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カノンちゃんはタイヘンです。  作者: 陽海
〈chapter:05〉ジョージさんはお怒りです。
27/28

【05 - 04】

本日は四話連続投稿ですので、読み飛ばしにご注意ください。


 m(__)m


 ファンファンファンファンファン……


 廃ビルを包む闇の向こうから、赤く明滅する光とともに、けたたましいサイレンの音が近づいてきます。その頃にはようやく、三十路を超えて十代の少年少女たちにマジ泣きを披露したイケメンも、気持ちを立て直したようです。


「……ソーリー。お見苦しいものを、みせてしまったね」

「い、いいえ! そんなことは!」

「イケメンの涙とか、むしろ眼福でございました!」


 恥ずかしそうに苦笑するジョージさんに、信者であるアキラくんが慌てながらフォローして、初めて目にする年上男性の涙に見惚れていたヒメカさんも追随します。これがブサメンであれば少年少女たちの反応もまた異なっていたでしょうが、イケメンの涙には、周囲を問答無用で懐柔してしまう不思議パワーが秘められているのです。


「ねぇねぇあっくん? たしか以前に私が涙目になったときは『人前で泣くヤツとかマジ計算高くて女々しいウザいわ~』って盛大にディスってませんでしたっけ? あれ、けっこう傷ついたんですけど?」

「へぇ……直江くん、カノンさんを人前で涙目にさせたのですか……」


 なお、わりと良いことを力説したはずなのに、最後にイケメンの涙にすべてを持っていかれたカノンちゃんは非常に不服そうでした。その背後ではマコトさんが、幼馴染みの漏らした暴露話に『スッ……』と瞳の輝きを消しております。


「…………」


 ちなみにそんなジョージさんたちの足元には、苦痛のあまり途中から意識をブラックアウトさせた辮髪男が泡を吹いて転がっておりました。人間には本来、長時間スチールバットを咥えたまま拷問を受ける機能は備わっていないので、仕方がありませんね。黄ばんで盛り上がったブリーフの惨状が全てを物語っております。


「あ、あのぅ……」

「ウチら、いったいどうすれば……」


 そんなカノンちゃんたちに、躊躇いがちに声をかけるのは、ベッドのシーツを身体に巻き付けただけの肌黒ギャルたちでした。ヒメカさんたちによって拘束から解放されていた彼女たちですが、ふたりだけでこの場から離れるのは心細く、かといって自分たちが貶めたカノンちゃんたちに混じることもできずに、さらに見知らぬゴッドイケメンの涙まで拝見してしまって、非常に気まずそうな様子です。


「……っ!」

「そ、そこを動くなぁ!」


 そうして弛緩していた部屋の空気を、

 切羽詰まった男たちの怒声が断ち切ります。


「きゃっ!」

「だ、だぁ!? ナニすんだよ!」

「うっせぇ黙れよブス! 動くな! これをブッ刺されてぇのか!?」

「お、おみゃえらも動くなよ! とくにそこのオッサン! 絶対に動くなよぉ!?」


 部屋の側面に備えられている扉から飛び出してきたのは、路上でカノンちゃんたちを襲ったチャラ男コンビでした。扉は小道具室に繋がっているらしく、たまたま部屋に籠っていたためにジョージさんの襲来を回避できた彼らはずっと、逃走の機会を伺っていたのでしょう。各々が手近にいた人質を拘束して、その手には、見るからに凶悪な極太イボ付き電動コケシが握られております。


「えっと……なんで、よりにもよってアレを凶器に? そしてなぜ全裸?」

「察してやれよ姫路。たぶんアレしか、武器になりそうなものはなかったんだろ。全裸なのは……まあ、趣味とかじゃね?」

「というかあの人たち、ちょっと目がイッちゃってません? もしかしておクスリとかやられています?」


 ある意味では狂気に満ちた凶器を構える裸族に、ヒメカさんは素で疑問を呈してしまいました。答えるアキラくんやカノンちゃんも、揃ってドン引きです。


「ふぅ、うるせぇぞこの野郎ども! いいからオレたちを逃がしぇ!」

「ガバガバにされてぇのか!? おっ!? ガバガバにしちまうぞコルラぁ!」


 迫り来る警察。倒された辮髪男。凶悪極まりないイケメンと、次々と自分たちを追い詰めるファクターに、チャラ男たちの精神は限界のようでした。しかしそんな彼らの訴えは、先ほどからずっと無表情のマコトさんには届きません。


「たしか……あの人たちは、路上でカノンさんに乱暴を働いた……」

「……ほう。それは、聞き捨てならないな」


 瞳からハイライトが消失している巨乳委員長の傍らで、エンジェルのガーディアンを自称するイケメンもまた、臨戦態勢に移りました。スッと細められた瞳に浮かぶのは、あきらかな憤怒の感情。攻撃色です。


「ギルティだ、コックローチども。貴様らに明日を生きる資格ライツはない」


 先ほどから『ヴヴヴヴヴッ』と威嚇するように鳴動する極太イボ付き電動コケシにも怯むことなく、ジョージさんは堂々と正面から距離を詰めていきます。これに動揺を隠せないのは、人質をとるラリ男ブラザーズでした。


「て、てみぇえ! 人質がどうなってもいいにょか!?」

「テロリストには屈さない。あちらではセオリーだぞ?」

「が、ガバガバにしちまうぞ! 前も後ろもガバガバにしちまってもいいのか、えっ!?」

「あ、あの!」

「ウチらのことは、気にしないでください!」

「大丈夫だよ、ブラックガールズ。キミたちのことは、絶対に助ける」


 問答無用で迫るジョージさんに、怯えるチャラ男たちは半狂乱となって電動コケシとともに震えます。一方でまったく根拠ない励ましをかけられた肌黒ギャルたちは「はぅ!」「ぬ、濡れる……っ」と別の意味で震えておりました。実情よりも雰囲気がいかに重要か、推して図れる一幕ですね。


「く、きゅるなぁああああああ!」

「じねぇえええええええ!」


 とうとう圧力に耐えられなくなって、自暴自棄となった裸族たちが人質を捨てて、狂気に満ちた凶器を振りかぶりながらジョージさんに突撃しました。しかし鬼気すら迫るラリ男ブラザーズの特攻を、イケメンは鼻で笑います。スムーズに両腕を上げて、構えるのは洗練されたボクシングのフォーム。


「フン」

「あ痛ぁ!」

「あいえぇッ!?」


 繰り出されたジャブは二発。まずはそれでチャラ男たちの握る極太イボ付き電動コケシを叩き落して、武装を解除。続くフック二発で、本体も無力化してしまいます。


「お、おげぇええええ! おぇえええええ!」

「お、おなかがぁ! ポンポンが割れたぁ!」


 鳩尾を的確に強打されたチャラ男たちは、仲良くその場に蹲りました。偶然にもそれは日本の伝統美である『DOGEZA』の姿勢でしたが、全裸であるためゴールデンボールと菊門を衆目に晒す彼らに、慈悲の感情は浮かびません。


「うっらぁあああああ!」

「くたばれぇええええ!」


 そんな彼らに襲い掛かったのは、今まで散々とチャラ男たちに振り回されてきた肌黒ギャルたちでした。彼女たちは目の前の穴に、拾い上げた棒を迷わず突き刺します。


「「 あッへえええええええええッ! 」」


 潤滑液もなしに極太イボ付きの尻尾を生やしたチャラ男たちは、絶叫。白目を剥いて、そのまま昇天してしまいます。


「フンっ! クソどもが、あんまりオンナを舐めるんじゃねーよ!」

「言っとくけどアンタの粗末なアレ、全然気持ちよくなかったし!」


 肛門肺活筋を損傷した元カレを足蹴にして、

 中指を立てる全裸の肌黒ギャルたち。


「グレイト」


 そのあまりに堂々とした態度と勝ち口上に、見せ場を奪われたジョージさんですら親指を立ててサムシング。


「おぉ~」

「それでこそ、女性の鏡ですわ」

「やるじゃん、リホ。アキナ……」


 ギャラリーのJKたちもまた、惜しみのない拍手を贈ります。


「……」


 その場でただひとり、無意識に両手でお尻をガードしている女装男子だけが、身の毛もよだつ不快感にヒュッとスカートのなかのオトコノコを縮み上がらせるのでした。



 ということで、これにて本編は一区切りです。残すところは後日談のみなので、ここまでお付き合いしていただけた読者様には、最後までお付き合いいただけるとたいへん嬉しく存じ上げます。


 それではお読みいただき、ありがとうございました。


 次回の更新は8/19の予定です。


 m(__)m


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