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三つの扉を開けたけれど、クローゼットの中は最初から最後まで、女物しかなかった。


ぱたん、と扉を閉めながら、私はベッドの上で横たわっている全裸の女の子(巨乳)へと視線を向ける。


――この部屋の(ぬし)って、女の子の方なんじゃ?



私の中で、一つの仮説か思い浮かんだ。ただ同時に、そうであればどうしてベオクが脱ぎ捨てたと思われる服が白いダウンのみなんだろう、って新しい疑問も湧いてきた。


ベオクがこの女の子の部屋に侵入して女の子を襲ったのであれば、入浴後に着るような白いダウンじゃなくて、もっと違う服あるような気もするし、パンツも一緒にあるはず。念のため辺りに男物のパンツも落ちていないか探してみたけれど、特に見当たらなかった。


私はベッドに近寄って、白いダウンとピンクのワンピースを手に取った。


「!」


そこでまたひとつ、私はこの状況を打破する手がかりを発見したわ。


女の子のものと思われる薄手のピンクのワンピースは、クローゼットの中のものと比べて本当に薄手だった。


そう。


男性の諸君にはわからないかもしれないけれど、私は大きな勘違いをしていることに気が付いたの。私がワンピースだと思ったものはよく見るとワンピースじゃなくて、『ロングスリップ』。



ロングスリップというのはね、肩から吊るして胸部から膝下までをカバーする下着の一種よ。


ベッドの上に脱ぎ捨てられていた衣服は、ベオクの白いダウンと、女の子の下着のみ。着替えかけのような脱ぎ捨てられたパジャマや服もない。


そして、この部屋の主は恐らく女の子の方。



『ベオクがどこかで白いダウンに衣装チェンジ。肌着で準備万端の女の子の部屋に突撃☆』の可能性、つまりベオクがベオク(ベスト・オブ・クズ)ではない可能性も出てきたわ。



私はベオク(かもしれないイケメン外国人)に濡れ衣を着せて、一人で焦っているだけなんじゃないかってね。


けれど、私にはまだベオクの罪を白とするだけの自信がなかった。


何故なら、私を目覚めさせた女の子の大きな悲鳴も、その後の私の一挙一動に怯える女の子の様子も、演技とは思えなかったから。



私は、もっともっと情報を集めるために、部屋の中を探索し始めたわ。

もちろん、女の子を驚かせないように忍び足で。



最初に確認した通り、正方形の広い部屋の中央に、五、六人は寝られそうな大きなベッド。私はベッドに触れた。あまり意識していなかったけれど、シーツはいい素材が使われているのか、とても滑らかな肌触り。


ベッドの正面の壁側には、アンティーク調の大きな扉。まだ試してはいないけれど、内側から見る限りは鍵がかかっていないから、とりあえず部屋から出ることはできそう。


枕側の壁側には特に物は置かれていなくって、花や草木が描かれた風景画が数枚、これまたアンティーク調の金の額縁で壁に飾られている。


右の壁側には、高そうな衣類や小物が詰まった大きな移動式クローゼットと、その隣に金縁の全身鏡が並んでいる。さっきはあまり注視していなかったけれど、鏡の金縁はやっぱりアンティーク調。


左の壁側には、まるでパーティー会場にあるような上飾りのついた大きな遮光カーテンがあって、怖くて開けられないけれど、窓かバルコニーに繋がってそう。



最初から広い部屋だとは思っていたけれど、この部屋の造りや家具ひとつひとつが、高級感に溢れている。


この部屋の主が女の子で正解だとしたら、かなりのお金持ちよ。



一通り部屋の探索を終えた私は、ベッドの端に腰かけた。


右手の親指と人差し指で顎を挟み、名探偵の小学生かのようなポーズをとって、瞼を閉じる。


未だ鳴り止まない急かすような心臓の音に耳を傾けながら、私は自分が次にとるべき行動について、次の二つの内どちらにするか悩んだ。


一つは、女の子に声をかけて、ベオクとの関係性をはっきりさせること。


女の子とベオクの関係が良好であれば最善だし、その場合『私』について話してみることもできるかもしれない。


ただ、万が一ベオクがベオク(ベスト・オブ・クズ)のままであれば、女の子を怯えさせ事態を悪化させてしまう可能性が非常に高い。



もう一つは、とりあえず女の子はそのままに、部屋の外がどうなっているかだけ確認すること。


そもそもここがどこなのかだったり、女の子やベオクに関する情報も何か得られるかもしれない。ただ、万が一ベオクがベオク(ベスト・オブ・クズ)のまま且つ女の子の家族や誰かに見つかった場合、私はジ・エンド。刑務所行き必須。



正直、どちらも怖いわ。


けれど足りない私の脳みそでは、この二つの選択肢の他に、良い案が思い浮かばなかった。



私は瞼を開いた。

自分の家に戻ってないかなあ、なんて淡い期待も抱いてはみたけれど、景色は変わらず見覚えのない豪華な部屋。


くそが、と思わず心の中で悪態を吐きながら、私はベッドの端から立ち上がった。


そして勇気を出して、ベッドの方に向き直った。



そうよ。女の子に声をかけることを選んだの。


何故なら、私おばけ屋敷とかドッキリ系のホラー映画がすごく苦手なのよ。


ネズミーランドのホンマデッカマンションみたいに、馬車に乗ってたら勝手に進むタイプならまだ大丈夫なんだけど、ジフキューみたいに自分で歩いて進む系のやつ。怖すぎるし、驚かしに来た人を返り討ちにしてしまったこともあるの。



お化け屋敷とか、ドッキリ系とか、ネズミーランドとか、色々何を言ってるかわからないって?そうね。私の世界の専門用語盛沢山できっとわからないわよね。


全部の説明はめんどくさくてややこしいから簡単に説明すると、私は予想外の出来事が起きた時に、冷静に対処するのが苦手なの。



だから私は、予想のできない扉を開けることよりも、女の子に声をかけることを選んだ。




「あの……ここは一体、どこでしょうか」


「そこまでだああああああああ」


「ぎゃああああああああっ」



でもベオク(私)のか細くて低い声は、突然現れた野太い声にかき消された。


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