SUSPICION 3.5(幕間)
そろそろ10ヶ月経ちますが、物語進んでないですね。
今回も本編にはあまり関係ありません。
あいつは狂ってる。
誰もがそう思うだろうよ。
法が人を律する世界で、あいつは法の外にいる奴らを法に追われながら殺し続けてる。あいつの環境なら同じ環境に潜り込めるはずなのに。
あいつは正しくも間違ってる。
誰もがそれを知ってるだろうよ。
あいつのせいで死んだ奴は数多いが、あいつのおかげで法の裁きを受けた奴も数多い。何を基準に殺してるのかは知らねえが、できればあの世じゃなく裁判所に送ってほしいもんだ。
あいつには心がある。
俺だけがそれを見ていたんだろうよ。
普段は気持ち悪いくらいに理性的で、合理的で、その中で柔軟なあいつが周りの奴らからいつも誤解されてるのを見てきた。傷つけることも、騙すことも、褒めることも、眺めることも。何をするにも目的から手段を選んだか、人間らしさとやらを学習した結果かららしいが。
それでも俺はあいつを見てきたんだ。
根底では、ただ人々が幸せであってほしいと願うだけのあいつを。
自分ではできないからと、それをしてくれる神が居てほしいと脅すあいつを。
あの子は視界が狭い。
あいつらも気が付いているだろう。
例え誰を殺した所で、個人を排除した程度で世界は変わらない、もしそうならとうの昔にあの世界は変わっていたはずだ。それが何かの象徴だとしても。
あの子は理想に溺れている。
あいつらもそう感じただろう。
それを叶えるための具体性もなく、その上、神などという不確実なものに縋るなど、もはや己で辿り着く気が毛頭ないと見える。その姿は正気を疑うどころか呆れてしまったほどだ。
あの子はきっと、この先を生き残れない。
その理想に縛られている限り、現実を受け止めない限り、あの子は早々に死ぬだろう。
ならば守らねばなるまい。
あの子の命がこの身に結びついているというのなら、例えあの子を殺してでも生かさねばならないのだ。
この命を繋ぐために。
愚かなことだとわかっている。だが、決めたのだ。
成すべき事がある限り、可能な限りを尽くして足掻き続ける。
例えその果てが破滅であろうとも。
あの人は何を考えているのかわからない。
まともな人ならそう思うはず。
集落の長ともあろう人が、目的が近しいからとあんな人殺しに手を貸そうだなんて。信じている人々が知ったらと思うと悔やまずにはいられない。
あの人はなぜ任せてしまったのだろう。
正しさがわかる人には理解できるはず。
あんなにも強力な魔術を使えるというのに、どうして今まで何もしなかったのだろう。変わり身を探していたようにも思ってしまう。
あの男の行いは許せない。けれど、それをやらせたあの人のことも許せない。
なら、勇者の件が終わったなら私がやらなきゃいけない。
きっとあれは暴走する。
そこまでが、信じたくもない神が私に託した未来かもしれないのだから。
父と母が最後まで神に願った平和かもしれないから。
私は、あの人たちを止められないかもしれない。
稀有なものじゃと吾輩は思う。
誇りを重んじ、己の信を絶対とするエルフが他の神に下るなぞ珍しさに溜息が出るわ。あまつさえ混種のエルフ、それと無明を持つ人間と一緒とは。
彼奴は極めて危ういものじゃろう。
なぜあの男は受け入れておるのやら。
なにがあったかは知らぬが、誇りも故郷も捨て人間のツガイになるとは、あの混種はそういうことやもしれぬな。これも時代なのじゃろうか。
理解し難いのぅ。
まるでわからぬ。
されども今の吾輩にはうってつけの人材に違いない。あの勇者に報復の1つでもせねば、このつのりは収まらぬよな。
嗚呼、全く。先代の勇者ならば此度のような真似はせんかったろうに。今代はろくなことをせぬわい。
ともかく、それまでは便乗させてもうとするかの。
彼奴らが何をしでかそうとかまわぬ。
事を終えた後に見届けるのも、まあ一興やもしれぬな。
どれほど切望したことでしょうか。
時を生きれば、多くの者が体験するかと思われます。
大切な相手を亡くした時、それに蘇ってほしいと願うものでしょう。あの方はそれを体現したのです。エルフの掟にまで逆らったわたくしにとって、これほどの希望はありません。
紐解くことは叶うでしょうか。
およそ強欲では済ませないほどの業を成そうとするあの方にこそ、神はそのお力を貸して下さったのだとしか思えません。だとすれば、このまま旅を共にすることこそが救いになる気がしてしまうのです。
ああ、どうかお許しください。
どうかお救いください。
この身この命果てようとも、揺るがぬ想いある限り祈りましょう。
その奇跡を賜ること叶うのなら、救命の手を頂けるのなら。
非道へとも墜ちましょう。
この世界ですらも邪魔をするのか。
最初はそう思った。
ボクらに散々つき纏った刑事はこんな異世界にまでやってきて、そうまでして何を求めているのかと思った。けれどあれは違う。あの目をボクは知っている。
3度やり直しても辿り着けなかった。
けど、何もかもが違うこの世界でなら。
あいつはボクが愛した人を助けようとしている。いいや、どの世界でもボクの死後はそうだったんだろう。
多くを望んだわけじゃない。
多くを求めてなんかいない。
ただ、人のためにと全てを賭けたあの人が、せめて最後の瞬間だけでも報われてほしいと願っただけで。この道が、僅かでも救いになるのなら共に闘おう。
ボクが愛した人類で、唯一ボクを愛してくれたあの人を助けるためならばなんだってしよう。
仲良しごっこでも、裏切りでも。
奴らは全く思い通りに動かない。これで本当に成し遂げてくれるか不安になる。
しかし、これしかなかった。
あとは見守るしかない。干渉もあと1度か2度が限界だろう。2人の勇者と2人の悪、きっとこれらでこの世界は破滅から逃れられる。
確証は何1つ存在しない。だが、確定された未来から結果を変えるにはこれしか思い浮かばない。
ああ。破滅の申し子よ。愚かな未来を望みし者よ。
見飽きぬ庭を拡げておくれ。
壊れた玩具は直してあげよう。
我らが有り続けるために。




