ぶらり裏幻想郷 ???編 弐
「趣味?」
ゆかりは一瞬呆気にとられたような表情を見せた後、芝居掛かった仕草で手をひらひらとさせた。
「ずいぶんと面白いことを抜かすのね。じゃあ質問を変えましょうか。人間、貴方が里から出て学んだことはあるかしらぁ?」
可愛らしい声だが今、私の喉元には日傘が突きつけられている。さっきまで椅子の下にあったはずなのにどうしてなのだろうな?瞬間移動でもさせたのだろうか。
学んだこと……そんなの決まっている。ここまでついてきてくれた諸君ならわかるだろう。
「……妖怪少女にはお菓子が有効な対処法である」
つい最近失敗したが一回なら例外であろう……
ふっ と空気が軽くなった。妖気が全く感じられない。妖気を消したようだ。ゆかりはなんと笑っていた。
「おっかしいわ。本当におっかしい。ここまでの馬鹿だったとはね。傑作だわ。今度霊夢に話してあげないとね」
ゆかりは一通り笑い終わると らんを呼んだ。
「そこの人間にご退席願いなさい。 お菓子片手にいける所まで行ってみればいいわ。じゃあね~」
最初とは打って変わってえらく軽い口調だ。
どうやら助かったようだぞ。
帰りも長い道のりだ。 ここの屋敷にはこの らんとゆかり以外いないのだろうか。全く生き物の気配を感じられない。
私はこの時、一種の興奮状態だった。大妖怪に捕まって尋問を受け、まさか帰れるとは思わなかったからである。ゆかりは間違いなく大妖怪だ。帰ったらアホ弟子に話してやらんとな。というかここで起きた事を話していいもんだろうか。消されたりしないだろうな。
今私達は縁側をずっと歩いている。行きにこんなところ通ったかな? 玉砂利の敷き詰められた綺麗な庭には広い池がある。相変わらず紫色の空がその漣ひとつない池に写り込んでいた。余裕があれば一句詠めそうだった。
「綺麗なお庭ですね」
私は思い切ってらんに話しかけてみた。反応は無い。完全に無視である。
「あそこの花は桜ですか?」
らんは黙って歩いているだけだ。ひょっとして聞こえてないのだろうか。私は肩をつついてみ
「触るなっ 人間風情がっ」
玉砂利が顔に食い込む。腹が酷く痛い。何が起きたのだ。顔を上げると縁側の上にらんが立っているのが見えた。あそこから腹を蹴飛ばされたのか。
「貴様の様な人間が……紫様が優しいからって調子に乗るなっ 」
布団の部屋で話した人と同一人物とは思えなかった。吊り上がった目はらんらんと輝いている。 らんだけに……
らんは縁側から飛び降りるとそのまま助走をつけてもう一度腹を蹴った。凄まじい衝撃の後視界が真っ暗になった。
「目は覚めたかい?」
らんとは違う声だ。目を開けるとそこには女がいた。 赤い髪をツインテールにした背の高い女だ。しかしその手に持った大鎌が1番の特徴だろう。
「また死に急ぎな顔だねぇ」そういうと女は喉の奥を震わせる様にくくっと笑った。