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サヨナラ歌姫、世界と共に

作者: シャオラン
掲載日:2013/06/04

少年は笑った。

己の眼下に広がる光景に、嫌気がさして。

でも嬉しくて仕方なくて、結果、笑みが浮かんだのだ。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


美しいと、彼女は言っていた。

しかし少年はそう思えなかった。

「こんな世界の、一体どこが美しいんだ」

吐き捨てるように紡がれた言葉を、彼女は優しく掬った。

「色んな色があって、光があって闇がある。全てが全てを引き立ててるから、美しいと思えるんじゃないかな」

少年は、苦笑いを浮かべた。

人と違う感性を持つ彼女にしかわからない世界だと悟ったから。

常人には理解できないことを思う彼女だからこそ、美しいと感じたのだろう。

事実、常人である少年には理解できなかった。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


少年は彼女の元へと足を運んだ。

彼女はビルの屋上に立ち、歌っていた。

「何、してんの」

少年は問う。

端から見れば、どう考えても、彼女が歌っているように見えただろう。

しかし彼女は歌ってなどいなかった。

「世界と話をしていたの」

淡く儚い笑みを浮かべ、彼女は再び世界と話し始めた。

彼女の話し声は風に乗り人に何かを感じさせる。

地を忙しく動き回る人々は、彼女の声に耳を傾け、天使の歌声だという。

(ーーー変わってるな)

少年は、人々の言った言葉に対してそう思った。

何の意味もなくただ、純粋に。


「ねぇ、聞いてくれる?」

彼女はいつの間にか横に立っていた。

「くだらないって笑うかもしれないけど、聞いてくれる?」

少年は黙って頷いた。


「明日、世界が終わっちゃうんだって」


彼女はふにゃりとした笑みをこちらに向け、屋上のフェンスを掴む。

「世界が教えてくれたの。だから私に帰ってこいってさ」

つまらなそうに空を仰ぐ彼女は、すぐに消えてしまいそうだ。

「帰って、何になるの」

少年はそんな彼女をあざ笑うかのように言う。

「これで何度目だよ。どうせ最後の最後で、またやるんだろ」

「ううん、明日で本当に終わらせるんだって。もうダメなんだって」

必死に訴える彼女の目には、涙が輝いていた。

「悪魔がいる世界が消えないから、いっそのこと世界を終わらせようって」

少年は何も言わない。何も言えない。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


翌日、少年は彼女の元へと足を運ぶ。

逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子供。

迫り来る業火。

それら全てに逆らいながら、少年はゆっくりと歩みを進める。

少年を止める者は誰もいなかった。


ビルの屋上で、彼女は世界を眺めていた。

冷たくも暖かく、慈愛に満ちた眼差しで。

少年は赤く染まる頬に手を伸ばす。

彼女の顔を見て言い放つ。

「世界は再生できるよ」と。

それを聞いた彼女はゆっくりと涙を流す。

少年の手をつかみ、離すまいと両手で包む。


彼女の望む結末。それは少年がいなくては迎えられない。

少年の望む結末。それは自分がいると迎えられない。


2人の決断は世界を破滅へと導いた。

彼女が望む結末も、少年が望む結末も、今の2人には迎えられないから。


彼女の背中の白い片翼。

少年の背中の黒い片翼。

2人は手を取り合い、世界の破滅に身を投じる。



そして少年は笑った。

己の眼下に広がる光景に、嫌気がさして。

でも嬉しくて仕方なくて、結果、笑みが浮かんだのだった。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


明るい太陽の下、彼女は歌っていた。

その傍らで、少年はうたた寝をしていた。

少年の隣には、彼女にそっくりな顔をした女の子と、少年にそっくりな顔をした男の子がいた。

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