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カノンちゃんはタイヘンです。  作者: 陽海
〈chapter:05〉ジョージさんはお怒りです。
25/28

【05 - 02】

本日は四話連続投稿ですので、読み飛ばしにご注意ください。


 m(__)m


「うわぁ……これはまた、なんとも……」


 けっきょく地上一階のロビーから、脱走系JK集団は暗幕の張られている上階にまで引き返してきました。そして光源が漏れていた問題の部屋に到着するなり、内部の光景を目の当たりにしたカノンちゃんの脳裏に浮かんだのは、『混沌』の二文字です。


「う、うぅ……」「いやぁ……見ないでぇ……」


 辮髪男が『撮影』と言っていたように、窓に暗幕の張られた部屋には、明かりの絶えた他の部屋とは違い、持ち運び用のバッテリーによる照明設備が設置されていました。ただしカメラマンが撮影に使う専門機材が向けられる先は、グラビアアイドルなどではなく、棒とロープによってあられもない姿に固定された肌黒ギャルたち。服を剥かれ、大股を強制的に開かされる彼女たちは、自分たちの花弁と菊を惜しげもなく晒していました。


「リホ! アキナ!」

「直江くんは見ないでください!」

「へいへい。わかってるよ。……ってかなんだよコイツら。きったねぇなぁ」


 またそうして薄汚れたベッドの上に固定されている女優たちの周囲には、白目を剥いて様々な液体を漏らすブリーフ姿の男たちが転がっておりました。さらに撮影のために用意された三角木馬や浣腸器、床に散乱したイボ付きバイブやピンクローターなどが、空間のカオス濃度を劇的に高めております。


「ほごぉ! ばっ、ばはははほばはっ!」


 そんな部屋の最奥には、この部屋をプロデュースしたのであろうブリーフ姿の辮髪男がいました。しかし壁際に追い詰められて床に尻を着くブリーフプロデューサーは、これまで彼が女優たちにムリヤリ自分のイチモツを咥えさせてきたように、今は自分が、直径が拳ほどもあるスチールバットを強引に口に捻じ込まれています。皮膚が裂けているのか、はたまた歯が何本か折れているのか、その口許は真っ赤に染まっていました。ついでにブリーフにも、股間部に黄ばんだシミを作っています。


「……やあエンジェ――カノン。奇遇だね、こんなところで会うなんて」


 そしてスチールバットを握っているのは、こんなときでも微笑みを絶やさないジョージさんでした。その衣服に乱れは見られません。どうやら怪我はないようで、道中の惨状から身を案じていたカノンちゃんは胸中で一安心です。


「……本当に、奇遇ですねジョージさん。それでいったい、ジョージさんはいったい何故こんなところに?」


 安堵が通り過ぎると、次いでフツフツと湧いてくるのは怒りです。剣呑な姪の詰問に、叔父はスチールバットを握ったまま肩をすくめます。ゴキリと嫌な音がして、辮髪男が悲鳴をあげました。


「ほがぁ!」

「シャラップだ、コックローチが。貴様の汚らわしいスクリームで、これ以上エンジェ――カノンのイヤーを穢すんじゃない。殺すぞ」


 涙を浮かべる被害者ですが、冷たい加害者の命令によって封殺されてしまいます。位置的にカノンちゃんからその表情を伺えませんが、見下ろされる辮髪男は、ブリブリと異臭とともにブリーフを膨らませておりました。


「ジョージさん……?」

「ああ、ソーリー、エンジェ――カノン。話の途中だったね。いやね、せっかくバットを購入したのだから、ちょっと身体を動かしてみたくなってね。ウォーキングに出かけたら、たまたまこの汚らしいゴミ溜めを見つけたのさ。いちおう趣味で掃除屋スイーパーをやっている身としては、タウンの美観維持に貢献しないとね」


 部屋の入り口にいるカノンちゃんに背を向けたまま、ジョージさんはそんなことを語ります。あからさまな虚言ですが、それを訂正するよりも先に、彼の家に居候するJKには言うべき言葉がありました。


「そうですか。ならばもう『掃除』は十分でしょう。間もなく警察も到着しますし、あとは彼らの任せて、せっかくなので一緒に帰りましょうよ――私たちの、家に」

「……」


 カノンちゃんのお誘いに、ジョージさんは答えません。背中に浮かぶのは明確な拒絶であり、彼に見下ろされる脱糞系辮髪男は、産まれたての小鹿のように震えています。


「ジョージさん?」

「……ソーリー、エンジェ――カノン。それはできない」


 ゴリッと、スチールバットが捩じられます。喉の奥を突かれた辮髪男が咽ますが、それを案ずる声はあがりません。この場にいる全員が、ジョージさんの放つ底の見えない粘着質な重圧に呑まれているのです。


「エンジェ――カノンはもう知っているのかもしれないが、このコックローチは、かつてミューズを穢した罪人のひとりだ。当時の関係者はあらかた僕が学生のうちに『掃除クリーン』したのだけどね。不甲斐ないことに、何人かは取り逃がしてしまっていたのさ。それがまさか、僕がタウンからいなくなったあとに舞い戻ってきていただなんてね。これは本当に、ラッキーだったよ」

「だからジョージさんは、私を助けるよりも、彼に制裁を加えることを優先させたのですか?」


 これはあくまで予想ですが、当初のジョージさんは、何らかの手段でカノンちゃんの危険を察知して、この場に馳せ参じただけだったのでしょう。しかし入り口にいた見張りたちから情報を訊き出すうちに、この場にいる辮髪男の存在を知ってしまいます。そして彼は姪の最低限の安全を確保したのちに、警察が来る前に、自分の手で辮髪男を始末することを選んだのです。


「……たしかに僕は、エンジェルのガーディアン失格だ。ミューズにも、向ける顔がない。だがコイツだけは――コイツらだけは、僕のこの手で、徹底的に磨り潰さないと気が済まないんだ」


 だってそれだけが、かつて僕が守ることができなかったミューズに対する贖罪だから――と、ジョージさんは告げました。


「は、はばぁ! あはばはばはっ!」

「喚くなコックローチ。今さら謝罪など不要だ。貴様に赦しはない」


 右手で握るスチールバットで辮髪男を制したまま、ジョージさんが左手を振るうと……ジャキジャキンッ。海外ドラマで見るようなインナージャケット一体型の収納スペースから取り出した金属棒が伸長しました。カノンちゃんも見覚えもある防犯グッズが、恐怖に目を見開く辮髪男の眼前でバチバチと威嚇音を鳴らします。


「まずはアイズだ。その両目を焼く。失明するまで確実に焼き切る。次はノーズだ。その次はイヤーだ。トゥースも全部砕いて、声帯も焼いて、両手両足のフィンガーをぜんぶ切り落としてやる。抵抗は無駄だ。そのたびに苦痛が増していくと思え。なに、ポリスが到着するまでのほんの短いタイムだ。ミューズが味わったペインに比べれば、可愛いものだろう?」


 ジョージさんは宣言通りに、スタンガンの先端を辮髪男の右目に近づけていきます。これから処刑される罪人も必死に抵抗しようとしますが、そのたびにスチールバットで喉奥を突かれて、挙動を制されてしまっています。


「ジョージさん!」

「ジョージ様!」

「い、いやぁあああああっ!」


 目の前で展開されようとする惨劇に、マコトさん、アキラくん、ヒメカさんが揃って悲鳴をあげます。彼女たちに救出された肌黒ギャルたちもまた、涙目で身を寄せ合っていました。


「産まれてきたことを悔い改めろ、コックローチ。これは制裁ではない。断罪だ。ミューズを穢したそのギルティ、身をもって味わうといい」


 警察が到着するまであと数分間。それまでに作り上げられるであろう凄惨な地獄に、誰もが身を固くして……


「……はっ」


 ただひとり、カノンちゃんが、馬鹿にしたように鼻で笑いました。


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