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ANXIETY 4-6

凄くお久しぶりです。

量子物理学と他関係科学を学びなおしてたら間が空きました。

「元幹部だと?」

 ガラゴロと地を蹴る音が響く中、カインの疑問に数人が耳を傾けた。

 魔族の男──自らを魔王軍元幹部だと名乗ったへラーダは陽気に笑い、不愉快そうないくつかの気配など意にも介していない様子で答えた。

「おうよ。ヒト種の寿命じゃ知らねー世代でも仕方ないわな」

「……魔族、という奴らの社会形態は知らんが、幹部にまでなった奴がなぜあんな街に」

「そもそもは命令でな? 相手の中で最も使われてる言葉──ヒト種の言語を習得するために混ざってたわけだ。俺様の種族はそういうのが得意でな」

 言われて、カインがへラーダの頭部形状を観察してみれば、その大きさは獣の比ではなく人間の、あるいはそれすらも凌ぐほど体に比べて比率が大きい。後頭部も顎に届きそうなほど発達している。

 これが頭蓋だけなのか、それとも彼の知る知識とは異なる生態なのかは不明ながら、もしも同じだとすれば凄まじいものだ。

 よほど脳機能の発達した種族なのだろうか。

「しっかし、すげーよ兄ちゃんは。俺様達の言葉を使えるヒト種に出会ったのは初めてだったぜ」

「……? …………ああ……。複数言語の習得が必要でな」

「ま、なにやってたのかは訊かねーけどよ」

 魔族の言語と言われても、カインが意識して発しているのは合衆国語だ。

 何を言っているのやらとも思ったが、そもそもとして見知らぬ地で会話を可能としている時点でおかしいのだ。この世界に来てすぐ、意思疎通の謎についてはなんらかの翻訳機能が働いている事だけが確認できたものの、どうやら魔族の言語にも有効らしい。

 それを思い出してか適当な返しをしつつも、騒ぐなとでも言いたげにヤコへ眼光を向けていた。

「どういった因縁があるかは知らんが、事を荒だてるなら先んじて終えるべきモノがあるだろう。それから勝手に報復しろ」

「カイン様もお引き止めくださいっ」

「今の私にその資格は無い。が、邪魔になるようなら手を考えねばな」

「お主という奴は……。よい、後回しにすべきじゃろう」

「後にもやってほしくはねーんだけどな。頼むぜ兄ちゃん」

「…………。1人でも殺した覚えがあるのなら、戦時中の恨みを持ち込むな。それ以上は領分を超えている」

 極めて面倒臭そうな態度だった。

 それでも、彼の注意はヤコへと向いていた。

 戦争だから。自分も殺したから。そんな事で感情というものが片付かないということはカインも知っている。明確な区切りがつかなければ終われるはずなどない。嫌というほど見て来たのだ、カインにも学習できる。

 特に、感情というものが正常に働く個体ならば尚更だ。どうしてかそのソフトウェアは、自分優位な状況でないとフェアだと認識できないバグがあることも承知している。

 その上で止めたのは────ヤコ個人をというより、率いる者としての自制を求めたのだろう。

「とは言え、事を終えれば私には関係のない話だ。そこでどうするかは自分の良心に従うといい」

「……(かか)様?」

「なんじゃ、ウツギ」

「神官様もこう仰っていますし、ね?」

「むぅ……。ウツギめ、そちらに付きおったか」

 無表情にも近い真顔で圧を掛けるウツギは穏健派らしい。

 当時を知るはずのエレインも警戒はしているようだが、特別敵対的というような様子も無い。過去のことだと清算出来ているようでもないが、それなりに区切りがついているのか、あるいは彼女の信じるなにかがそうさせているのか。

 なんにせよ、ヤコは孤立気味だ。このままでは味方も無しにへラーダと対立しかねない。

「許せと言っているわけではない」

「理解はしておるがのぅ。……ええい、黙って見るでないわ。しばし忘れてやる! それでよいな」

「悪いが、事が済んだらその間に逃げ仰せてくれ」

「んだそれ、おっかねー」

「バカばっかでほンと悪ィな……」

「いいんじゃねーの? 俺様も昔を思い出して楽しいくらいだぜ」

 ゲラゲラと大仰に笑うへラーダに釣られてか、その横でヴァースも半ば笑みを浮かべていた。

 こうして多数を交えて旅をするなど以前からは考えられないことだ、その中には良くも悪くも気心の知れた相手までいるとなれば、これはこれで貴重な体験なのだろう。

 面白がって横槍を入れてきそうなアベルも黙って聞いている辺り、彼女にとっても良い経験なのかもしれない。

「あの、神官様?」

「……。ヤコのことなら謝らずとも構わん」

「いえ、そうではなく。あの村について」

「ああ……村の名前の話だったか」

「はい。あても考え直したのですが、やはり神官様にと」

 この話題の中で切り出したのはウツギだった。

 あの村、というのはカインが提案した候補地の事だ。ヤコが率いていた獣人達が暮らすにあたって土地が必要だが、使えそうな場所はそう多くない。

 そこで、カインは崩壊した自身の町の跡地をどうかと提案をしていたのだが。

「開拓街とも近く、仕事もあり水と木々も豊富です。残骸の処理はあれど、なにかに使えることでしょう。左様な場を紹介して頂いたのですから、恩義を忘れぬためにもと……」

  「残骸って、廃村か? そんなトコ、この辺りにあったなんて聞いた事ないぜ?」

「……? ここから近いが、丘の上に教会だけが残った廃村だ。先日、馬車を頼んだ時の御者は知っていたが」

「覚えがねーな。あの街に住んで長いけどよ、やっぱ見たことも聞いたことも」

 割り込んできたへラーダは廃村の事を知らないらしい。とは言え、実際にこの前の御者は馬車を出し、きちんとたどり着いたのだ。ただへラーダが知らないだけではなかろうか。

「それは妙じゃな。あの場所ならば魔王軍の進行に侵されておったはずじゃ」

「少なくとも戦争中も無かったはずだぜ。有れば覚えてるし、何より野盗すら住み着いてねーのはおかし──……あ? なんだこりゃ……」

「……どうした」

「俺様はそんな場所を知らねー。知らねーのに、どう行けばいいのかぼんやり覚えてるような……」

 自身でもわからない感覚に戸惑っているのか、疑問を抱きながら馬車の行き先を変え、景色が流れるにつれて手綱を握る手もしっかりしたものになっていく。

 やがて彼の疑問が確信に変わる頃には教会の屋根が見え始め、その姿を現した。

「廃村……ってな、ここだよな」

「間違いない」

「…………。どういうこった。こんな強力な結界があるなんざ、今まで気づきもしなかったぜ……」

「そんなものがあるのか」

「最も華奢で、最も強固な結界だな、こいつは。随分荒れちまってるが、俺様たち魔族が蹂躙してないのだけはわかるぜ」

「根拠は」

「家は壊さねえ。仮にやるなら瓦礫すら残さず片付ける。じゃねーと住めないからな」

 居住空間は人間と近いのかとか、住処を求めているのかとか、カインは訊きたいことが多岐に渡ったが口を閉ざした。

 戦争だとすればそれほどおかしなことではない。最も、この世界には戦争に関する条約などなさそうだが。

「こりゃ認識を阻害する種類の結界だ。誰かに教えられたりしない限り、意図してそこにたどり着くことはできない……ある意味で最も強固なもんだ」

「……そんなものがあるのか」

「あっちの教会にも同じ結界が張られてるぜ」

「ああ……つまり、どういうことだ」

「本来ならこの結界を張った奴か、その主しか入れるはずがない場所ってこった。──なあ兄ちゃん、その頭と言い、あんた何者だ?」

 馬を止めたへラーダはカインを睨み付け、口元だけの笑みを見せつけた 。

 それを警戒したアベルが動きかけたが、当のカインは何をするでもなく、ただ「知らん」と短く返すばかり。

 事実としてカインは何も知らない。知る由も無い。しかし、へラーダもまた──彼の事情を知らないのだ。

「私はただの人間だ。先日、目が覚めた時にはここにいた。それ以上はない」

「…………そか。なーんか悪いこと聞いちまったかね」

「気にするな。それより、その良心に付け込んで2箇所ほど寄り道を頼む。先に進んだ所にある集落にこの娘を届けたい」

「ま、そのうち詳しく聞かせてくれや。出すぜ」

 世話話も程々に馬車を動かし、道に戻って進めば日も傾く頃にはヤコが率いていた一団が間借りしている村へと辿り着いた。

 どうせなら、とへラーダの提案でその晩は村に泊まり、ヤコは仲間たちとの別れの席を設け、その際にカインが新たな村の名前を提案したのだ。

 名は──エノク。

 1度はエィノッカと言いかけたが、どうやらやめたらしい。

「ま、そうなるよね」

「安直すぎる気もするがな」

 2人にとっては馴染み深いものらしい。

 そうして決まった名は獣人たちに気に入られたらしく、いつかはカインに敵意を向けていた個体や、あの日人質にされたヤコの側近も素直に受け入れているようだった。

 そしてウツギはと言えば。

「では、後を頼むぞ」

「はい。至らぬ身なれど、最善を尽くします」

「そう固くなるでない。いつかはこうなっておったのだ」

 ヤコとの別れもそこそこに、彼女が新たな長へと代替わりを果たしたのだ。

 どうやら前々から話は出ていたようだが、魔獣からの避難で遅れていたものの集落の再建という機もあり、正式に就任する事になったらしい。

 本来、席を空けるべきではないヤコがカイン達に同行を申し出たのはこのためだろう。

 そうして密やかな宴を終えた翌朝、彼らの本当の旅路が始まったのだった。




 ────同時刻。魔王領末端。

「もう、あんたは連れていけない」

「驚いたね。驚愕だ。まさか、ここまできて追放すると?」

「ああそうだ。あんたは隠し事が多すぎる。いくら強くても、それもここまでだ」

「なるほどね。そういうことか。ともあれ構わないとも。君がこの選択をする未来は知っていた。今だとは思わなかったけれど」

「……またそれだ。どうして未来を知っていると言いながら、誰をも助けようとしなかったんだ」

「簡単だよ。わからないのかい? 知っていることと行動することは別だよ。なにより────"未来を知ったとして、それは観測したという現在の先にあるものでしかない"……だったかな? 昔は未来を知れば変えられると思っていたけれど、そうでもないものさ、あの子は目の前しか見えていないのに真理を言い当ててしまうのだから素晴らしい」

「なにを言ってるんだ? 未来を知ってれば抗うことだって」

「できないよ。不可能だ。未来を知って動くのと過去に干渉するのとでは意味が違うんだ。……まあ、いつかわかるさ。さようなら。勇者くん(スカーフェイス)


カオナシ

自称:カイン

本名:???

種族:人

職業:無職

特技:キャベツの千切り(料理が上手いわけではない)・スキニング

特殊技能:無顔の呪い(被害者)


ヴァーテル・スレイム

種族:人

職業:刑事

特技:錆落とし

特殊技能:刑事の勘


ツラハガシ

通称:アベル

本名:???

種族:人

職業:無職

特技:お姉ちゃん特権ワガママ

特殊技能:???


ヤコ

種族:獣人(妖狐?)

職業:獣人集落の長

特技:???

特殊技能:千里眼(?)


ヘラーダ・ブル

種族:魔族

職業:元魔王軍幹部・現無職

特技:???

特殊技能:???


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