悪のできだったのだ。
エミは、『愛』と、『悠子』を産んだあと、シュタインズクリニックへ搬送された。
大病院は、さすがのCEOの意向でも、殺人は、出来なかった。
フランケン・シュタイン「悪く思わない…いや、悪く思っても、恨んでもいい」
ジエイ・カーンソン・シニアの家。
ジエイ・カーンソンもいた。
ジエイ・カーンソン・シニア「なんと言われようと、私も、息子も、悪魔に魂を売ったと蔑さげすまれても文句を言えない罪を犯したんです」
イメージ
「もう神様の姿が見えない」
エミ祖母「そんなこと言わないで、会堂に顔だしてくださいよ。イエス様が死んでくださって、すべての罪はあがなわれたんですよ。洗礼で救われたんじゃないですか」
ジエイ・カーンソン・シニア「出て行けぇ」
エミ祖母に丁重に帰ってもらった。
そのあと、ジエイ・カーンソン・シニアは、エミが、CEOの孫を産んだあとのことが気になったので、息子に聞いてみた。
ジエイ・カーンソン・シニア「あの子は?」
ジエイ・カーンソンは、うつ向いて。
ジエイ・カーンソン「薬殺されて、焼却」
ジエイ・カーンソン母「あっあぁぁ」
号泣。
火葬場
フランケン・シュタイン、CEO、ジエイ・カーンソン、女、カフェの店長までいた。
遅れて、パン屋の店長。
その手に抱えた箱には、クロワッサンが七つ。
(パン屋の)店長「せめてもの手向け。食べてください」
そのクロワッサンは、至高のクロワッサンを越えたものだった。
通常は、採算性を考えて、本来使いたい材料を使っていないのだ。
最後の一つは、エミの生命を停止した肉体の入った棺桶へ。
特別な高温で、骨まで灰になった。
エミは、誰の子なのかって?
男視点の物語なので真相は、藪のなかです。
あの小者な男が、ABO以外の血液型検査、DNA鑑定をやる度胸などあるわけありません。