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ツラギ攻略戦(4)

ちょっと短いです

 ラエ攻撃で敵の機動部隊(何度も言うが、誤解である)を発見し、太平洋艦隊司令部が混乱する中、日本側も米軍の動向を重く受け止めていた。(というか、こちらも驚愕&狼狽していたといった方が正しい)

 太平洋方面に展開する4隻の空母のうち2隻までも投入し、ラエに攻撃をかけてきたことで、米国は総反攻の準備が整ったのではないかと予想したからだ。

 米軍の戦法は基本、「物量押し」である。相手の倍、3倍の物量を一気に投入してタコ殴りしてカタを付ける。貧乏国の日本には望めない贅沢な戦法であるが、それだけに準備が整うまで、こちら側(日本軍)が一方的に戦争の主導権を握ることができる。

 それ故、補給や戦力不足を認識しながらも攻勢に次ぐ攻勢をかけ、早期講和に持ち込むのが日本軍の戦争における基本的なスタンスとなっていた。

 開戦劈頭の真珠湾攻撃、東南アジア方面での陸軍の活躍により米軍の戦力はかなり削られたと認識しており、反攻は早くとも3ヶ月先と分析されていたのだが、機動部隊の半数投入という事実がその予想を裏切ることとなった。


 ・空母2隻程度の損失は惜しくないのではないか?

 ・彼らが近く全力で反攻する準備が整ったのではないか?


 という懸念を日本側は抱いたのだ。で、



 「我が軍に与えられた猶予は少ない。可能な限り速やかに作戦を完遂しなければ…」


 との結論に達する。もちろん完全な誤解である。米軍は


 「嫌がらせに攻撃をかけたら返り討ちにあった」


 だけなのだから…。


 見えない物量の壁におののいた連合艦隊司令部は、米濠分断作戦を可能な限り前倒しすることを決意する。問題になったのは「ツラギ攻略」である。


「予定どおりツラギを攻略してポートモレスビーを叩く」


という慎重派と


「ツラギ攻略は中止。この兵力も投入して一気にポートモレスビーの攻略を」


の積極派の意見とが対立することになった。司令部内の意見対立に対し、山本長官は、


「時間は米軍の味方だ。ポートモレスビー早期攻略は必須事項である。しかし、ツラギは米国本土からの敵を牽制するのに重要な地点であるから軽視はできない。よってツラギ攻略はウチ(第一艦隊)が出ればいい。(ツラギを)占領しなくても戦艦で砲撃して、居座っていれば十分牽制になる」


 と、自らが出撃すると発言。現存艦隊主義者の多い司令部からは大反対の声が上がるのだが、


「ぼつぼつウチ(第一艦隊)もいいところを見せるべきじゃないか?これだけの戦艦があれば、まずやられることはない。それに、米軍は米濠分断を全力で阻止してくるはずだから、戦艦「ごとき」には見向きもしないだろうしね」


 と、断固出撃を主張する。司令部内にも「空母ばかりに良い顔させられない」との考えがあったのか、それとも総旗艦の出撃という誘惑に勝てなかったのか、「ツラギ砲撃作戦」(名目上、陸上基地を砲撃するという事になった)は、第一艦隊第二戦隊、第三水雷戦隊、第三航空戦隊と、旗艦「大和」があたることとなった。


 独逸人の少佐のいうところの「一心不乱の大戦争」である。


 余談であるが、航空主戦論者の山本長官と不仲であると言われた宇垣参謀長(大艦巨砲主義者)は、作戦決定後、異常に張り切っていたとのこと。ある水兵は、宇垣の様子を、


「鉄仮面(黄金仮面)がニヤニヤ笑ってるところを初めて見た。恐ろしかった」


 と述べている。


 ツラギ攻撃は、最悪、複数空母を有する敵機動部隊の迎撃を受けることも考えられる。想定される場面の洗い出しと対応策は、黒島参謀の肩にかかってくる。黒島参謀は、悲壮な面持ちで、楽しそうに自室に引きこもり作戦要綱の作成に入った。(らしい)


 ポートモレスビー攻略の積極的推進は決定されたが、攻略は敵機動部隊が展開する海域を突っ切っての強行上陸となる。当然、敵による攻撃が予想される。事実、暗号解読には至らないものの、増加する敵通信から(敵の)増援は決定的であり、それは機動部隊である可能性が高いと考えられた。これを排除できるだけの戦力が必要である。

 連合艦隊司令部は、敵機動部隊を迎え撃つため日本に帰還中だった南雲機動部隊より、第二、第五航空戦隊(空母「飛龍」「蒼龍」「翔鶴」「瑞鶴」)を分遣。彼らに命じられたのは、


「敵機動部隊の殲滅」


 である。


改稿ミスを修正しました

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