〇〇〇
私はね、私のことを『美人』だと思っているし、それを誰かに伝えることを、恥ずかしいことだと全く思っていない。
だって、そうはっきりと言えるだけ、私は私を美しくするための努力をしてきたの。
流行りのお化粧の仕方やファッションを勉強して、体系維持の為に休みの日はエステやジムに通って。食事にも気を遣ってカロリー計算したり、スキンケアは欠かさず毎日やって。
乳だけは自然発生させることができなかったけれど、鏡に映る自分の姿を見た時に満足できる自分である為に、できる限りのことはしてきたわ。
だから私は、顔は勿論、自分の『体』に対しても、人に見せて恥ずかしくない程度の誇りをもっている。
――なのに。
なのになのになのに。
そんな私の、私の股間に、ち、ち〇こが生えた。
「あ、あ、あ?」
戸惑うでしょう。信じがたいでしょう。
私は、ベッドの上で震えながら自分の股間を凝視したわ。
大きさはそうね……500mlペットボトル一本くらいかしら。
直近で男のそれを見たのは悲しくも昨日よ。
そう。クズオのブツよ。
ちなみに物凄くどうでもいい情報でしょうけど、クズオのそれよりも大きいわ。
そんな情報要らないって?
それはそうね。あははは。
……ごめんなさい。
口が滑ったわ。
話を戻すわね。
それでね。
私の指って、よくピアノやってますか?って聞かれるくらいに細長くて綺麗なはずなのに、その指がいつもより太くて。ぐーちょきぱーって動かしてみても、どう見ても私の指ではないものが、私の意思で動くの。
それだけじゃないわ。
肌はすべすべのままだけれど、足にも腕にも栗色の毛が生えてるし、腹筋は私以上にばっきばっきに割れてて、全体的に筋肉質。
明らかに、この体は、私の体じゃない。
私は次第に、誰かの体に乗り移ったんじゃないかって疑い始めたわ。
そんなアニメや漫画のような展開あるわけないって思いつつ、私は自分の顔を確認できないか辺りを見渡したわ。そしたらね、金縁の全身鏡を見つけたの。
私は女の子が驚かないように、そーっと這うようにベッドから降りて、ダッシュで鏡の前に向かったわ。
「誰だ……このイケメン」
鏡面に映ったのは、超絶イケメンな外国人。
私は両手を鏡に張り付けて、鏡に映る男の体を上から下まで何度も見たわ。
年齢は恐らく、十代後半から二十代前半。
180㎝くらいの高身長で、鼻が高くて、色白で、瞳は宝石のように綺麗なエメラルドグリーン。どこか儚げな印象もある、ブロンドヘアの外国人。
もしも、この男の口から『モデルやってるんだよね』なんて告げられたとしても、全く疑わずに信じたわ。
でも…そんな呑気に、『鏡の男』に見惚れている場合じゃなかったの。
「うぅ」
「!!」
ベッドの方から女の子のすすり泣く声が聞こえてきて、私はハッと口元を両手で覆ったわ。
そして、冷静に今の状況を振り返ってみたの。
①ベッドの上には、全裸で拘束されている女の子。
②この空間にいるのは、私(男)と女の子の二人だけ。
③『行為』を示すかのようにベッドに脱ぎ捨てられている衣服。
④男物のガウンが一着と、女の子のものであろう、ワンピースにブラとパンツ。
⑤女の子の体には、暴行を加えられたであろう傷跡が複数個所。
⑥そして、女の子と同じく全裸のち〇こが大きいイケメン(私)。
もしも、貴方たちがこの光景を目にしたら……女の子に酷い仕打ちをしたクズは、誰だと思う?
そう……そうよ‼
私が乗り移ってしまったかもしれない、このイケメンよ‼
つまり、私なのよ‼
アンビリーバボーすぎるのよ!
もし私がこの場に第三者として遭遇したらね、真っ先に、女の子に無体を働いた犯人の金玉を潰してやるわ。
いくらイケメンでも許されるはずがない。
私は拳を握りしめて本気で悩んだわ。
このイケメンの金玉を潰すか。
でも、いくらなんでも金玉を潰したら、痛い。
男の体になったからかしら……想像するだけで、ち〇こがキーンってなるの。
女の子には申し訳ないけれど、私は握りしめた拳をそのまま開いたわ。
そして取り合えず、この後どうするかを考えたわ。
最初に思いついたのは、誠心誠意、女の子に謝罪することよ。
女の子の布袋をとって、手錠を外して、事情を説明して謝罪して……ってあほか。
私はぺちんと自分の額を叩いて、自分の阿呆な案につっこみを入れた。
だって、馬鹿でもわかるわ。
私が女の子の立場だったら、布袋を外された瞬間に、男のち〇こを噛みちぎってやるもの。
じゃあ、どうするのか。
女の子をそのままにして逃げる?
それも、私の仁義に反するわ。




