UNEASINESS 3.75(幕間)
新作ゲームラッシュで本編どころじゃありません。
そしてやっぱり本編には関係ありません。
勇者。
そう聞いて、どういったものを思い浮かべるのだろう。
人々を助ける者?
世に光を与える者?
それは理想として正しい。けれど現実は大きく異なる。
勇者は人を愛した。世界を愛した。そのために多くの血を流した。
果ては簡単だ。
その力を恐れた人々は勇者を暗殺し、あたかも崇めるように祭りあげ、崩れ落ちた壁画のように終わらせた。見返りを求めなかった1個人が、あまりに強大な武力を持って尚戦争で敗北したんだ、予期できたはずの結果にすぎない。
人を、その世に生きるもの全てを愛した勇者は、その敗走によって忘却された。
けれど、勇者は誰をも恨まなかった。
これは己への報いなのだと。天多の犠牲による当然の結果だと。愛したとて愛されるわけではないのだと。ならばこれは必然なのだと。
死後、肉体が死のうともその命が使い回される事に不満はなかった。
何度も肉体を与えられてきた。何度も世を旅してきた。何度も殺されてきた。もう悲しむことも、驚くことも、怒りを抱くこともないと思っていた。それほどに心は摩耗し、いつしか消えて無くなった気がしていた。これもまた代償なのだ。そう思えばこそ如何様な地獄も苦にはならない。
失うものはもう何もないのだから。
……あの世界で生きるまでは、何もないはずだった。
彼と出会うまでは。
全てを失った哀れな子。
親もない。希望もない。地位もない。夢もない。生きていることに理由もない。
ただただ慣性だけで日々を繰り返す彼は自分を見ているような気分だった。けれども彼は全く異なる存在だった。
何をも愛さず。誰にも望まれず。力とは無縁だった君は、なにもかもが反対だったボクをただ1人愛してくれた。
色恋ではなく、情でもなく、偶然によって得た家族という偽りの関係だというのに。
不思議なものだ。そんな彼に愛されただけで、どうしてか全てがどうでもよくなった。
ああ、きっと。
彼が変えてくれたんだ。
何も変わらない、何もかもが救いようのないこの世界で。
彼が教えてくれたんだ。
人の形をしながらに逸脱していた存在を、彼だけが人として見てくれた、愛してくれた。
ずっと、人になりたかったんだ。
人でありたかったんだ。
だから問いを投げた。
そんな彼がどんな未来を望むのか、ただ知りたかった。
今にしてみればこれが全ての始まりだった。
彼は悩んだ。
未来など考えもしなかった彼は本能にでも従ったのか、数日悩んだ末にこう言った。
“世に生きる全ては栄えるべきだ”と。
反対の2人は同じ未来を望んでいた。辿る道は異なれど、彼に世の繁栄を願わせてしまった。
自分が愛さぬ世界を。自分を愛さぬ世界を。なんの見返りも望まずに、なんの意味をも見出さずに。その果てを知っているはずなのに。
けれど、何をも持たない彼は、初めて道を得てしまったら止まらなかった。
その術を持たないのだから。
ああ、嗚呼。
可能ならば償わせてほしい。
そんなものは人が歩む道じゃない。何をも持たない者が辿る道じゃない。
その夢を自覚させてしまったことが、その道を見せてしまったことが、彼の破滅が定められた瞬間なのだろう。
全てを愛し愛されなかったとしても、全てを愛さず愛してくれた彼のために、欲も情も超えて、ただそうあるべきだと刷り込まれた彼の望みを叶えるのなら、彼は報われなければならない。その道によって栄えた人の数だけ報われなければならない。
まあ、そんな想いは無意味だったのだけど。
やはり。
世界は無情だ。
あの時と何も変わらない。
人は。
世界は。
歴史は。
彼を拒んだ。
救いなどない。
それこそが報いであるかのように、彼を排除した。
より良い世界を望んで奔走した彼を、自分を勘定にも入れなかった彼を、さも当然のように消し去った。
個人が力を持った結果を再び繰り返した。
これはきっと、あの時選択させてしまった結果なんだろう。
知るはずのないものを教えてしまった結果なんだろう。
全てはあの時に決まってしまったんだろう。
なら。
変えなければならない。
今度は彼の末路を変える番だ。
何度でも繰り返そう。
何度でも演り直そう。
所詮、この命は尽きることのない囚われの身だ。幾度の死を経ても魂が尽きることはない。
いつか君の末路が変わるまで。
いつか君の最期を変えられるまで。
いつか君の恩を返せる日まで。
君が人へと変えてくれたように。
今度は君を人にしよう。
そのためなら永久の時も耐えてみせる。
20年でも。
400年でも。
6000年でも。
君が望んだ最期に報われるまで。
世界に殺されないその日まで
何度でも君と繰り返そう。
作中で出すためにとあるスコープを買ったんですが、$5000近くして若干ハイになってます。




