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悪魔が降りるそのときまで

作者: 極楽天
掲載日:2006/09/20

 辺りが急に明るくなり、視界が真っ白になる。

 もうこんな時間か。

 自由に移動することもできない四角いゲージの中で、諦めにも似た感情が、どっと襲ってくる。

 このままずっとここにいるのと、無理やり外に引きずり出されるのでは、どちらがマシだろう。

 ぼんやりと考えてはみるが、その選択肢は自分では選ぶことはできない。

 どっちを選んだとしても、幸せではない。

 それだけが確かなことだ。

 周りの皆は、とっくに感情を失っている。

 こんなところに長い間入れられていれば、当たり前のことだが。

 辺りがざわつく。

 気配を感じ、上を見上げる。

 来た。

 悪魔の手が視界の隅に映る。

 いつものことだが、緊張が走る。

 手は、なめ回すように旋回し、標的を決めると、圧倒的な恐怖を伴って降りてくる。

 幸い、おれの場所からは遠い。

 今回は捕まることなく済みそうだ。

 捕まったやつには悪いが、おれにとってはラッキーだった。

 などと、ホッとしている間もなく、今度はちょうどおれの真ん前で、手が止まった。

 どうやら来るときが来たようだ。

 覚悟を決める。

 その覚悟を見取ったように、手は下りてくる。

 どんどん、どんどん。

 ゆっくりと。

 無機質な冷たい爪が頭を掴む。

 そこに慈悲や温かさは感じられない。

 がっちりと側頭部を固定され、持ち上げられる。

 頭が引っこ抜かれそうだ。

 おれの身体は慎重に持ち上げられ、やつらの巣らしき穴へ、運ばれていく。

 もはやここまでか。

 そう諦めた瞬間、爪の力が緩んだ。

 何が起こったか分からなかったが、今いるところが巣ではないということは間違いない。

 仲間の頭の上に落ちたのだ。

 やつも油断したのかもしれない。

 仲間たちは、おれの帰還を喜んでくれているようだ。

 さっきまでは、どうでもいいやと思っていたおれも、助かったと分かるとうれしかった。

 しかし、全てが終わったわけではないのだ。

 悪魔の爪は、再びおれの頭を掴むだろう。

 せめてそのときが、少しでも遅くなるように、信じてもいない神に祈った。


「お前、本当に人形とるの下手だね〜」


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― 新着の感想 ―
[一言] とてもいい作品ですね。 文章が巧いと感じる作品は今まで結構読んだことありますが、オチがここまでいい作品は見たことがありません。 次の作品を期待しています。
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