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白鯨を喰む

作者: none
掲載日:2026/04/12



「白鯨を殺したことありますか?」



 晴天の下、男は朗らかに笑う。



「ねぇよ」


「じゃあ見たことは?」


「……たぶんねぇな」


「自信なさげですね」


「一応白い鯨の形は想像できるからな。けど実際見たことはねぇはずだ」


「ふふ、そうですか」


 男は空に浮かぶ白い雲を指でなぞる。話からして、鯨を形どったようだ。


 澄み渡る青の下、酷い暑さに汗をかいたスポーツドリンクの蓋を開いて一気に飲み込み喉を潤す。

 近くのベンチにドカッと座り込めば、同じペットボトルをもった男は俺を見下ろしながら、暑いですよねぇなんて言って笑った。


「気をつけてくださいね。今日熱中症の警戒が必要だってニュースで言ってました」


「このクソ暑い時に、そんな服着てる奴がよく言うよ」


「あはは。これでも僕、パイロットの訓練生ですし」


「なれそうなのか?夢のパイロット」


「……」


 男の視線は俺から晴天に戻る。聞いてくれるな、とでもいいそうだ。


「人間の世界は、難しいことが多いですから」



 違った。



「そりゃ海底とは話が違うだろうな」


「ええ、本当に。想像以上ばかりだったり、想像よりも乏しいものばかりだったり」


「どっちが多かった?」


「想像以上のものばかりですね。地上にはこんなたくさんの人間がいるとは思っていなかったし、人間の味覚にも驚く毎日です」


「もう1年くらいたってないか? お前が人間になって」


「まだたったの1年でしょう。って、あぁ。そうか。人間の時間感覚には慣れませんね」


「フン、まぁ確かに龍神様は地球ができる前からいるって噂だもんなぁ」


「それは流石にガセですよ。僕が生まれたのは地球ができて間もないころです。原始のころと言ってもいい」


「……」


 やっぱり時間感覚はマヒしている。海の底に住んでいた龍神様に人間の感覚はどうも難しいらしい。


 ペットボトルの中の冷たいスポーツドリンクを一気に飲み干して、肩にかけたタオルで額に滲んだ汗を拭く。同じ環境にいるというのに、男は涼しい顔をして暑いですねぇと繰り返した。


 わからないんだろう、うまい返事の返し方も、正常な温度感覚も、


「白鯨、見つからないなぁ」


 晴天を泳ぐ雲の形も。


「だから、あれはただのゴミの塊だっての」


「えぇ?」


「雲っていうんだよ。前にも言ったがな」


「ううん、海の中から見たときは、空を泳ぐ白いクジラのように見えたのですが」


「波打つ水面から見たら、そう見えるかもな。でもあれはクジラじゃねぇよ」


「うーーん……諦めきれませんね。空を飛んで探しにいくまでは」


 そう男は穏やかに笑った。諦めきれない。そういいながら、仕方なさそうに。


 空を飛んで探しに行くねぇ。なんとも皮肉なものだ。男はどこからどう見ても普通の20代前半の男性の姿。けれど俺は知っている。コイツの目は、


「地底の魔女にやられたその目で、か?」


「……えぇ。この目で、です」


「全く。俺の顔もろくに見えていないくせに、どうやってパイロットになるんだか」


「手厳しいですね」


「事実だろ」


「……悲しいことに」


 こいつの目は、超がつくほど弱視なのだ。


 腕の届かない範囲のものはほとんどはっきり見えないらしい。何とか見えるのは目によく近づけたものだけ。こいつの世界はすべてがぼやけたまま。


 元々コイツは龍から人間の姿を得て、そこからさらに雲に────コイツの言う白鯨に────近づくために空を飛ぶ仕事に就こうとしていた。けれどその弱視のせいで未だ夢叶わず、というわけだ。


 あんなもの、ただの塵とゴミの塊なのに。


 ペットボトルを口につけながら、男はぽつりとつぶやく。


「人間になるために、地底の魔女に頼んだら、まさかこうなるとは」


「言われてなかったのか?」


「何も。少し怪しいとは感じていましたが、人間の姿を得るためには彼女の強力が必要だったのです。その代償が、この目です」


「それでパイロットねぇ。そもそもなんでパイロット? 龍神様ならそんなことしなくとも、空に飛んでいけばいいじゃねぇか」


「元の姿で陸に上がるのはリスキーなんです。龍神と言えど、何億年もずっと海の中にいると、陸にはおいそれと出てこれません」


「それでも白鯨を追いかけて、地底の魔女と契約して人間の姿になったと思ったら弱視で空へはいけませんって、バカかよ」


「えぇ。こんな目になってもまだ、白鯨を諦められないバカなんです」


「そういえば、殺したことあるかって言ったな。お前、それを見つけて殺したいのか?」


「えぇ、もちろん」


「どうして」


「どうしてって」


 男は空を見上げたまま笑う。よく笑う男だ。だけど、この含み笑いはさっきまでものと違う。太陽を白い雲が隠したのか、男の顔に影がかかった。普段の好青年っぷりは成りを潜めて、真っ黒な敵意に狂気を混ぜ込んだ笑みだ。



「空を自由に泳いでいるところを見たら、うらやましくって、妬ましくって、殺したくなりました」



 涼しい風がぴゅう、と吹く。



「……神様が雲に嫉妬か。わらえねぇな」


「ちょっと。本気ですよ、僕は」


「あっそ。で?なれそうなのか?憧れのパイロット」


「……」


 うんともすんとも返ってこない。けれど俺にとって大事な確認だ。


「まぁ、神通力を使えば、騙せますよ。弱視だってこと」


「というか、入学試験もそれでごまかしたんだろ。じゃあもうあんまり罪状は変わらないんじゃねぇの?」


「それはちょっと」


「なんで」


「僕、パイロットって仕事を結構気に入っているんです。それに水を差すのは、少し違うというか」


「えぇ?魔女と契約して人間の姿を得てまでしたのに、それはダメなのか?何が何でも白鯨を捕まえるって勢いはどうしたんだよ」


「……だって、あんまりにきれいだから。騙すなんて汚れた僕で、近づきたくないんです」


「白鯨に?」


「いえ、」


 高く澄み渡った空をバックに、男は上を指さした。


「空に」


「空?」


「こんな僕の目でも綺麗に見える青、あれに恋をしてしまいまして。あそこに一番近づけるパイロットってすごくいい職業だなって、思ったんです。そこに嘘をついたら、なんだか自分を許せなくなりそうで」


「龍神様にもプライドってのがあんのか」


「みたいですねぇ。いやはや、驚きだ。僕もだいぶ人間に染まってきたかな」


「……」


 人間に染まってきた、か。

 海の底の龍神様がねぇ。


 ポケットにつっこんだスマホを取り出し通知を確認する。


「今日の夜は大丈夫だったか?」


「あぁ、えぇ。大丈夫ですよ。珍しいですね、バクさんがご飯に誘うなんて。何かあったんですか?」


「40のジジイが1人で飯食うと孤独にやられんだよ。じゃ、19時に」


「ふふっ、そうでしたか。じゃあ、また」


 ヒラヒラと手を振って男はその場を後にした。ベンチに自販機、それに俺だけが残される。


 ミンミンとセミが鳴きわめく中、かき消されない低く遠く響く飛行機のエンジン音。飛行場が近くにあったな。そこであいつは叶うはずもない理想を追いかけている。


 さっさと神通力でも魔法でもなんでもつかって空へ行って、見つからない白鯨に飽きてくれればいっそ楽なもんなんだが。いかんせん、そうもいかないらしい。あいつの目はどこまでも本気だったし、諦めも悪くなったって話だし。


「あー……」


 癖で胸ポケットにしまったタバコに手をかけて、そのままおろした。

 最近医者がうるさいんだった。仕方ないから、仕事の後に残しておこう。


 *****


 集合場所は俺の自宅近く。

 集合時間は夕日が完全に沈んだ頃。


 適当にスーパーで足りないものだけ調達して、俺のオンボロアパートへ向かう。


「お邪魔します」


「おう、邪魔すんなら帰れよ」


「え」


「冗談だよ。ちょっとは人間のジョークってのになれろ」


「えぇ? むずすぎません?」


 悪態をつきながら靴を揃えて中に入る。すると途端に男の顔が歪んだ。多少は片付けぞ、多少はな。


「これ……どこにいればいいんですか……」


「あぁ、目が悪かったな、お前」


「いや僕の目でもこれが相当散らかってることぐらいわかりますよ」


「適当にどかして適当に座れ」


「すでに適当にどかされているものを、更にどかすってことですか」


「だから適当にどかせって。あ、手ぇ洗えよ」


「そこはちゃんとしてるんだ……」


「なんか言ったか?」


「いえ、何も」


 ある程度人間の文化や習慣にはなれているらしい。

 適当に繕った笑みも大したもんだ。まだ1年だろ?人間の体をもらって。適応するのが速すぎる。



 汚染は相当な速さで進んでいる。



 狭いキッチンで料理を温めながら後ろに向けて声をかけた。


「お前、人間の体になって一番初めて食べたのはなんだった?」


「えーと、カレーです」


「へぇ。どこで食ったんだ」


「拾ってもらった人に」


「犬か。お前見た目が良くて良かったなぁ」


「それだけは地底の魔女に感謝ですね」


 少し深い平皿の半分に米を乗せて、温めていたものをもう半分に乗せる。ふわり、と腹をくすぐる匂いが立ち上がった。


 狭い部屋だ。窓も開けてないし、すぐに充満する。


「えへへ、だからそれ、僕に作ってくれたんですか」


「俺は今お前の初めて食った料理を知ったんだが?」


「まぁそうであっても、そうでなくても、とても嬉しいです。バクさん、昔から飄々として掴みどころないから、こうして仲良くなれるなんて」


「はいはいわぁったから、そっち持ってけ、これ」


 男に2人分の皿を渡して、自分はスプーンを2本取り出して卓につく。もちろん物で溢れかえった床に直接座ってだ。椅子なんてものはない。


 居心地悪そうに正面に座った男を鼻で笑って、スプーンでカレーを掬い取った。


「あ、まだいただきますって言ってないのに」


「いい子ちゃんかよ」


「いただきます。はむっ…………んん!美味しい!」


「間があるな」


「いや、本当に美味しいですよ。期待してなかったので、驚いちゃいました」


「おい」


 失礼だろお前。そう抗議する俺を放置してどんどん食べ進めていく。その様子を見るに本当においしく食べてもらっているんだろう。


 まぁ、悪い気はしない。


「うんうん、美味しい!バクさんが作ったんですか?これ」


「そうだよ。丹精込めて作ったんだぜ?」


「ありがとうございます。もしかして、バクさんって料理人だったり?」


「するかもなぁ」


「そういえば、バクさんってお仕事何されているんでしたっけ」


「ん?」


「バクさんのお仕事、聞いたことないなって」


「別に大したもんじゃねぇよ。それこそパイロットなんてかっこいいもんに比べたら」


「……まだ僕、パイロットじゃないんですけどね」


 スプーンの手が一度止まる。なんともいえない表情で少し視線を迷わせた後、再びカレーを口に運んだ。


 相当恨めしいだろう。いくら切望したとしても、その目じゃ、そのありのままの自分で空へ飛べないから。


「その目、地底の魔女になんとかして貰えばいいんじゃないか。神様なんだから、脅すなりなんなりして」


「無理ですよ。彼らのような魔術を操るものは、僕ら神より上位の存在です」


「ほう?」


「彼らは別の世界から干渉してきている。僕らは干渉前の世界を知らない、というか知る術がない」


「パラレルワールド的なもんか」


「平たく言えばそうです。魔術なんて、本来存在しないはずなんですよ」


「人間からしたら海底の龍の神様もいねぇはずなんだがな」


「それはそうですね」


 ははは、と苦笑いをしながらカレーを口に運んでいく。人外じみた知識だけが残って自分がファンタジーな存在であることすら忘れかけていそうだ。


 初めてコイツを見た時に、この美青年がまさか海底の主だということに随分驚いたものだった。もしかしたら、まだ知らないだけで他にもたくさんの人外がこの世界にはうようよいるのかもしれない。


「別の人外の知り合いとかいねぇの?」


「全く知りませんね。そもそも、こうして人間の姿を得ることが禁忌とされていますから」


「禁忌破りの神様か。へっ、バチも当てられねぇな」


「えへへ。でももしかしたら、魔術を操る存在は他にもいるらしいですね。噂で聞いた話ですけど」


「というと?」


「さっき話した魔術を操る別の世界の存在……簡単に言えば魔女ですね。それがどうやら人外を探し回ってるって海底にいる時に聞いたんです。なんでも、世界平和のために存在を管理するって」


「なんだそりゃ」


「僕にも詳細は。でもなんだか怖いなぁ。僕なんて、傍目から見れば世界平和を脅かすために陸上に上がってきたって思われちゃいそうで」


「やっつければいいだろ。神様なんだから」


「そんなこと言われても。そんな力ありませんよ。それに彼らは僕より上位の存在ですし」


 人外ならではの悩みをぶーたれながら、たまに笑いを挟んで、カタン、とすっかり空になった皿にスプーンが置かれる。もう食べ切ったのか。

 ごちそうさまでした。手を合わせて丁寧に礼をするコイツは、どこからどう見てもただの人間。でも海底の主で、神だ。


 その存在だけで海底の治安を守ってきたっつーのに、それがいまやこんなところで呑気にカレーを食っている。


 バカなことを。


「……話聞いてると神様ってのも、案外不自由なんだな」


「よく万能化されがちですけど、神様は見ているだけですよ。願いを叶えるとか、そんな力ありません」




「そうか。そりゃよかった」




「え?」


 男は蛇に睨まれた蛙のように、ピタリと動きを止める。指先すら自由はない。


 散らかった部屋のあちこちから青い微粒子がゆっくり舞い上がる。それは無秩序に部屋の中を飛び回りながら男の動きを拘束した。


 カレーにかけた魔術に重ねて念の為。どんな力を隠し持っているかわからねぇからな。


「……これは…………」


「“lilar”……つってもわからねぇか。この世界には元々ねぇもんだから」


「まさか」


「なぁ、お前」


 キッチンのシンクの下の引き戸を開けて、杖を取り出す。



「夢喰いバクって知ってるか」



 カレーには眠らせる魔術をかけたはずが、どうやら動きを拘束する魔術と間違えてしまったらしい。それか、コイツが何かしたか。


 ま、どちらにせよやることは変わらねぇし。


 杖を下から上に振りあげる。すると青い微粒子が赤く光り、目に痛いほどギラギラと輝いた。


「夢喰い漠……そうか、貴方が」


「あれ?俺、案外有名人?」


「さぁ。でも貴方がこの世界に干渉してきた魔術を操る者たちの1人だったとは。......見た目ではわからないものですね」


「お互い様、だろ」


「ですね。それで、僕に何を?」


「何、別に殺しやしねぇよ。忘れてもらうだけだ。今までのことを」


「……」


「神とあろうものが、人間に近づきすぎだ。妬ましいなんて感情まで持つほど汚れちまって。そういう奴らはこの世界の平和を脅かす」


「僕はただ、白鯨を見つけたいだけなんですよ。世界の平和を脅かすなんて」


 部屋中を飛び回る微粒子の数を増やしていく。男の睨みつける目に赤が反射して、輝いた。


 嫌いだ。目に輝きを持つやつは。


「見つかりもしねぇ白鯨を追って、見つからない現実に絶望して、何をしでかすかわからねぇんだよ。実際、去年ブルーシアントによる大量殺戮まで起きた」


「ブルーシアント?」


「恐竜が絶滅しなかった世界で成長した生物……ってめんどくせぇ。なんでもねぇよ。とにかく人間の体、感情に近づきすぎた人外は管理が必要で、お前はライン越えってわけだ」


「なるほど、見つかっちゃったってわけですね。……ここで終わりかぁ」


「大丈夫だ。人間世界の記憶だけじゃなく、青空も雲も全部全部忘れさせてやる。そのあとは別のやつがお前の体を戻す。お前は海の底で主をしているだけで良い」


「わぁ最悪」


「最高だろ」


「最悪ですよ。海の底、何もないんですよ。こんなに美味しいカレーもないし」


「海底の主という存在が大事なんだよ。じゃ、そろそろお別れだな」


「あーあ……でも、バクさん」


 微粒子が男を中心に渦を巻き、より一層強く赤い光を周囲に撒き散らす。


 その渦中で、いつものように男は朗らかに笑った。



「僕、バクさんと友達になれてよかったです」



「……お前は知らないだろうが、俺がお前に接触したのは2日前だ。記憶を書き換えて、昔からの付き合いってことにしただけだ。勘違いすんなよ」


「それでもここで一緒にカレーを食べてくれたでしょ?美味しかったし、嬉しかった。ありがとうございました」



 感謝?

 そんなところまで人間に似るなよ。



 杖を持つ指先に力が籠る。渦を巻いた微粒子は勢いを増して皿やスプーンを巻き込んでいき、風に荒ぶる前髪が視界を遮った。


 その弱視じゃ何も見えていないくせに。

 その隙間で、笑ったままで。


「海底の主よ。汝が見ているのは、何億年生きてる中のほんの一瞬の悪夢」


 杖を振り下ろす。




「その悪夢、今────俺が喰ってやる」




 キン、と金属がぶつかったような音が響く。

 続けて、バタバタと微粒子の渦に巻き込まれていた部屋の雑貨が落ちていく音。

 視界は暗い。どうやら部屋の電気が故障したようだ。


 動かない男の項をひっつかんで顔を近づけて見れば、眠っているようだ。

 じっと見つめても“lilar”は見えない。パッと男を放すとその場に倒れ込む。体にも問題はなさそうだな。いつも通り、なんも問題ない。


 散乱した皿の破片を避けながら、窓を開ける。夜空には月が浮かんでいて、ちょうど満月だった。

 窓のすぐ横に腰を下ろして、月を眺めながら仕事終わりのタバコに火をつける。



 名前は聞いたことがない。

 情が湧くと、タバコが不味くなるからだ。



 携帯の慣れたアイコンをタップして、通話を繋げる。


「あーあー……聞こえる?……おっけ。

こちらバク。記憶は完全に消したよ。体の回収頼む。あとリリフィか?地底の魔女って。ダルいことしやがって。後でシメるからな」


 ピ、と短い通話を切って口にタバコを咥える。

 吸って、吐いて。白い煙が上がった。


 仕事の後にうまいタバコを吸えた試しはないが、どうしようもない気分になるとヤニを補給するしか手立てはない。



 世界のための仕事だ。恨まれてもこれが仕事。誇りに思うべき仕事だ。




『僕、バクさんと友達になれてよかったです』




 それでも、どうにも消えてはくれねぇもんだ。



 ふーっと息を吐いて、白い煙を吐き出した。ぴゅうと吹いた風に攫われ形を無くして消えていく。



 悪りぃな。

 お前が追ってた白鯨、俺が喰っちまった。




人の夢を喰う仕事

本文中の『白鯨』を『夢』に置き換えて読むと面白いかもしれません

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